㉖ 真田雪村
真田雪村は、実はこの22巻にも及ぶ、長い長い物語の主人公である。
ただ、次々に登場する、他のキャラクターのクセが強過ぎて、すっかり影が薄くなってしまっただけなのだ。
彼のふざけた名前の由来は、第1巻を参照していただくとして、ここでは、最近の彼の悩みについて語って行きたいと思う。
ごく平凡な大学生だった彼は、四次元人に憑依された影響で、様々な超能力を発揮出来るようになってしまった。(第9巻 参照)
だが、それはきっかけに過ぎず、元々のチカラのポテンシャルは、桁違いのモノであった。
例えば、彼はこれまで、惑星を一つ、他の星系にワープさせたり(第17巻)、 敵の軍隊を、全員まとめてブラックホール送りにしたり(第20巻)していた。
そういう訳で、目下の彼の悩みは、日に日に増大して行く、自らの能力の制御の事である。
不味い事に、この件については、内容が内容だけに、誰にも相談出来ないのである。
例え、それが"自分の分身である雪子"にでもだ。
そして、彼の最新の症状が"無意識に並行宇宙を超えてしまう"というモノであった。最早、五次元の住人にしか出来ないような振る舞いである。
それは、彼が疲れてボンヤリしている時に、よく現れる症状だった。ただ、意識を集中し直せば、ちゃんと元の世界線に戻る事が出来た。
だから何となく、ソレを放置していたのたが…。
今日はとうとう、それも叶わなくなってしまったのだった。
というのも、ボンヤリしていたら、ウッカリ犬王と、下の妹の真田由理子との、昼食会中の目の前に出てしまったからである。
多分ここは、犬王の居城のダイニングであろう。
慣例に従う事無く、アヌビスと由理子は、長いテーブルの中央辺りで、仲良く椅子を並べて食事中であった。
不味い事に、雪村は、その目の前の座席にキッチリ座る形で出現してしまったのである。
「あっ、お兄ちゃん。どうして!?今丁度ウワサをしていたのよ?」
由理子はビックリしていた。
実はコレも、雪村にとっては、"並行宇宙移動あるある"だった。誰かにウワサされると、その場に呼ばれるように出てしまう。それはまるで、"ウワサをすればカゲ"の諺を、地で行くような現象だった。
今までも何度か、そういう事があったのだが、たまたま、その人物の視界に入らずに、済んでいただけの事なのであった。




