第13話 「魔王の配下に媚びた裏切り者め!」
「その言葉を、あなた方が口にするな」
空気が凍った。
「私が助けを求めていた時、あなた方は私を見捨てた。だから今さら救いに来たなどと、二度と口にするな」
ヴァイスの顔が真っ赤になる。
「この恩知らずが! 今の団長は私だ! 所詮お前は負け犬だ!!! お前は奴隷に落ちた敗残兵だろう!」
本性出たな。
「戻れば奴隷だった女を再び聖騎士にしてやると言ってるんだ。ありがたく思え!」
デナはしばらく黙っていた。
それから、ひどく寂しそうに笑った。
「……昔の私は、こんな人たちのために脚を失ったんですね」
ヴァイスの顔が醜く歪む。
「黙れ! 魔王の配下に媚びた裏切り者め!」
号令と同時に、騎士と冒険者たちが一斉に襲いかかった。
「デナ、殺すなよ。面倒だから!」
「承知しました」
返事と同時にデナが消えた。
最初の剣を弾いて顎を打ち抜き、次の槍を半歩でかわして腹へ蹴りを叩き込む。
冒険者の魔法も紙一重で避け、そのまま懐へ。
十秒ほどで、五人が床へ転がった。
「な、なんだこの強さは……!」
「欠陥品だったはずだろ!」
「両脚を失った時点で終わった女のはずだ!」
デナの動きが止まった。
「私はまだ終わってない」
静かな声だった。
「エルブルス様が、私に教えてくださった。私のこれからの可能性を、希望を、取り戻すべき誇りを、あるべき姿を――。ただあなた方が、私を終わったことにして捨てただけです」
「黙れぇぇぇ!」
ヴァイスが吠えた。
救世主の顔はもう完全に剥がれていた。
「お前が戻れば全部元通りなんだ! 今の騎士団は人手が足りない! お前ほどの戦力が戻れば王国は――!」
「やっぱり、私ではなく戦力が欲しいだけなんですね」
「うるさい!」
ヴァイスが杖を抜いた。
「ならば、その悪ごと死ね!」
巨大な光槍がデナへ飛んだ。
「デナ!」
反射的に手を振った。
頭の中に魔法名が浮かぶ。
え、ええっと、どれが一番安全なんだ?
黒炎。
空間障壁。
そして――。
「……動くな! 【重力牢】」
口が勝手に動いた。
次の瞬間。
轟音とともに廊下全体の床が沈んだ。
「ぐあっ!?」
「な、なんだこれは――!」




