㉗ アクシデント
それに思い返せば、"真田雪子の危機を察知して、必ず駆けつける能力"も、この現象の一部と考えれば、大いに納得できるのである。
「おお、これはこれは由理子殿の兄上、如何なされたのかな?」
犬王アヌビスが尋ねる。
「いやあ、これは、そのう…。」
雪村は、しどろもどろになる。
「えっ、ちょっと待って。黒いビートル無しで、ココまで来たの?一体どうやったの?」
由理子が当然の疑問を口にした。
"万事窮す"だ。
「実は…。」
雪村は、自分の身に最近起きている事を、正直に一人と一匹に相談した。
「そんな事が…。」
由理子は、口をアングリとさせていた。
「…それは、さぞご心配でしょう。」
犬王には、同情された。
「しかしそれは、五次元人にも迫るような、貴重なチカラです。何とかコントロールして、大事にしたいモノですな。」
犬王は重ねてそう言った。
アヌビスは、表面上は平静を装ってはいるが、実は内心、かなり焦っていたのだった。
(おい、おい。ついさっきは、乗り物を使って、並行宇宙の壁を超える者に出会ったと思ったら、今度は、とうとう生身のカラダで、同じ事をやってのける者が現れたぞ。一体どうなっているんだ、昭和の時間軸は?)
その時、ダイニングルームに、またしても異変が起こった。
突然、巨大な影が二つ、入り口を塞ぐように現れたのだ。
それは、獅子王レオンと虎王ティガーだった。
「そちらにおられるのは、真田雪村殿とお見受け致します。」
レオンが言った。
「…はい。ボクがそうですが?」
雪村は、日本語を喋る、二足歩行の大きなライオンにビビって、オズオズと答える。
「キミの時間軸で換算して、明日の朝9時に、サン・ジェルマンとともに、この座標に来られたし。」
ホログラムで空中に座標を出して、ティガーが言った。
「来ていただけない場合は、すなわち、我々に対する敵対行為と見なす。」
重ねてレオンが言った。
「アヌビス殿、会食中に邪魔して済まない。これにて失礼する。」
最後にティガーがそう言った後、2頭の肉食獣は、その場から鮮やかに消えてしまった。
「…厄介な事になったぞ。」と犬王。
「アヌビス君、今の誰?」と由理子。
「超時空犬猫議会の重鎮だよ。実質、猫族は、彼等が牛耳っていると言ってもいい。また犬族には、それなりに重鎮が居るがな。最近は、専ら猫族に押され気味なんだ。」
「…素直に彼等の言う事を聞いた方が、イイのでしょうね?」
雪村が確認する。
「ああ、済まんが、そうしてもらえると助かる。」
犬王は頼むように、そう言った。




