耽溺
まだ宮視点です。
先生は家に着くと私を抱えて部屋のソファに座らせてくれた。そうちゃんの家にも行ったことがない私は、男性の家に入るのは初めてだった。
「ごめんね、そこで待っててね。」
そういって部屋に私を残し、隣の部屋に入って行った。
「お待たせ本を持ってきたよ。さあ帰ろうか。ほら、立って!行くよ。」
「えっ。先生?」
「もう先生じゃないよ。圭介さんですよ。」
そういって私を立たせようと、手を引っ張る。私は訳が分からなくて何も言えなくなる。
「ほら宮さん、いつまで足のないふりをしてるの?行くよ。」
何?なんなの?足がないふり?立てないのに。足がある?
「ねえそもそも雨で、足がなくなるなんてあり得ると思っているの?おかしくない?それに何故みんな義足をすすめないのかな?」
「で、でも足の先はないですよ。」
「それは、脳がそう見せてるのかもよ。ねえ本当はずっとあなたの足はありましたよ、って私が言ったらどうしますか?」
私の足がある。だから皆いらいらしてたの?お母さんが毎回治療法聞くのも、そうちゃんが病院では治せないと言うのも、本当は足があるから?私の脳がそう見せてるの?
私は震えながら聞いた。
「せ、先生は何故ずっと黙っていたの?」
「僕はね、君を初めて見たあのときから、君が壊れるところを見たいだけなんだよ。」
7年かけて先生は私が壊れるところを待っていた。壊れる。心が壊れる。
「僕は満足だよ、さあ送るね。」
遠くで先生の声が聞こえていた。




