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デフォルトは怒鳴り声。

ど~ん。

 膝に手をついて上がった心拍数を整えていると、正面の扉が開いて黄緑色のワンピースを着た女の子が手に木の桶を持って現れた。


「――」

「――」


 おお。何を言っているかは分からないが、不覚にも秋葉楓が格好良く見える。

 恐らく挨拶か何かだろう。少女と秋葉楓が二言、三言言葉を交わすと、少女は笑みを浮かべ、桶の中の水を建物の前に並べられている花壇に水をかけ始めた。この世界にはジョウロもないのか、桶から手で水を掬って、まだ芽が出たばかり花壇に水をかける姿は健気にも見えなくはなかったが、少女が楽しそうに鼻歌を歌っているところを見れば、少女の中では普通なのだろう。

 少女が一通り水をかけ終わると、それを待って秋葉楓は少女とまた話だした。

「――」

「――」

 相変わらず何を言っているか分からないが、何となく予想は着く。少女が時折驚いているところを見れば、こんなところだろう。


あら、丁度いいわね。

何でしょうか?

ちょっと部屋を貸してくれないかしら。

え?

ついでにお酒とおつまみも出してちょうだい。

あの……

そうね、部屋は静かなところがいいわ。角部屋なんかいいんじゃないかしら。

お客様、それは……

何?私の言うこと聞けないっていうの?

いえ、そんなことは。

生意気ね。そうだわ。そのブレスレット。それをくれたら許してあげる。

これですか?

そう、それよ。それを私に譲ってくれたらさっきまでのこと、無かったことにしてあげる。

分かりました。それで許してくれるんですね。

云々。


 少女がブレスレットを秋葉楓に渡す。秋葉楓はそれをしげしげと眺めると、自分の首元に持ってきて少女に何か問いかける。少女は嬉しそうに手を叩いて秋葉楓に何事か言った。

 どうやら恐喝のような事実はないらしい。俺は一人ほっと溜め息を吐いた。


「なに溜め息吐いてんのよ」


 どうやら話は終わったらしい。扉の奥に少女が走っていくのが見えた。


「話はついたわ。行くわよ」


 秋葉楓はそう言うと、何の説明もなく少女の後を追いかけるように扉の奥へと消えて行った。いったいどんな話がついたというのか。俺は内心で再びため息を吐くと、秋葉楓の後に続いた。


「――!」


 扉を開けると、快活な女性の声が耳に飛び込んできた。いや、何を言っているかは分からないが。

 声の方に目を向けると、赤い髪を後ろで束ねた恰幅のいい女性がこちらへと歩いてくるところだった。


「――」

「――!」


 女性は俺のことを嘗めるようにつま先から頭まで凝視しながら何か言い、それに秋葉楓が怒ったように言葉を返した。

 しかし、恰幅のいい女性に詰め寄られるのはなかなかに迫力がある。


 俺が苦笑いを浮かべながら若干身を引いていると、女性は俺の背中を勢いよく叩いて離れて行った。

 ああ、怖かった。

 安堵の溜め息とともに胸を撫で下ろす。すると、今度は秋葉楓がつかつかと歩み寄って来た。そして一言。


「勘違いしてないでしょうね」


 何を勘違いするというのだろうか。訳が分からず俺が眉を顰めると、秋葉楓はふんっと鼻息荒く建物の奥へと歩いていく。


 俺はそんな秋葉楓から意識を離して、ぐるりと室内を見回した。いったいここはどこだというのだ。

 一見すると食事処のようであった。入ってすぐ脇のところに階段があり、その横には受付のような、カウンターのような場所があり、眼鏡をかけた爺さんが煙草をふかしながらそこに座っている。部屋の奥には厨房が見え、そこでは頭にバンダナを巻いた筋肉質の男性がフライパンだろうか、鉄の板のようなものを振り回しながら何か作っているようである。部屋の中央にはいくつかの丸テーブルがあり、客か何かが数人座っている。


 秋葉楓はというと、無遠慮にも厨房の中に足を踏み入れ、あまつさえそこに置いてある料理の乗った皿を手に取っている。

 さすがにそれはどうかと思うが、口にすることはない。したところで、秋葉楓は俺の言うことなど聞きやしないし、下手をすれば一言二言反論を食らうかもしれない。


 俺が黙ってその様子を眺めていると、秋葉楓はくるりとこちらを振り向き、怒鳴った。


「早く来なさいよ!」


 怒鳴り声はあいつのデフォルトなのだろうか。俺は足早に秋葉楓のもとへと向かう。さすがに秋葉楓と同じにはなりたくないと、厨房に入る時に「失礼します」と頭を下げたが、後から思えば言葉が通じないのだから意味がなかったのかもしれない。

 俺がやって来たのを見て、秋葉楓は手に持った皿を俺に差し出した。


「はい、持つ!」


 俺は黙って皿を受け取る。そんな俺に二枚、三枚と料理の乗っかった皿を手渡し、俺の腕に皿を置く場所がなくなったところで、秋葉楓は最後の一枚を自分の手に持つと、鉄の板を振っている厨房の主に一言声をかけて、厨房を後にした。


 しかし、器用な奴だな。俺には日本語、こっちのやつにはこっちの世界の言葉と、きっちり使い分けていやがる。


 俺も秋葉楓に続いて厨房を後にする。両腕に皿を乗せた状態で、口を開くと唾が飛ぶ可能性もあったので、厨房を出ていくときは頭を下げるに済ませた。厨房の主が軽く顎を引いたように見えたが、まあ気のせいだろう。

次回の更新は明日。文字数少ないのはご愛嬌。そうじゃないとエタってしまう悲しいサガ。

そんなわけで読んでくれてありがとう。是非次回も呼んでちょ。

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