失う光
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リハビリが始まった。先ずは一人でベッドの中で半身起き上がれるように、上半身と腕のリハビリからだ。
魔術を使って動かす事もできるけど、それをすると何時まで経っても筋肉が戻らないので、禁止されている。魔術を使わないリハビリなので、アルベティウス様が忙しい時は、メル様が担当してくれている。
「ティナ様、魔術を使ってはなりません」
メル様は魔術の動きに敏感な様で、こっそりズルをしようとしても直ぐ見つかる。
「…ごめんなさい」
「疲れたのなら、ちゃんと言ってください。無理やり続けても意味はございません。少し休憩にしましょうか。お茶をお淹れしますね」
…動かないともどかしくて、つい魔術使っちゃうんだよね。いかんいかん
メル様が、お茶のワゴンと共に戻って来た。ザックくんも一緒だ。
「ザックくん、こんにちは」
「ティナしゃまこんちには」
「ザック、こんにちは。よ」
「こんちには。あれ?こんち、こんにちは。言えた!」
得意気に、メル様を見上げるザックくんが、今日も天使です。
―おや?メル様ちょっと元気がないような?
ザックくんを見つめる瞳に陰を感じた。
「メル様、何かありましたか?」
私が尋ねると、ハッとした顔をした。
「申し訳ございません。悟られてしまうなど、従者失格です…」
「従者だって人間なんですから、時にはそういう時もありますよ。私で良ければ、話を聞くくらいなら出来ます」
「…有り難うございます。聞いて頂けますか?」
メル様は、ゆっくりと話しだした。
「実は…ザックは双子だったのです。本当ならば、妹がおりました。しかし、名を納める前に亡くなりました」
「そんな…」
「とても元気に生まれました。二人ともすくすく育っていたのに…二人分の納めの魔晶石も準備して、納める日まで後数日。そんな時、急に亡くなったのです」
―突然死だったのかな?
「少しでも息があれば、治癒出来るのですが、泣き出したのを綾していたら、泣きやんだ途端、目から光が消えたのです」
「!!」
―メル様の腕の中で逝ってしまったってこと?!
「直ぐに治癒の魔術を行使しましたが、既に息はありませんでした。もう1年経つのですが、時々ふと光を失ったあの子の目を思い出して、辛くなるのです。私の対応がいけなかったのでは?どうにかして助けられたのでは?と…ティナ様?!」
メル様の話を聞いているうちに涙が止まらなくなってしまった。私も前世では二人の子供が居て、三人の孫も居た。子供を喪う辛さ何て十分理解できる。しかも、腕の中で成す術なく冷たくなる我が子を、どんな気持ちで見ていたのか…
「ティナ様、有り難うございます。あの子を喪った時、ザックの為にも泣いてばかりじゃ駄目だと、余り泣けなかったので。代わりに泣いてくださって…」
「ティナしゃま。どこかいたいでしゅか?どこいたい?」
ザックくんが泣いてる私の側に寄ってきた。
「ああ、ザックくん。大丈夫。ザックくんのお陰で痛くなくなったよ」
「よかったでしゅ」
ザックはくんの天使の笑顔で私も笑顔になる。
「…メル様、良ければ亡くなったお子さんのお名前教えてくれますか?」
「…エフェメリアといいます」
「エフェメリアちゃんの為にお祈りしてもいいですか?」
「ええ是非!私もご一緒します」
私はベッドで座ったままバッテンポーズをした。メル様もそれに習う。
「大空を護る総ての母シュラーリア様。エフェメリアが月の世で輝く星と成れますように、お見守りください」
ザックくんも、よたよたしながらもバッテンポーズを頑張っていた。
「ティナ様、有り難うございます。ザックの為にとエフェメリアの事を無理して考えないようにしていた気がします。でも、これからは悼む気持ちは表に出していこうと思います。ザックも一緒にお祈りしてくれますし」
「私も一緒にお祈りします」
「ぼくも!」
「まぁ、有り難う」
…メル様ちょっと元気になったかな
「…やはり、ここ何十年も続く突然死何でしょうか?」
「…ええ。セレスティナ様の見解もその様でした」
「?どうしてセレスティナ先生なんですか?」
「あら?ご存知ありませんか?セレスティナ様は、乳児突然死研究の第一人者でございます」
…そうなんだ!初めてあった時もちょっとそんな事言ってたな。
「ティナ様は、来年セレスティナ様の次女として発表されると聞きました」
「…はい。そうみたいですね」
―そうか。来年なのか。3年間寝ていたから、ワープしたような気分だ。家族で過ごせるのは後ちょっとしかないのに、何で私は此処に居るんだろう…
ちょっと悲しくなってしまった。
「アトワーフに戻る前に実は出産されていてと」
「そんな話でしたね」
「強ち間違っては居ないのです。セレスティナ様も、私同様に、名納め直前にお子様を無くされておいでなのです」
―!!
「もし、生きていらっしゃれば、ティナ様の一つ年上の姫様でございました」
…セレスティナ先生は、私をベレナルフで産んだ子供と言う事にするって提案した時、どんな気持ちだったんだろう?きっと亡くした子の事を考えたに違いない。お母さんが、『システィーナ』って名前を提案した時も、『姉妹みたいでいいですね』って笑ってたけど…本当はとても辛かったんじゃないかな…
「セレスティナ先生は、自分も突然死を目の当たりにしたから、何とかしてこの突然死を無くしたいって思ったんですね」
「ええ…。父にも聞きましたが、決して人には辛い思いをお見せにならなかったそうです。今にしてみると、そのお気持ちが、痛いほど身に沁みます」
…私はその子の代わり何だろうか?それとも、そんな事は考えなくてもいいのかな?
思いも寄らない事実を知ってしまい、戸惑っている自分が居る。
―ちゃんと話をしよう。ここは曖昧にしてはいけない気がする。
私は、セレスティナ先生としっかり向き合って話をする決心をした。
…その前に、リハビリだな…
笑顔で入室してきた、アルベティウス様が視界に入り、現実を思い出してしまった。
ちょっと短くてすいません




