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第24話 【紅蓮の牙】

洞窟の壁面には電球が等間隔で吊られていて洞窟の中は明るい。


奥に進んでいくと通路が四つに分かれていた。


「どれに行くか……」

『面倒くさいから大声出せば。そうすればきっと向こうの方から来てくれるわよ』


エクスカリバーの言うことも一理ある。

俺は分岐点で大声を上げてみた。


「おーい! 紅蓮の牙! リエルと家畜を返せ! 見張りは倒したぞー! ……これでいいか?」

『ええ、今に敵がどっと押し寄せて――ほら来たっ』

エクスカリバーの言う通り、四方向からそれぞれ剣やヤリを持った男たちがぞろぞろと集まってきた。

俺は二十人くらいの男たちに囲まれる。


「誰だてめぇは!」

「さらった女性と盗んだ家畜を返してもらいにきた」

「何言ってんだこいつ」

「はっ、頭おかしいぜこのおっさん」

「せっかくだからその剣置いていきな」


さっきと似たような反応。

駄目だ、全然会話にならない。


俺は足を踏み出した。

「急いでるんだ、勝手に探させてもらうぞ」

「おい待てよおっさんぐあっ!」

俺は掴みかかってきた男を振り払った。

その勢いで壁に激突した男が声を上げ倒れる。


ミノケンタウロスを倒してレベルが150に上がっているから今さら盗賊程度には力負けしない。


「気をつけろっ。こいつ出来るぞ!」

「おうよ!」

「殺してやるぜっ!」

男たちは気色ばる。


「おい、エクスカリバー。結局こうなったぞ」

『……すぅすぅ』

「寝てんのかよっ」

「さっきから何ほざいてるんだっ!」

二十人余りの盗賊たちが剣とヤリで一斉に襲い掛かってきた。

いくらレベルが上がっているとはいえさすがに全部の攻撃はよけきれない。


だがダメージキャンセラーを腕に装着しているのでダメージは受けない。傷も負わない。痛くもない。

俺は一人一人確実に気絶させていくと最後に残った一人の頭をエクスカリバーでどついた。


「ぐあぁっ!」


最後の一人も地面に倒れる。


「ふぅ……」

これでやっとリエルを探せる。



俺は洞窟内をリエルの名前を呼びながら走って探した。

息を切らしながら全部屋を見て回る。


しかし、

「はぁ、はぁ……いないじゃないか」

リエルはおろかニワトリ一羽もみつけることは出来なかった。


おかしいな。

ガゼフさんはここが紅蓮の牙のアジトだって言ってたんだけど……。



俺はガゼフさんにもう一度話を訊くためいったん村に戻ろうと洞窟を出た。

するとそこに、

「バランさんっ!」

リエルの声が。


顔を上げるとそこには大男に腕を掴まれたリエルがいた。

その周りには十人ほどの男たちもいる。


「なんだ貴様は? オレ様のアジトで何をやっている?」

リエルの腕を掴んでいる大男が俺を見て言う。


「リエル無事かっ?」

「は、はい、バランさんっ……」

「オレ様を無視するなっ!」

「きゃあっ」

リエルを横にいた男に突き飛ばすと大男は俺の前に立ちふさがった。


「貴様は誰だ?」

「リエルを返してもらう。ついでに奪った家畜も全部だ」

「家畜だと? はっ、そんなものはとっくに売り払ってやったわ。金貨五十枚で売れたぞ」


五十枚だって?

金貨百枚で買った家畜を半額で売ったのかよ。

くそ、せっかく俺が村のみんなのために稼いだお金なのに。


「そこの女も売るつもりだ。若くて美人だから高く売れるぞ。がははっ」

「させるか、そんなこと」

「バランさんっ」

リエルが男に掴まれながらも俺を心配そうに見ている。


「一応訊くがリエルと金貨百枚黙って返す気はないか?」

「はっ、オレ様を誰だと思っている。紅蓮の牙のリーダー、ガジュウ様だぞ」

「知らん」

俺はまだこの辺りには詳しくないんだ。


「ぐ、バカな奴め。おい、貴様らこいつを殺せ!」

「「「はっ」」」

ガジュウと名乗った大男が後ろに下がると周りにいた男たちが俺の前に出てくる。


「バランさんっ」

「貴様は自分の心配でもしていろ。これから悲惨な毎日が待っているんだからな。がはは――」


ドォン。


俺は瞬時に移動し男たちの後頭部を両手で掴むと二人同時に地面に叩きつけた。


「なっ!?」

振り返りその様子を見て驚きの声を上げるガジュウ。


俺は攻撃の手を緩めず次々と男たちの背後に回り込み顔を地面にめり込ませていく。


そして――


「洞窟の中にいた奴らも全員倒したからあとはお前だけだぞ」

「き、貴様ぁっ」


気付けば残るはガジュウただ一人になっていた。


「オレ様は紅蓮の牙のリーダー、ガジュウ様だぞっ!」

「それはさっき聞いた」

「なめるなっ!」

ガジュウが斧を手に襲い掛かってくる。


俺はそれをがしっと手で受け止めた。

レベル150は伊達じゃない。

一対一ならダメージキャンセラーに頼らなくとも充分勝てる。


俺はもう片方の手でガジュウのお腹にパンチを叩きこんだ。


「ぐはぁっ!」


よだれと胃液を吐いてうずくまるガジュウ。


「おとなしく盗んだ家畜の分のお金返してくれ。そしたらもう帰るからさ」

「はぁっ、はぁっ、ふざけるなっ……」


地面に倒れているガジュウを見下ろす俺。

これじゃまるで弱い者いじめをしているみたいじゃないか。


「まったく……はっ」

俺はガジュウの首の後ろをトンッと軽く手刀で攻撃した。


「がっ……!?」

ガジュウはその一撃で完全に意識を失ったようでばったりと地面に倒れた。


「ふぅ……リエル、大丈夫だったか?」

「は、はいっ。バランさん、ありがとうございましたっ」

リエルは特に怪我などをしている様子はない。

こいつらはリエルのことを売り飛ばそうとしていたから逆に手を出されずに済んだのかもしれない。



あとは……。

「この辺かなぁ……」

俺はガジュウの懐を探った。


「あの、何をされているんですか?」

「いや、こいつら家畜を金貨五十枚で売ったって言ってただろ。そのお金はどこかなぁって」

「それなら確か坊主頭の手下の人に持たせていましたよ」

「坊主頭?」


俺は倒した男たちの中から坊主頭の人間をみつけると懐を確認した。

するとそこには沢山の金貨が入っていた。


しかし数えてみるとやはり五十枚しかない。


「すみません、バランさん。バランさんがせっかく稼いでくださった大事なお金だったのに私たちのせいで……」

「リエルたちは悪くないよ。それにリエルが無事だったし、金貨も五十枚戻ってきたから充分だ」

「バランさん……」

「さあ、ガゼフさんが心配だ。村に帰ろうか」

「はいっ」


俺はリエルを抱きかかえると【紅蓮の牙】のアジトを飛び立ってみんなの待つ村へと急いだ。

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