第20話 エルブルス、意外と魔王と親しかった。
エルブルスと魔王は思った以上に親しい仲のようだ。
「かつて、生きた*脳のような様々な珍味を食べる旅に出かけ、人間の関節をいじり倒して逆四つん這いさせて共に乗ったこともある我とお前の仲ではないか」
「……」
どういう仲だよ。めちゃ怖いわ。
魔王は俺の動揺など気にも留めず、楽しそうに肩を揺らした。
「聞いたぞ。随分と面白いことを始めたそうではないか」
「何のことでしょう」
「その女だ」
白い仮面が一斉にデナへ向く。
デナは一歩前へ出て俺を庇う位置に立った。
「両脚を失った人間の聖騎士団長。奴隷に落ち、欠陥品として売られた女を買い取り、脚を再生し、十分な食事と休息を与え、剣を握らせたと、な」
全部知られてる。
「以前のお前なら、壊れた玩具をさらに壊して遊んでいたはずだ」
ぶっちゃけた話、過去のエルブルスの悪行はもう聞きたくない。
「それが今回は、安らぎを与え、自分へ深く依存させている」
魔王の声に、明らかな愉悦が混じる。
戯れのように、魔王が仰々しい大剣を抜いた。
「何か、趣向の変化があったのか……、それともお前はもう、我の知るエルブルスではないのか? ん? ……何か申してみよ」
喉元に切っ先を突き立てられる。
絶体絶命のピンチだった。
「……これは、その……つまり……」
言うしかない。
ここで俺が元のエルブルスでないことを悟られたら終わりだ。
「つまり、新しい虐待です」
「ほう、新しい虐待と、な」
六つの仮面が微かに傾いた。
「聞かせろ」
やばい。
何か理屈を作らないと。
俺は隣のデナを見る。
健康状態は良好。
睡眠も取れている。
魔力も戦闘能力も、買った時とは比べものにならない。
そこから適当に組み立てる。
「人間は、幸福な状態の方が魔力の循環が良くなるようでして……」
「幸福?」
「睡眠不足、栄養失調、恐怖、慢性的な痛み。そういう状態では身体も魔力も本来の性能を出せない。なら食わせて、眠らせて、身体を直し、安心させる」
前世で理学療法士だった身としても、別に変な話ではないと思う。
痛みや疲労が強ければ動作の質も落ちるし、回復も遅れる。
「最高の状態まで戻してから使う。その方が、持ち駒としての価値は高まるでしょうし、そしてその後人間どもを殲滅する先鋒に任命してやり、力の差を見せつけさせ、双方に絶望を植え付けるのですッ!!!!」
魔王が黙った。
デナも黙った。
まずかったか?
【あとがき】
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