心に染みる忠告
いいね&評価、ブックマーク有り難うございます!
目が覚めた翌日、セレスティナ先生とカイン様が再びやって来た。
「態々ご足労頂いて有り難うございます。この様な場所からで申し訳ありません」
私が横たわるベッドから、二人に挨拶をした。
「子供がその様な大袈裟な物言いをするものではないわ。素直にお話しなさい」
セレスティナ先生は困った顔で言う。
「…身体は動かないし、何が何だか分からないので来てくれて嬉しいです」
素直に言った。
「それで良いのです」
セレスティナ先生はニッコリ笑う。
セレスティナ先生はベッドに腰掛けた。
「先ずは、貴女が疑問に思っている話をするわね。何故今回は離宮に運ばなかったのか」
―そうそれ。自分が迷惑を掛けたので言えた義理では無いけど、魔力切れなら、またアルベティウス様に頼めば、こんなにも長く意識を失う事もなかったのでは?
「魔力放出で魔力切れを起こした時、貴女はベティから魔力供与して貰ったお陰で、意識を取り戻す事が出来たわね。魔力供与と云うのは受け取る側に酷く負担が掛かるの。以前、魔力を水袋に例えたけれど、魔力供与は云わばその袋に傷を付けて、その穴から無理やり魔力を注ぐ様なものですの。貴女は離宮で気を失ってる間に、何度か魔力供与を受けていて、その袋は既に傷だらけでしたの」
…なるほど。魔力供与が何度も出来ないって言ってたのは、そういう訳だったのか。
「離宮から戻ってきてから、手習いはお休みしていたでしょう?ベティは貴女の魔力を見ることに長けていて、貴女に負担がかからないように魔術の訓練を行っていけれど、私には貴女の魔力は大き過ぎて見えないのよ。だから、傷が癒えるまで手習いはお休みだったの」
…傷が癒えてないのに、大きな魔術を使ってしまったってことか。
「貴女がカルムの命を救った。確かに事実だけれど、本当に愚かだったと云う事も心に刻みなさい。貴女が行使した魔術によって、塞ぎかけた魔力の袋の傷は開き、全ての魔力を使い切る事になった。その為に、貴女は命を落とす所だったのよ。傷だらけの魔力の袋にはもう魔力を注ぐことは出来なかった。今こうして居られるのは奇跡と言ってもいいのよ」
セレスティナ先生は、はぁと溜息を吐いて続けた。
「貴女は、あの時はこうするしかなかったと思っているけれど、本当にそうかしら?生憎オルフも不在だった様だけれど、フリア辺境伯には連絡を取ってみたのかしら?」
…お父さんも総長さんもすっかり忘れていたと思います
「…ダスリーにも聞いたので分かっていてよ。フリア辺境伯の事は考えてもいなかったと。フリア辺境伯は貴女の庇護を明言していてよ。頼ってくれなかったと、肩を落としていたわ。ああ見えて、フリア辺境伯は癒しの魔術は得意な方なの」
―ああ見えてって、セレスティナ先生にはどう見えてるんですかね?ま、確かに癒しの魔術が得意には見えないけれど。
「ここは平民しかいない様な場所よ。ここで王族や貴族が居ないのに、子供の貴女が魔力を使う事は、無謀としか言えないわ。貴女は魔力を使い始めたばかりなのだから、慎重過ぎるくらいで丁度良いのです」
「…本当にご迷惑お掛けしました…」
「別に迷惑だなんて思っていないわ。目覚めて直ぐにお説教だなんて、私も辛いわ。ただ、ティナ、貴女を愛していて、心配しているだけなの。もう、こんな思いは沢山よ」
悲しげに涙を浮かべるセレスティナ先生を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、私も涙が出てきた。
「貴女を泣かせる積りでは無かったのよ。分かってくれたらそれでいいの」
セレスティナ先生は、私の涙を指で拭った。
「はい。もう二度としません」
…家族も、セレスティナ先生達も心配させるようなことはもうしない。
「さぁ、お説教はもうおしまい。動かなくなっているその体をどうにかしないといけないけれど、此処では無理ね。3年で魔力は回復してるだろうけど、魔力を見ながら訓練出来る人は此処には居ないしね」
「…離宮ですか」
「まぁ、そうなるわね」
…せっかく帰ってきたのに
「目覚めて間もないし、2〜3日は安静ね。来週の中頃に迎えに来るわ。ご両親には話しておくわね」
…仕方ないか。それにしても…
「セレスティナ先生、どうして私は3年も目が覚めなかったのでしょうか」
私の質問に、うーんと考え込みながらも答えてくれた。
「あくまでも想像だけれど、貴女は直前にも魔力が底を突いた。短い期間に2度も魔力を使い切った事によって、体の防衛機能が働いたのではと思っているの。それに、王族や貴族は生まれて間もない頃から、魔力を使う訓練をするので、魔力を使っても回復するコツみたいな物を体が分かっているの。貴女はまだコツを掴んでいなくて、効率的に回復する事が出来なかった。その2つがあったから、3年も眠る事になったのではないかしら」
―体が、目覚めて大丈夫だと判断するまでに時間が掛かったのかなぁ
「セレスティナ先生達が時々魔術を掛けていたと聞きました。何を為さっていたのですか?」
「3年間も寝たままだと、水分や栄養も取れないし、床擦れが出来るでしょう?平民のご家族に、何とかできる事でなかったので、魔術で栄養補給と、床擦れが出来ない様に、皮膚をガードしていましたのよ」
…!!介護して貰ってた。
「セレスティナ先生は命の恩人だったんですね。本当に有り難うございました」
真っ青になってお礼を述べた。
「日々落ちて行く筋肉の活性化は、中々出来なくて申し訳なかったわ」
「いえ、死なずに済んだだけで十分です」
「もう、ご家族全員貴女が魔力持ちだとご存知みたいだし、エリスやカルムにも離宮に連れて行く話をしても宜しくてよ。ただ、他には口外法度でお願いするわね」
「はい。分かりました」
「では、今日はお暇しますわ。迎えに来る前に先触れはお出しするわ」
セレスティナ先生は、私に挨拶すると、お母さんの所に行った。
「ティナ殿。離宮には娘が居ります。ティナ殿のお世話を致しますのを心待ちにしております。どうぞご安心を」
カイン様が、微笑んでいる。
「はい。メル様が居るなら安心です。宜しくお願いします」
「…アルベティウス様も張り切って居られましたが…」
「え?」
…何か不吉な呟きが聞こえたけど
「いえ、では、来週お迎えに参ります」
セレスティナ先生達は、お母さんの見送りを辞退して、去っていった。
…あの地獄のリハビリがまた始まるのか…
絶望的な、気持ちになりながらも、また会える事を楽しみにしている自分もいた。




