第68話 エルフの村
レオたちの言った通りエルフの村は高い崖の上にあった。
「まさに断崖絶壁だな……」
見上げてつぶやく。
俺はスカイマントがあるからひとっ飛びで行けるがレオたちはどうするのだろう、そう思っているとレオとアナは背中の上あたりからぴんと半透明な羽のようなものを出した。
「僕たち実は羽があるんですよ」
言うとレオはその羽を素早く動かして飛び上がった。
アナも飛び立つ。
「さあ、バランさん行きましょう」
「あ、ああ」
俺はレオとアナの後を追うようにして崖の上のエルフの村に向かった。
崖の上には空中都市のようなエルフの村が存在していた。
「へー、すごいな。本当にこんなところに村を作ったんだな」
「はい。村長の家は村の真ん中にあるのでこのまま飛んでいきましょう」
レオに言われ俺たちは飛びながらエルフの村を移動した。
前にバラン村に一時避難していたエルフたちは俺のことを覚えていてくれたようで俺の姿を見るとお辞儀をしたり手を振ったりしてくれている。
ちょっと照れくさい気持ちになりながらも歓迎されていることに素直に喜んでいると、
「あそこが村長の家です」
言ってレオが地面に下り立った。
俺とアナもあとに続く。
大きな木造の家の前に立ち「村長! ただいま帰りました!」レオが声を上げた。
すると中からがっしりとした体格の大きなエルフの男が姿を現した。
この人が村長か?
一瞬そう思ったが、
「なんだレオじゃないか、おお! アナも一緒かっ。いつ見てもきれいだなアナは」
「デルトロ!? 村長の家で何してるんだよ」
レオの反応からして村長ではないようだ。
「そりゃもちろん今度の村長選挙の話し合いさ、もう終わったがな。じゃあなアナ」
デルトロと呼ばれた男はアナにだけ愛嬌を振りまくと去っていった。
「ずいぶんでかいエルフだな。うちの村では見なかった顔だが?」
「あいつはデルトロといいます。この前バランさんたちにお世話になった時は遠出をしていたので村にはいなかったんですよ」
「ふーん。なんかあからさまにアナへの態度が違ったけど」
「デルトロはアナが好きなんですよ、な? アナ」
「私に振らないでよ、兄さんってば」
アナは困惑したような顔で返した。
村長の家に入ると俺と同い年くらいの女性のエルフが立って出迎えてくれた。
「村長、あまり無理をなさらずにっ」
レオが駆け寄りその女性に肩を貸す。
「村長?」
「あの方が私たちの村の村長のエスカフローネ様です」
とアナが俺の耳元でささやく。
「ずいぶん若い感じがするけど……」
村長というからもっとお年寄りを想像していたが思っていたよりずっと若い。
「見た目はお若いですがお年はゆうに三百歳を超えていますよ」
「三百!?」
思わず声が大きくなる。
すると村長さんが、
「バランさん、ようこそいらっしゃいました。本来ならこちらから出向くべきでしたがお呼びだてして申し訳ありません」
レオに支えられながら頭を下げた。
「いえ、こちらこそお招きありがとうございます」
「さあさ、どうぞお上がりください」
村長さんに促され俺は家に上がらせてもらう。
畳のある部屋に通される。
「そちらがエクスカリバーという剣ですか?」
「あ、はい、そうです。すみません家の中に剣を持ってお邪魔してしまって……」
「構いませんよ。それにしてもなんという神々しくて立派な剣なのでしょう」
「よかったらどうぞ」
俺は村長さんにエクスカリバーを渡した。
エクスカリバーは今熟睡中なのでちょうどいい。
「まあ、きれいな黄金色の剣ですこと……」
「あの……エスカフローネ様。さっきデルトロさんが村長選挙がどうとか言っていたんですけどどういうことですか?」
アナが口を開いた。
「おい、アナそんな話は――」
「いいのですよ、レオ」
そう言うと村長さんはアナに向き直る。
「アナ、近く村長選挙が開かれます。そこでおそらくわたくしは村長の任を解かれるでしょう」
「え……どういうことですかっ?」
「先のオークの襲撃の一件で村には強い村長が必要なんじゃないかという考えのエルフたちも出てきていましてね、その数は日に日に増えているようです。そしてその筆頭がデルトロなのです」
「そんな……」
アナは言葉を失う。
「わたくしはデルトロたちの考えもよくわかります。もしわたくしがオークを倒せるだけの力を持っていたなら多くの同胞が死ぬことはありませんでしたからね」
「そんなことないです村長! オークキングの強さは僕たちの想像をはるかに超えていました。きっとあの時デルトロがいても勝てなかったはずですっ」
「……バランさん、この剣をお返しします。ありがとうございました」
「あ、はい」
俺は村長さんから剣を受け取った。
なんとなく重い空気が流れる。
「……ただ気がかりがあるとすれば、それはデルトロの願いです」
「願い?」
村長さんにアナが訊き返す。
「アナ、お前は小さかったから覚えていないだろうが新しく村長になった者には一つだけどんな願いでも聞き入れてもらえるという習わしがあるんだ」
「わたくしの時は同胞同士では決して争わないことをみなに約束させました」
「でもデルトロはもっと私利私欲のためにこの願いを使うんじゃないかと僕は思っている」
そこまで言ってレオはアナの顔を正面から見据えた。
「デルトロは多分お前を嫁にする気だ」
「え? デルトロさんが私を……?」
「ああ、村長権限でお前が嫌だと言っても無理矢理な」
「そんな……」
するとレオが突然俺に向かって土下座をした。
「バランさんっ、無理を承知でお願いしますっ……エルフの村の村長選挙に出てくださいっ、そしてデルトロを打ち負かしてくださいっ」
「……はい?」
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