㉘ 三たび犬猫会議
その後、無事に元の時空に戻れた雪村は、早速翌日、テレビ塔のサン・ジェルマンに会いに行った。
亜空間レストランに出勤していた彼に、昨日の話をすると、早速行こうという事になった。
実は彼も、こんな事態になりそうな予感は、有ったらしい。 しかし、流石の彼も、雪村が生身で並行宇宙の壁を超える日が来るとは、想像出来なかったと言う。
そんな訳で、二人は黒いビートルに乗り込み、急ぎ指定された座標に向けて飛び立った。
時空転位の出口は、独特の空間だった。
そこは、超時空サン・ジェルマン会議の現場に、良く似た亜空間だったが、何と、空間全体がピンク色に包まれていたのだった。
コレは後からアヌビスに聞いたのだが、その色には、居る者の闘争心を削ぐ効果が有るのだそうな。
それは猫族の祖先のアイデアらしい。
クルマを停める駐車場も、ちゃんと設けられていた。ただ、一つ一つのスペースが大きめだから、むしろ宇宙船用かもしれなかった。
指定された建物に向うと、ソレはピンクゴールド色のピラミッドだった。そう言えば、エジプトのアレも、確か犬族の作品だったな。サン・ジェルマンは、そんな事を思い出していた。
左右にスライドする扉を通り、入り口から建物の中へ入ると、すぐ正面が会議場だった。
室内は、各メンバーのための座席が取り囲む、すり鉢場になっており、その中央が議長と発言者の席になっていた。
場内には、もう既に、300名ほどの犬族や猫族が詰めかけており、二人が中へ入ったとたん、皆の視線を集めてしまった。
「ようこそ、二人のニンゲンよ。どうぞコチラへ。」
中央から、本日の議長の狼王ウルフィが、ヘブライ語で呼び掛けてきた。
二人は慎重に階段を降りて、発言席まで辿り着いた。
「二人とも、よく来てくれた。この時点をもって、我々に対する敵対意識は無いものと判断する。それでよろしいかな?」
議長は言った。
「…もちろんですとも。今日は、このような正式の場にお招き頂き、光栄に存じます。」
こういう場に慣れている、サン・ジェルマンが答えた。
「もう、およその見当はついて居るだろうが、ここは、全ての犬族・猫族の代表が集まる評議会である。」
「…はい。理解しております。」
「済まんが、我々はとても心配性なのだよ。特にハダカ猿族…つまりキミたちニンゲンの振る舞いには、ついつい神経を尖らせてしまう。」
「…それも、理解しております。時空を超えるための理論や技術を、真っ先に兵器転用…つまり原水爆の開発に利用したからですね?」
「うむ。それが正に代表的な例だ。キミたちは皆、好戦的過ぎるし、フロンティア精神と言うには、征服欲や支配欲が強過ぎる。」
「耳が痛いお話です。私自身は、そんな立場では有りませんが、仮りの人類代表として、承っておきます。」




