48話 気づいたら
もんちです。
「ま、お前の場合、運動してっから無駄に増えたとも言いがたいけどな」
弓梨は勉強が出来る上、運動も出来る。俺の思い過ごしかもしれないが、頭のいい奴は大体他のことも普通より長けている。ピアノ、スポーツ。ここら辺は定番中の定番だ。テンプレ過ぎて、どっかのラノベかと勘違いしてしまう。
「でも、筋肉が付いた気もしないんだよね……」
「部活引退した後も運動してるんだろ?」
「一応。毎日5キロ走ってる」
「5キロ……ハハ、俺全く動いてねえわ……」
「月夜も走った方がいいよ! 楽しいしスッキリするから!」
「何言ってるんだお前。体内の酸素が徐々に減っていく拷問のどこが楽しいんだ。あんなの授業から除外するべきだろ」
「えー……凄く楽しいのに、分からないなんて月夜損してるよ」
「俺的にこれっぽちも損した気分にはなって無いから大丈夫」
「……ひねくれものめ」
「いくらでも言え。俺はひねくれものだ」
弓梨は余計顔をムスッとさせ、それから数十秒ほど無言で過ごす。そして赤い顔を上げる。
「……お風呂ちょっと熱くない?」
「そうか? 俺はこれぐらい熱くないと、風呂に入った気がしないんだけど」
「温度下げて」
「……しょうがねえなぁ」
しぶしぶ後ろに振り返り、おいだきやらのボタンの中から温度調節のボタンを探す。そして下を向いた矢印のボタンを2度押す。
「ほら、これで少しはマシになるだろ」
「うん、ありがと」
ぬるいのは嫌だが、弓梨がのぼせてしまっては大変だ。こんなに狭いところに2人で入っているわけだし、余計気にしなければ……
「ん……?」
2人? ……何かがおかしくないか。
「どしたの?」
「…………」
「?」
「…………弓梨、何故お前が風呂に入っている?」
「入りたかったから?」
「あれだけ言ったよな!?」
「私が入っても月夜何も言わなかったじゃん」
……確かに。どうして俺は何も言わずにこの状況を受け入れてるんだ……?
「……どこから入ってた?」
「私が5キロ走ってるってところから」
「…………」
いかん、完全にのぼせている。普通だったら気づくだろ。何普通にウェルカムしてんだ俺。
「やっぱボーッとしてたんだ。足入れても怒らないから入っちゃった」
「入っちゃったってお前な……」
「たまにはいいじゃん。こんな機会滅多に無いんだから」
「多分今後一生ねえよ……」
幼なじみと風呂に入るとかいうどっかのエロゲみたいなイベント、何回もあってたまるか。




