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贖罪と罪

 今回は蒼真視点です。


 宮が足を失ってから俺は、とにかく必死に勉強した。最初は研究者を目指そうとしたが、俺の得意なことと宮を守るという点を考えて、警察官を目指すことにした。それからは宮といるか勉強するかという生活を送り、実際に警察官になったら宮といるか仕事をするかという生活に変わった。

 これでも宮には償いきれない位だ。足を失った宮は前に比べて笑わなくなって、あまり話さなくなった。高校の時は明るくていつも人の中心にいる存在で俺には太陽のようだったのに。だから俺がそばにいてやらないと。俺の力が及ばなかったからあいつは足だけでなく、色んなことを諦めて様々なものを失った。



「さあもう帰りましょうか。」


 考え事をし過ぎたらしい終業の時間になったようだ、上司が声をかけている。警官といっても今の仕事は事務方だから特別なことがない限りは、割と早めにあがれる。これから宮に会いに行こう。お土産になにか甘いものを買って帰ろう。この頃宮は痩せてきていて、酷いときはなにも口にしないとおばさんが言っていたからな。


「高尾さんこの後少し飲んで帰りませんか?」


 後輩の菊池桃が飲みに誘ってくるが断る。


「すまん。今日はちょっと。」


「もう、今日は今日はって毎回じゃないですか。上司の飲み会にはちゃんと参加するくせに。私聞いてほしいことがあるんです。今日は私に付き合ってください。」


「わかった。一時間だけな。」


「やったーじゃあすぐ帰る準備します。」


 菊池はそういって女子更衣室へ消えていった。この間に帰ってやろうと思っていたが本当にすぐに出てきたので仕方なく居酒屋へと急いだ。もー足早ーいという言葉を無視して。



「しぇんぱいきいてますぅ?だからぁすきな人がいるんれすよぉ。」


 こんなにすぐに悪酔いするとは思わなかった。いつもの飲み会では普通だったが。


「あーそうか。だからなんだ。」


 俺は早く切り上げたくてイライラしながら答えた。


「もーしぇんぱい、やさしくしてくらさいよぉ。私ぃその人をみてるとどきどきして、しあわせになってほしいなとおもうんれす。」


「そうだな。じゃあそれでいいじゃないか。解決だな。俺は帰るぞ。」


「ひーどーい。私のことかわいくないんれすかぁ?こーんないい女一人置いていったらナンパされまくるじゃないれすかぁ怖いですぅ。」


 俺は腕時計を見たもう二時間は経っている。それに気づいたのか菊池が


「わかりましたぁ。帰るので送ってくらさい。」


 そう言ってふらふらと立ち上がった。俺は会計を済ませると、菊池を支えながらタクシーを拾った。菊池は自分の住所をつげたらしくタクシーは動き始めた。


「せんぱい、今日はありがとうございました。」


 そう言って眠ってしまった。5分もしないうちについたが、ゆすっても声をかけても、全く起きずに仕方なく運転手さんに俺の家の住所をつげた。少しあきれながら発進してくれるここからだと10分程だろう。マンションに着くとお金を払ってまだ寝ている菊池を支えながらエレベータに乗った。


「どうしてこうなったんだ。」

 

 一人呟く。


「先輩。」


 玄関を開けたところで起きたらしい菊池が口を開いた。玄関を閉めてリビングに連れて行く。


「先輩すみません。少し羽目を外しすぎました。」


「まあいいよ。悩んでいたんだろうお前が悪酔いするなんて珍しかったしな。」


「先輩。私。」


「なんだ?」


「先輩。私の好きな人は。あの、先輩好きです。先輩が教育係になったときからずっと。」


 一瞬の沈黙。


「そうか、ありがとう。でもお前の気持ちは受け取れない。すまない。俺はソファで寝るから、お前はベッドを使え。」


 そう言うと俺の部屋へ連れて行き菊池を寝かした。部屋を出ると俺の部屋から静かにすすり泣く声が聞こえた。

 俺は聞こえないふりをしてソファに寝転び目を閉じた。


 目が覚めたら菊池がいて、朝ご飯を作っているらしい。


「目が覚めました?先輩食べ物買ってきたんです。一緒に食べません?」


「ああ、ありがとう。」


「私、先輩から気持ちが返ってこなくても好きでいると決めました。人を好きでいる気持ちって尊いものですよね。こんなこと言ったら怒られちゃうかもですけど、仕事も私生活も頑張れるんです。だから好きでいます。それだけは許してください。」


「好きにしろ。」


 菊池は俺の返事を聞いて少しほっとした表情をしてパンをかじっている。なんだかハムスターみたいで俺は少し笑ってしまった。それに気が付いたのか菊池が文句を言おうとするが、もごもご言うだけで何を言っているのかわからず、俺はとうとう吹き出してしまう。菊池は真っ赤になって俺をぺしぺしと叩いた。こんなに穏やかな時間は久しぶりだった。めずらしく宮のことを考えなかった。




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