第25話 家畜を買う
「もう大丈夫ですよ。あとは安静にしていてください」
「ありがとうございました」
「ではわたしはこれで失礼しますね」
リエルに会釈をして家を出ていく医者。
隣町から来てもらった医者が言うにはガゼフさんは体中殴られてはいたが命に別状はないということだった。
三、四日ゆっくりしていれば元の生活に戻れるという。
「よかったな、リエル」
「はい。バランさんのおかげです」
「いや、俺は別に……それより家畜は俺が買いに行くよ」
ガゼフさんはまだ休養が必要だし、またリエルに行かせて何かあったら困る。
「え、でもどこで買うかとかわかりませんよね。それに沢山の動物たちを連れて移動するのは慣れていないと難しいと思いますけど」
「うーん、そうだな……」
それは確かにその通りなんだよなぁ。
「なので私も連れて行ってください。きっとお役に立ちますから」
リエルが俺をまっすぐみつめる。
「あんなことがあったのに大丈夫か?」
「気にしないでください。それにバランさんと一緒なら安心です」
そこまで言われちゃ仕方ない。
「わかった、じゃあ金貨五十枚で出来る限り家畜を買い揃えよう」
「はいっ」
こうして俺たちはガゼフさんのことをザジーの母親に任せると隣村まで家畜を買いに出かけることにした。
☆ ☆ ☆
バラン村から隣村までは徒歩で約一時間。
俺がリエルを抱きかかえて空を飛べばもっと早く着けるのだがリエルが恥ずかしがったので二人して歩いていく。
一時間歩いて隣村に着くと早速家畜を仕入れることに。
牛は金貨二枚、ニワトリ豚ヤギはそれぞれ金貨一枚が相場だった。
「どうしますか? バランさん」
「俺よりリエルの方が詳しいだろうからここはリエルに任せるよ」
「そうですか、では……」
リエルは金貨五十枚でそれぞれの家畜を十頭ずつ買い揃えた。
「すごい数だなぁ……」
「そうですね」
牛たちが全部で四十頭、それらを従えて村に戻る。
途中ニワトリが道をそれたり、ヤギが草を食べ始めたりと手を焼かされたせいもあって帰りは三時間もかかってしまった。
「すっかり暗くなったな」
「すみません。おじいちゃんだったらもっと上手く動物を操れるんですけど……」
「いや、リエルがいて助かったよ。俺一人じゃここまで連れてこれなかっただろうからな」
事実俺はほとんど何もしていない。
リエルが家畜たちを器用に動かすのを見ていただけだ。
「あ、バランさん見てください」
「おっ、村のみんなだ」
バラン村に着くと村人たちが表に出て俺たちの帰りを待ってくれていた。
「リエルちゃん、おかえり~」
「バランさん、ご苦労様でした」
「こんなにも仕入れてきてくれたんだねぇ、ありがとう」
みんなの笑顔を見て俺は疲れが一気に吹き飛んだ。
「さあさ、バランさん、リエルちゃん。ガゼフさんが目覚めたからおうちに帰っておやり」
「はいっ」
リエルはガゼフさんが目覚めたと聞いて家に駆けていく。
俺も家畜たちを村人に預けて後に続いた。
☆ ☆ ☆
「おじいちゃん、大丈夫?」
家に入るとリエルは布団に横になっているガゼフさんに駆け寄る。
「おお、リエル。お前の方こそ無事で何よりじゃ」
「私はバランさんのおかげで全然平気よ。おじいちゃんも目が覚めてよかったわ」
手を握り合う二人。
そしてガゼフさんは横になったまま俺に顔を向けた。
「バランどの、何から何までありがとうございました。リエルの元気な顔をこうして見ることが出来るのもバランどののおかげですじゃ」
「いえ、村長ですから。当然のことをしただけですよ」
「バランどのがいればわしは安心してあの世に行けますわい」
「もうおじいちゃんったら縁起でもないこと言わないでよね」
「ふぉっふぉっふぉ――ごほっごほっ」
「ほらまだ安静にしてないといけないんだからっ」
リエルに布団をかけられるガゼフさん。
何はともあれ二人のこういう姿がまた見られて俺はほっと胸をなでおろすのだった。
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