第14話おまけ
現災署の自動扉が静かに開いた。
外の光が廊下へ流れ込み、その中を花が歩いて出てくる。
数歩進んだところで、ふと足を止めた。
そして肩越しに振り向く。
視線の先には、入口の横に立つ実がいた。
「今日はいつ帰るの」
花の声は、いつも通りそっけない声に戻っていた。
「21時くらいだと思うよ」
実は軽く笑って答える。
「そ」
花は短く返し、視線を前に戻した。
そのまま振り返ることなく歩き出す。
実はその背に向かって手を振る。
柔らかく笑いながら、遠ざかる姿を見送った。
その隣で、狩野が壁にもたれて腕を組んでいる。
「……かわいくねえ妹だな」
ぼそりと呟いた。
「え」
実がすっと顔を向ける。
「殴りますよ?」
いつものつぶらな瞳から、光が消えていた。
「え、あ……す、すまん」
狩野は一歩引き、慌てて手を振った。
◇
一時間後。
現災署の廊下を、狩野が一人で歩いていた。
「う〜ん……」
腕を組み、首を傾げながら。
「あれ狩野、今日休みじゃなかった?」
前からの声に狩野が顔を上げる。
少し先に、ツグミが立っていた。
「昨日の現災の報告だけしにきたんだよ」
「あー、そういうことね」
ツグミは興味なさそうにそう答えた。
「あ」
狩野はツグミの顔を見て、突然目を細める。
「……え、なによ。人の顔ジロジロ見て」
「いや、なんであいつを可愛くねえって思ったか今わかってさ」
狩野は少し嬉しそうに頷いた。
「……?」
ツグミが気味悪そうに眉を寄せる。
「お前に似てるからだ。実の妹」
「は?」
「う"っ……!!」
次の瞬間。
狩野は腹を押さえ、その場に崩れ落ちた。
床に蹲る。
ツグミは腕を軽く下ろし、倒れた狩野を見下ろした。
まるで汚物でも見るような目だった。
「殴るわよ?」
「も、もう殴ってんじゃん……」




