第74話 突然の報告
エルフの村から帰って半月ほど経ったある日、懐かしい男がバラン村に訪れた。
その男は村の見回りを買って出ていたガジュウを片手で一ひねりにすると村の入り口で俺の名前を呼んだ。
「バラン! おれだよ! ダーソンだ!」
その声を聞きつけ俺は家の外に出た。ガゼフさんとリエルもついてくる。
「ダーソン!? なんでお前がここに?」
「いてててっ!」
「とその前にそいつを放してやってくれないか? 一応同居人だ」
「おっと、すまない。突然殴りかかってきたから仕方なくね」
ダーソンはそう言うとガジュウを押さえつけていた手を放す。
ダーソンは確かレベル400の剣士だったな。
前に戦った時よりさらに雰囲気が強者のそれになっている。
「おーいてぇ。バラン、なんだこいつお前の知り合いかよっ」
「ああ、前にちょっと。悪かったな」
「くそっ、だったらそう言えよな……ったく」
ガジュウはダーソンを恨めしそうに見ながら村の外に出ていった。
見回りの続きをやるつもりだろう。
それにしてもガジュウの奴、盗賊をやっていた頃に比べるとずいぶん聞き分けがよくなったものだ。
「すまないバラン、てっきり悪者だと思って手荒な真似をしてしまった」
「いいさ、別に。あいつ昔は悪い奴だったし」
昔犯した罪の罰だと思えば安いものだろう。
「それで、わざわざこんなところまで俺に会いに来た理由はなんだ?」
「聞いて驚くな、魔王軍がベルーガ国を制圧した」
真剣な顔で答えるダーソン。
「なっ!? それってどういうことだっ? ベルーガ国王はどうなったんだっ?」
「ベルーガ国王はもういない。公開処刑されたからな」
「そんな……」
ベルーガ国王が処刑だと……。
「あ、あのっ、マリアさんたちはどうされたのですか?」
「そうじゃ、勇者パーティーがおるじゃろう」
リエルとガゼフさんがダーソンに訊く。
「やはりその情報もこの村には届いていなかったか。あいにく勇者パーティーは全員死んだよ」
「……え」
「そ、そんな……マリアさんが」
「死んだじゃと……」
「ああ。その様子を見させられた兵士がいるんだがそいつによると勇者セフィーロと重戦士ランドルフは魔王軍の直属護衛軍に散々痛めつけられた挙句殺されたそうだ」
ダーソンは苦い顔で続ける。
「魔導士ゾーンと聖者マリアは二人で協力して直属護衛軍を見事倒したそうだが、その直後無残にも魔王にやられてしまったらしい」
「そんな、マリアさんっ……」
「マリアちゃんが……」
リエルとガゼフさんは顔を手で覆った。
「……ダーソン、今魔王はどこにいるかわかるか?」
「あ、ああ。多分まだベルーガ城に居座っているだろう」
「そうか……なあダーソン、俺がいない間この村のこと頼めるか」
「何? それはどういうことだ?」
「頼む」
ダーソンは俺の顔を見てごくりと唾を飲んだ。
「わ、わかった」
「バランさんっ、まさか魔王を倒しに行く気ですかっ」
「無茶ですじゃ、いくらバランどのでも勇者パーティーが勝てなかった相手ですぞっ」
「リエル、ガゼフさん、しばらく留守にします。それじゃあ」
俺はそれだけ言うとベルーガ城に向かって飛び立った。




