第23話 さらわれたリエル
「リエルがさらわれた!? 一体どういうことですか?」
俺はベッドから飛び起きるとザジーの母親に訊ねた。
「さっきガゼフさんがボロボロの姿で村に帰ってきてわたしたちを見るなりそう言ったんです」
「ガゼフさんが? それでガゼフさんは今どこに?」
「気を失ってしまったので今は下の部屋で寝かせています」
「ちょっと待っててください、すぐ着替えますから」
俺は着替えを済ますとガゼフさんのもとに駆けつける。
ガゼフさんは布団の上でうなされていた。
「ガゼフさん!」
「……うぅっ……」
ガゼフさんは苦しそうな表情を浮かべている。
「怪我してるんですか?」
「ええ、でもこの村にお医者さんはいないので隣町まで呼びに行ってるんです」
「ガゼフさん、聞こえますかっ。リエルがさらわれたって何があったんですかっ?」
「……う、バ、バランどの……」
俺の声にガゼフさんは意識を取り戻した。
「……か、家畜を買って帰る途中のことじゃった……紅蓮の牙に襲われて家畜を全部奪われてしもうたのですじゃ。し、しかもリエルまでさらわれてしまって……くっ、面目ない……」
「紅蓮の牙?」
「この辺りを縄張りにしている盗賊団です」
ザジーの母親が説明してくれる。
「人身売買もするとかで……」
「すげー悪い奴らなんだよっ」
とザジー。
「そいつらのアジトってどこかわかりますか?」
「……バ、バランどの、行ってくれるのですか……?」
「もちろんです。早くしないとリエルが危ないですから」
俺はガゼフさんから盗賊団のアジトの場所を聞くとエクスカリバーを手にしてすぐに村を飛び出た。
空から懸命に探す。
『何よ、せっかく気持ちよく寝てたのに騒々しいわね』
とエクスカリバーの声。
「悪いな」
『空なんて飛んで何してんのあんた?』
「リエルが盗賊にさらわれたんだよ。助けなきゃ」
『リエルってあんたと暮らしてるボインボインな娘?』
「そうだよ。急いでるからちょっと黙っててくれ」
と、
「お、あそこかな?」
崖の下に大きな横穴が開いている。
洞窟のようだ。
そして入り口には剣を持ったガラの悪い男が二人。
あそこだな。
そう直感し俺は男たちの目の前に下り立った。
「っ!? なんだてめぇ!」
「どこから現れやがったっ!」
俺の姿を見て声を荒らげる男二人。
無造作に剣を構える。
「お前ら紅蓮の牙か?」
「だったらなんだってんだ!」
「二十歳くらいの女性をさらっただろう。どこにいる?」
「なんだそりゃ」
「意味わかんねぇことほざいてねぇで名を名乗りやがれっ」
男たちはまともに答えようとはしてくれない。
『ねえ、こいつらは悪人よね。殺っちゃってもいいでしょ』
「リエルが無事かどうか確認するのが先だ」
俺はエクスカリバーに答えた。
「リエル? 誰だそいつは」
「てめぇ、いかれてんのか!」
「あー、今のはお前らに言ったんじゃなくてこいつに言ったんだ」
俺は男たちにエクスカリバーを見せつける。
「おい、こいつ頭おかしいぜ。さっさと斬っちまおう」
「ああ、そうだな。殺してあの剣奪おうぜ」
男たちは顔を見合い相談している。
あの剣ていうのはエクスカリバーのことらしいな。
「おっさん、てめぇずいぶん高そうな剣持ってるじゃねぇか」
男が言う。
「いや、これはただのレプリカだ。金メッキだよ」
「うるせぇ! 恨みはねぇが死んでもらうぜっ」
男が剣を振りかぶり斬りかかってきた。
「うおらぁっ!」
……遅い。
アントワネットやダーソンと比べるとまるで止まって見える。
俺は軽々と剣を避けエクスカリバーでなぎ払う。
「がはっ!?」
崖の壁面にぶつかった男が地面に倒れる。
「な、なんだてめぇ! よくもやりがったな!」
「そっちから仕掛けてきたんだろ。それよりリエルはどこにいるんだ? 洞窟の中か?」
「し、死ねぇっ!」
俺の話を聞こうともしない男が剣をぶんぶん振りながら向かってきた。
まるで子どもの喧嘩のようだ。
「こら、おい……ちょっと話を聞けって……」
「死ね死ねぇっ!」
「言ってるだろうがっ」
「ぐはっ!?」
男のみぞおちにエクスカリバーを一突き。
男は崩れ落ちる。
「まったく……仕方ない、入るか」
俺は見張りの男二人を倒すと洞窟の中に足を踏み入れるのだった。
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