㉚ ウルフィは語る
「獅子王と虎王からのお誘い、さぞや怖かったろう?」
と狼王ウルフィが雪村に尋ねる。議長の任を解かれ、今はフランクな感じだ。
「はあ、正直な話、有無を言わせぬ感じがして、かなり強引だなと。」
雪村も、有りのままの気持ちを打ち明ける。
「古来、我々犬族が、もっともハダカ猿族にフレンドリーなのだ。猫族は勝手だし、鳥族は自由気まま。爬虫類族に至っては…何と言うか、やはり好戦的に過ぎる。」
「…そうです、よねえ?」
と思い当たる事が多々有る雪村。
「ワシは前々から、遥か昔に、それまで穏やかに暮らしていたハダカ猿族を改造して、好戦的な性格にしたのは、爬虫類族だと睨んでいるのだよ。」
「ああ、有りそうな話ですね。」
「もちろん、いにしえには、"犬猿の仲"といった時代もあったが、その頃は、キミたちがもっとこう…。」
「…猿みたいだった?」
「そう。そういう事だ。」
「まあ、そういう訳だから、これまでも、これからも、ニンゲンの良き隣人であり友人でもある我々の事を、ドンドン頼ってくれて良いぞ、という話だ。」
「ありがとうございます。」
二人は、この心細い異世界で、彼のその言葉を、本当に嬉しく思ったのだった。また、やはり、口に出してハッキリ言われると安心する、という実感を得た。
そして改めて、並行宇宙の壁を超えるチカラの扱いを、慎重にしなければ。と、決意を新たにする二人なのであった。
それから他愛もない雑談をした後、お茶会も解散となった。二人は狼王に、お茶をご馳走になったお礼を言って、黒いビートルに戻って来た。
「犬族・猫族からの、我々への注目度の高さが、良く分かったね。」
運転席からサン・ジェルマンが言う。
「ええ、並行宇宙を旅するチカラは、彼等が長い歴史の中で、大切に守って来たモノである事が、実感できました。」
助手席の雪村もそう言った。そして、こんな風に付け加えた。
「でもボク、思うんですけど。こんなに公明正大にチカラを開けっぴろげにしているの、ひょっとしてボクらだけなのでは?」
「ああ、他に誰も居ないと考えるのは、むしろ傲慢だろうね。だから、他のニンゲンの中に、もしも同じチカラを持つ者を見つけたら…。」
「…どうします?」
「…やっぱり、ココに連れて来るべきかな?」
少し苦笑しながら、それでも真面目に、伯爵はそう言ったのだった。
そして彼は、黒いビートルの、センターコンソールのリセットボタンを押して、一路、故郷の名護屋テレビ塔を目指したのである。




