第73話 雨降って地固まる
「これよりバランさんをこの村の村長とします!」
「おおーっ!」
「バランさーん!」
「バラン村長!」
「頑張ってくださいっ」
村長さんの宣言により俺はエルフたちが見守る中正式にエルフの村の村長になった。
そして村長の座を下りたエスカフローネさんが俺に訊いてくる。
「村長になったバランさんには村長権限で何か一つだけ願いを叶えることが出来ますがどのような願いにしますか?」
願い、か……。
別にないんだよなぁ。
アナを望まない結婚から守ってやる。デルトロには悪いがただそのためだけに出馬したようなもんだからな。
その時視界の端にデルトロの背中が映った。
でかい図体のくせにやけに小さく見えた。
「願いは別に今すぐというわけでは――」
「いや、あります」
言うと俺は「おーい、デルトロ!」デルトロを呼んだ。
「……なんだ?」
「俺はバラン村の村長をしているしバラン村に住んでいるからいつもエルフたちを守れるわけじゃない」
「……それがなんだ?」
「だからお前を村長代理にする。俺がいない間はエルフたちを守ってやってくれ。これが俺の願いだ」
「おれが……村長代理? あんたがいない時はおれが一番偉いのか?」
「まあそうなるな」
するとみるみるうちにぱあっと顔が明るくなるデルトロ。
そして、
「へっへっへ。あんたに言われなくてもエルフたちはおれが全員守ってやるつもりだったさ。この村のことは心配するな、おれが村長代理としてうまくやるからよ。あんたは安心して人間の村にいてくれていいぞ」
なれなれしく俺の肩に腕を回す。
現金な奴……だがどこか憎めない。
「ああ、任せたぞ」
俺はそれだけ言うとエスカフローネさんに顔を向けた。
「すみません、勝手な願いで」
「いいえ、素晴らしい願いだと思います」
エスカフローネさんは優しい笑みで言ってくれる。
「おーいみんな、聞いただろ! おれが村長代理になったからには安心してくれよ! みんなはおれが守るからな!」
デルトロのはりきる姿を横目で見ながら「あんなこと言ってますよバランさん」とレオが近付いてきた。
「結果オーライなんじゃないの、兄さん」
アナも寄ってくる。
「まあそれはそうだけどさ」
「バランさん、いろいろありがとうございました」
アナがお辞儀をして言った。
「ああ、全部丸く収まってよかったな」
エルフの村の村長なんて一時はどうなることかと思ったが。
それにしても……。
「アナ、あいつやっぱり悪い奴じゃないと思うぞ。結婚はともかくとして少しは考えてみたらどうだ?」
俺はデルトロをちらっと見てからアナに訊いてみた。
「そうですね……でも私もう好きな人がいますから」
「え? そうなのか?」
アナにそんなそぶりはなかったから意外だな。
「何っ!? アナ、どういうことだっ、僕は聞いてないぞそんなことっ……」
「別に兄さんに言う必要ないでしょ」
「誰だ! 誰なんだっ!」
「教えなーい」
「誰だっ、僕の知ってる奴かっ」
「さあね」
兄妹の不毛な言い合いを右耳から左耳に聞き流しつつ俺は雲一つない空をただぼんやりと眺めていた。
『勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~』
という小説も書いています。もしよかったら読んでみてくださいm(__)m




