36話 2つ下に敗北
やっほっほ〜
「ふふっ」と笑い、微笑ましい光景を眺める弓梨。
「お兄ちゃんだって不健康な生活送ってるじゃん! いっつも真っ黒なくまがこーんな感じにくっきり出来てるよ!」
黒いパッケージをした一口サイズのチョコ棒を目の下に当てて、俺に似せようとしているのか目を細める美月。
「お、俺は別にそれでも大丈夫だからいいんだ。寝不足な分楽しい楽しい最高の時間を過ごせていて満喫しまくってるからな! この生活に不便なことなんて一切無い!」
朝の異常なほどの気だるさと、授業中寝ずには居られないほどの睡魔以外には! 今はその気だるさにも慣れてきて、もはやそれがない時には悲しいくらいだよ!
「へぇ〜、不便じゃないんだあ〜。深夜3時とかに超特盛カップラーメン食べて朝全部戻しちゃったりしてるのに?」
「うっ……」
痛いところを突かれた……。
そう、俺は何度か深夜テンションで踊りたくなるほどに気分が上がり、ノリでつい超特盛のとんこつラーメンを大食いタレントのように流し込み、朝それを滝の如く、今度はトイレに流したのだ。
あの時はなぜあんなことをしてしまったんだ……俺はとんこつより醤油が好きなのに、とんこつを食う辺り相当気分上がりまくってたんだろうな。あれは言わずもがな俺が馬鹿だった。
「確かその日気持ち悪過ぎて、夜ご飯も食べないで寝込んでたよね。それで全く支障がでないと?」
美月に拷問をするかのように追い打ちをする。
このっ……なんで俺は2つ下の妹にことごとく弱点を攻撃され、何も言い返せなくなっているんだ! クソっ! にまにましてんのうぜえええええ! この勝ち誇った顔がうざくてたまらないんだが!
「お兄ちゃん、お菓子食べてもいいよね?」
やけに圧力のかかった笑みで近づく美月に俺はこう答えるしか無かった。
「…………今回だけだからな」
「わーーい! お兄ちゃんに勝っちまっしたーーー!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて勝利宣言をする美月に俺は、年下に負けた悲しさと、嬉しそうな態度に相当ないらだちしか感じなかった。
「この俺が、お兄ちゃんが負けた……妹に脅されて負けた……」
膝と手を床につけ、哀れな姿の俺を見て、弓梨が優しく声を掛ける。
「月夜、大丈夫だよ! 私がお嫁さんになるからね! 安心して!」
全然フォローになってねえし意味わかんねえよ。絶対言いたかっただけだろ。悲しさに浸っているからって「うん」とでも言うと思ったのか。
「弓梨、もう飯を作ろう、お嫁さんになる話は置いといて飯を作ろう」
「え!? 私月夜のお嫁さんになれるの!?」
「うん。飯を作ってくれ」
もう知らん。




