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第44話 ラハール家

ギルドの受付の女性にもらった地図を頼りに俺はラハール家へと向かっていた。

ラハール家はカグア郡のペニンストンという街に豪邸を構えているらしい。


俺は空の上から地上を眺める。

カジカ村から既に一時間余り飛行し続けているので地上の景色も山や森がなくなり民家が増えてきた。


今はカグア郡の上空。

そろそろペニンストンに着く頃だが……。


「ん?」

遠くの方に高くそびえる建造物が見えた。

その方向に近付くにつれ建物が沢山密集していく。


「お、ペニンストンに着いたかな……」

『……あ、やっと着いたの? 退屈だから寝ちゃってたわ』

とエクスカリバー。

お前はいつでも寝てるだろうが。


俺は街の手前で地面に下り立つとエクスカリバー片手に歩いて向かった。



ペニンストンに着くと大きな建物が無数に並んでいて行きかう人々はスーツを着た人が多く、それらの人はみな早足で慌ただしい。


『何をあんなに急いでいるのかしら?』

「仕事をしてるんだろ、きっと」

『ふーん、仕事ねぇ』

「みんながみんな俺みたいに冒険者ってわけじゃないからな」

むしろ会社に勤めて真面目に働いている人の方が街中では普通だ。


「えーっと、もらった地図だとここをまっすぐ行けば豪邸が見えてくるはずだって――」

『あれじゃない?』

エクスカリバーが言う。


顔を上げると通りの左側に大きな洋館が見えた。

よく見るとその洋館の前には黒いタキシードを着た初老の男性が立っている。


すると向こうも俺に気付いたのだろうまだだいぶ距離があるにもかかわらずこっちを向いて深々と頭を下げた。

俺はその状態で放っておくのも申し訳ないと思い駆け足でその男性のもとへと急ぐ。


「えっとすいません、もしかしてラハール家の方ですか?」

「はい、そうでございます。わたくしめはラハール家の執事長ラインバッハと申します」

ラインバッハと名乗った男性はタキシードの上からでもわかるくらい胸板が厚くがっしりとしていた。


「あなた様はバラン様でいらっしゃいますね、ギルドの方から連絡はいただいております。早速で恐縮ですがラハール家の現当主でありますカバラン・ラハール様にお会いしていただきたいのですがよろしいでしょうか?」

「あ、はい。もちろんです」

「ありがとうございます。ではまいりましょうか」

ラインバッハさんはそう言うと門に埋め込まれていたモニター画面に向かいうなずいてみせた。


すると、


ガガガガガ……と門が自動で開いていく。


「バラン様、どうぞこちらです」

「あ、はい」

俺は言われるがままラインバッハさんのあとに続いた。


見上げるほどの大きな家に入ると俺は大広間に通された。

「こちらで少々お待ちいただけますか。カバラン様を連れてまいりますので」

言ってラインバッハさんは出ていく。


大広間には暖炉や見るからに高級そうな時計などがありなんだか落ち着かない。


『でっかい家ねー。絶対悪いことしてるわよ』

んなわけないだろ。

『私貴族ってあまり好きじゃないのよね。何してるかわからなくない? なんでお金持ちなの?』

俺が知るか。

正直言うと俺も貴族とかは苦手だけどこれも生活費を稼ぐためだ。


『ていうかカバランってあんたと似たような名前ね。見た目も似てたりして』

さて、どうだろうな。



しばらくするとドアがノックされた。


「お待たせいたしました、バラン様。カバラン様をお連れいたしました」

ラインバッハさんの声。


「はい、どうぞ」

と俺は返す。


……。


……。


しかし一向にドアが開かない。


あれ? 俺の返事聞こえなかったのかな?


不安になりもう一度「どうぞ!」今度はさっきより大きめの声で言ってみた。


……それでもドアは開かない。


とその時、ドアの向こうから声が聞こえてきた。


「……カバラン様、これもラハール家のため、ひいてはカバラン様のためなのですよ」

「……ぼくちゃん、代理戦争なんて興味ないもん。別に負けたっていいもん。痛いのやだもん」

「大丈夫です。代理戦争というのは実際に戦うのはカバラン様ではなく冒険者様なのです。カバラン様はただ堂々とされていればよいのです」

「……ほんと?」

「はい。このラインバッハ、嘘など申しません」

「ほんとにぼくちゃん何もされない? 痛くない?」

「はい、もちろんでございます」

「……うん、じゃあわかった」


声が止んだ。


『何? ラハール家の当主ってガキなの?』

さあ? そこまでは俺も聞いていなかったからなんとも。


そして――

ゆっくりとドアが開く。


最初に姿を現したのはラインバッハさんだった。

ラインバッハさんは先に部屋の中に入ると「カバラン様、どうぞお入りになってください」と廊下に向かって声をかけた。


「う、うん。今行くよ……」

おびえた声が返ってくる。



『まったく、早くしてくれないかしら。私ガキは嫌いなのよね』

自慢じゃないが俺も子どもはあまり得意ではない。

さっさとカバランとやらに挨拶だけして後の話はラインバッハさんから聞きたいものだ。


「今出ていくからね……」


すると次の瞬間ドアの陰からカバランが姿を見せた。


「えっ!??」

思わず声を上げる俺。


だがそれも仕方のないことだった。

なぜなら俺の目の前に現れたのは小太りでお世辞にもかっこいいとは言えない容姿をした四十前後のはげたおっさんだったからだ。

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