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特別の呪い

前半は蒼真視点、後半はかな視点です。


 俺が病院に連れて行ったあの日から、宮は部屋から出なくなってしまった。きっと俺が強引に病院に行くのをやめさせたからだ。また宮を傷付けてしまった、守ると誓ったくせに。おばさんが言うには、病院から帰ってきた後おばさんと喧嘩をし、部屋から出てこなくなったらしい。


「宮、俺だよ、話をしないか?」


「そうちゃんごめんね。」


「何故謝るんだ?開けてくれないか?」


「そうちゃんは最初からずっと知っていたのに。無理に歩かせたりしないでくれてありがとう。」


「なんだ?なんの話だ?」


「もういいんだよそうちゃん。自由になって私も自由になるよ。」


「おい宮開けてくれ!」


「私ね足を失って色んなものを失ったでしょう。だけどこの気持ちだけは失いたくない。」


「おい開けろ!」


「そうちゃん好きよ。今日は雨だね。私ね本当は雨が大好きだった。」


 扉の向こうから風の音が聞こえる。窓を開けたのか!雨の日に!


「おい宮やめろ!閉めるんだ!」


「そうちゃんがここまで言うなら嘘吐きは先生なのかな。でももうどうでもいいや。そうちゃん、お願い幸せになって。私ではない人と。」


「おい!ぶち破るからな!離れてろよ!」


 どんと体当たりをし扉をこじ開け、部屋に入ると窓辺に宮が座っている。雨が降っているのに。ここは二階だ、ただ落ちるだけでも足がない宮には危険だ。声をかけようとしたその時だった。


「そうちゃんありがとう、ずっと愛してる。」


 そういって窓から落ちていった。走って体を掴もうとした手は間に合わず、窓から見下ろすと、地面につく前に宮は笑顔で泡のように消えてしまった。窓にも地面にも服しか残っていなかった。俺はただ雨に打たれて、これは現実ではないとただひたすら呟いていた。

 おばさんが騒ぎを聞きつけ部屋に入ってきた。窓が開いていること俺が雨にうたれていること、宮がどこにもいないことで察したようだ。叫びにも似た泣き声で宮の名を呼び続けている。


「みや!みやー!」


「おばさん俺のせいです。俺が扉を開けるのが遅れたから。俺が殺したんです。」


「みや…みや…」


「おばさん、俺を恨んでください。」


 おばさんの耳に俺の声は届かなかった。



 棺の中に誰もいない葬式は滞りなく進行していた。喪主はおばさんが務めている。子をおくる気持ちは俺には分からない、それでもおばさんはしっかり喪主を務めていた。かなは大泣きして葬式の間泣き続けていた。しゅんはずっとかなを支え続けた。病院からはあの軽薄そうな医師が来て、ただ優しく棺に話しかけていった。

 俺は間違い続けて宮を失った。俺は宮がいなければ生きていけないのに。もっと宮に話せばよかった。もっと宮の話を聞けばよかった。俺はもう生きていたくない。宮が宮だけがずっと出会った時から特別な存在だったのに。



 宮が亡くなってから1年が経った。私はしょうの子供をみごもった。しょうはとても喜んでくれて仕事を増やすと意気込んでいる。

 おばさんはボランティアとかお花のお稽古を再開したけど雨の日は外に出て雨に打たれ続けている。私が部屋に入るように促すと、


「私は消えないの、いつもいつも。」


 と言って泣き出してしまう。

 蒼真君はあれから刑事課に移動届を出し、宮が亡くなったちょうど一年後に殉職した。小学生の女の子を庇って刺されてしまったそうだ。その日は晴れていたのに刺された後、雨が降ってきたらしい。その場にいた人に話を聞くと、最期はあまり苦しまなかったそうだ。そして雨に気付くと、


「ああ、宮迎えに来てくれたのか。」


 と言い残し笑顔で息を引き取ったそうだ。しょうはこの話を黙って聞いていた。そして私の手を握ってただ、帰ろうとだけ口にした。

 私たちはこの1年で2人の親友を失った。





「神様、私を他の人と違う特別にしてください。全員に特別じゃなくていいです。友達の関係を崩すようなそんな事件が起きて、私はそうちゃんの特別になるようにお願いします、神様。」


「宮何してるんだこんなところで。そんな小さな祠に拝んでも神様はいないぞ。もうバス出たみたいだ、仕方ないから歩いて帰るぞ。」


「わー罰当たりだよそうちゃん。今日ゲリラ豪雨が起きるかもって言ってたよ。」


「降ってきたらどこかで雨宿りだな。」



 そうちゃん神様にこんなお願いをした私のせいでごめんね。ずっと愛してる。



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