食って強くなれ
「まぁ食欲が湧かないのも無理はないけど倒した怪人を食べないと強くなれないからね。」
黄色いおっさんが旨そうに黒いカレーを頬張りながらサラリと何か大切な事を言ったのですぐに聞き返してしまった。
「食べないと強くなれないってどういう事ですか!?」
「ん?そのままの意味だよ。分かりやすく言うとRPGのゲームは敵を倒して経験値を得て強くなるだろ?倒した怪人を食べるっていうのはその経験値を体内に取り込む事だと思えばいいよ。だから幾ら怪人を倒してもそいつを食べないと強くはなれないんだよ。」
分かりやすい説明ではあったが理解するのにというよりは自分を納得させるのに少し時間がかかった。そして疑問は目の前で白米だけを頬張る男に向かった。
「マタタキさん?でしたっけ?この人は白米しか食べてないじゃないですか!おじさんの言ってる事が矛盾しますよ!」
そう言うと白米を口一杯に詰め込んだ男が掠れた声で
「俺はもう十分強いから食べる必要がない。」
「そういう設定なんだろ!そもそも食べないと強くなれないってなんだよ!怪人が食べられないモノだったらどうするんだよ!そもそもこの世界は何なんだよ!」
溜め込んでいた不満が一気に吹き出してしまった。
「まぁそう思うのも無理はないよね。俺もここに来た時は今の君と同じ様な事を思ったもんさ。でもね、慣れるしかないんだよ。もう元居た世界には戻れないんだからここで生きていくしかないんだ。後俺の名前はサイトウだ。自己紹介が遅れてすまないね。」
サイトウと名乗ったカレーのおっさんの言葉は混乱する俺を少しばかり正常に戻した。
「でも俺はただの売れない特撮俳優だ。普通の人間なんだよ。怪人なんかと戦えるわけないじゃないか・・・」
「皆んな揃ってる?あーもうマタタキ君また電気全部消してる!ダメだよ!たまには太陽の光を浴びないと!」
重い空気が流れる空間に一際明るい「女」の声が響いた。




