再び離宮へ
いいね&評価、ブックマーク有り難うございます!
今回は家族にちゃんと別れを告げて、離宮へ向かう。準備と云う準備は無いが、お母さんがあれこれ持たせようとして、
「ここにあるものより、良いものが向こうに有るだろうし…」
と、出しては片付けを繰り返している。
「お母さん、大丈夫だよ。向こうに残してきたものも沢山あるから」
「そうねぇ。ご迷惑でないか心配だわ」
お母さんは、頬に手を当てて困った顔をしている。
…多大なご迷惑でしょうよ…
お母さんの言葉に、私は顔を引き攣らせた。
暫くすると、カイン様がやって来た。
「では、ティナ殿、参りましょう。ご家族に挨拶は済ませましたか?」
カイン様の言葉に、再び皆私の手を握って別れの挨拶をする。
「ティナ、無理せず、しっかり頑張るんだぞ」「皆さんへ感謝の気持ちを忘れずにね」「ティナ、頑張ってね!手紙書いてもいいかな?」「俺も手紙書くよ」
「皆、有り難う。頑張ってくるね。私もお手紙書くよ
」
「では、この袋に入って頂きます」
「え!今回は申請出来たのでは?」
私が聞くと、カイン様はやれやれと云う様子だ。
「寝たきりの状態のティナ殿が、何故貴族街に?富豪の子でもございませんのに。考えればティナ殿が魔力持ちで、魔力切れを起こして貴族街へ運ばれたのでは、と、貴族なら勘繰れます。姫様との繋がりを悟られても後々厄介な事になりかねません。ですので、今回も魔術具で」
…はい、もう分かりました…
家族は気の毒な子を見る目で見てくる。
…そんな目で見ないで(泣)
羞恥で赤くなっている私を、お父さんとカルムが袋に入れる。
「では、行ってまいります。皆様にはまた時折ご報告に参ります」
カイン様の声がして、家族がカイン様に挨拶しているのが聞こえる。
フワリと浮かんで、飛び立った。
暫くすると、セレスティナ先生の声がした。
「何も問題は無くて?」
「はい。ティナ殿も元気でいらっしゃいます」
「そう。では行きましょう」
ゲートも問題なく通り抜け、久しぶりの(私の感覚ではそんなでもないが) 離宮にやって来た。
ベッドに下ろされ、袋から出してくれる。
「ティナ様、お久しぶりでございます」
袋から出ると、笑顔のメル様がいた。
「お久しぶりです。またご厄介になります」
「あれから3年も経つんですね。ティナ様もすっかりお年頃になられて」
「?」
…寝たきりだったのに、育ってるの?
「ティナ殿。ティナ殿が眠っている間にも、我々が栄養を与え、成長を阻害せぬ様にして参りました。しっかり成長されていらっしゃいますよ」
カイン様が笑顔で言う。
…私、成長してるんだ。早く動けるようになって、どれだけ大きくなったか見たい!
「ティナ様はお着替えなさいます。お父様は出て下さい」
「おや、これは失礼致しました。ご家族のお手紙等は、私がお届けしますので、お申し付け下さい。それでは」
カイン様が部屋から出ると、メル様によって、着替えさせてもらう。
「やっぱり、置いていった服では小さいですね。私のお古で申し訳ないですが、我慢してくださいね」
「いえいえ、用意してもらって有り難うございます。メル様のお下がり嬉しいです」
「嬉しい事を言ってくれますね」
メル様に色々整えて貰った後、枕で支えてもらって半身起き上がった。少し動くようになった手で、ゆっくりお茶を飲んだ。
コンコンと小さなノックが聞こえた。
「はい」
とメル様が返事をすると扉が開いた。中へ入ってきたのは、フラフラと危ない飛び方をしている天使だった。
…天使?!何だその超可愛いのはっ!
「おかあたま」
「あら、ザック。来たのね。ティナ様にご挨拶なさい」
ザックと呼ばれた天使は、メル様に抱かれると、おずおずと挨拶してくれた。
「ざっかりあす・うぉるふぉるとです。にさいです」
ずっきゅんやられた。緑色のフワフワの髪にクリクリお目め。同じく緑の小さな翼。めっちゃ可愛い。
「ご挨拶有り難う。ティナといいます。宜しくね」
私がニッコリ笑うと、恥ずかしそうにメル様の胸に顔を埋めた。
「つい先日2歳になった所なんです」
メル様がお母さんの顔をしている。
「私には離宮に居たのはついこの間なんですが、メル様にこんなに可愛いお子さんが居るのをみたら、時間が経っているのを痛感します」
「そうですねぇ。始めてティナ様にお会いしたのは、婚儀を結んだばかりの頃でしたから」
「メル様は、高位の貴族でしょう?乳母は居ないのですか?」
「上位伯爵家なので、乳母を付けるのが普通何でしょうが、この離宮でアルベティウス様のお世話をする以外、余りやることも無いので、付けなかったんです」
「中々珍しいのでは?」
「高位の貴族で乳母が居ないなんて、聞いたことないですね」
うふふふと笑って言う。
―メル様は実は相当変わったお人なのではなかろうか。
「でも、そろそろ家庭教師が必要ですね。お父様が良い人を見つけてくれるそうなので、待っているのです」
…2歳で家庭教師か。貴族も大変だな。
ザックくんとも大分仲良くなり、3人でキャッキャしていたら、扉が開いた。
「ティナ。久しぶり」
「お久しぶりです。アルベティウス様。またお世話になります」
「あるべてぃーしゅたま、こんちには」
「ザック、こんにちは。今日も元気だね」
アルベティウス様はこちらに寄ってくると、ザックくんの頭を撫でた。
「では、私は失礼します。ご用意があればお呼び下さい」
「ザックくん、またね」
「ティナしゃま、あるべてぃーしゅたま、しちゅれいちましゅ」
ザックくんは、メル様に抱かれたまま、部屋を去った。
…めっちゃ賢いやん
キチンと挨拶する2歳児にビックリだ。
「さて、ティナ。無理をしたようだね。本当に驚いたよ」
「…ご心配お掛けしました…」
「師匠から散々叱られただろうから、僕からは何も言わないよ。それにしても、平民とは本当に白い服しか着ていないんだね」
―私のお見舞いに来てくれたんだっけか
「私が眠っている間に、お見舞いに来て頂いたようで、有り難うございます」
「初めて平民街に行ったから、とても楽しかったよ。面白い形をした小さな家が沢山あったよ」
…フリアの家なんて平民では大きい方だろうけど。王子様には無縁だわね
「君のお母さんもお姉さんも君に似て美人だったよ」
…何見てきたんだ。
「父と兄は居りませんでしたか?」
「…居たかも知れないけど…男の人って中々記憶に残らないんだよね」
―アルベティウス様って意外に女好きなのか?
「僕が名乗ったら、青くなって彫刻の様に固まった人なら居たかも」
…お父さんが、第一王子と分かって緊急で固まったのか。お父さん、ごめんなさい…
「アルベティウス様が平民街へ赴く何て、大騒ぎでは無かったのですか?」
「僕は継承権を放棄した王子だからね。大した影響はないよ」
「そんなことは無くてよ」
セレスティナ先生がやって来た
腰に手をやって何だか怒っている。
「共も付けず平民街に行ったと聞いた時は、危うく目を回すところでしたわ。いくら、継承権を放棄したとは言え、貴方は現王の長男ですのよ。危険はございます」
「師匠…散々言われたので、もう勘弁してください」
アルベティウス様の眉毛が嫌そうにハの字になっている。
「全く…私の弟子達はどうしてこうも、とんでもない事ばかりするのかしら」
セレスティナ先生は、はぁと溜息を吐いた。
「この師匠にして、この弟子あり。と云う事でしょうね」
「バルド!」
セレスティナ先生の眉毛が逆のハの字になった。
「…お茶ををお淹れ致します」
カイン様は部屋を出た。
…逃げたな。
何だかんだで、この離宮は暖かい人達ばかりで楽しい。家族とまた会えなくなったのは寂しいが、笑って再会出来るように、リハビリ頑張ろう。




