33話 事件はテレビで起こっている
お股背しました。
「ふむ、テレビを見ている時に後ろから刺されたようだな」
キリッとした真面目そうな、30代半ばくらいの男性が呟いた。服装は至って普通な私服といったところだろうか。特に珍しいところは無い。
男性は床に倒れている女性に近づく。背中には血が染み付いていた。床にもそれはかかっており、ソファも乾いた血で塗り固めれていた。
「血が乾いているな……殺害されたのは、推定3時間ほど前か」
「っぽいですね」
もう1人の爽やかな顔立ちをした青年が頷いた。顔はその隣の男性より若く見え、まるで俳優のようだ。スタイルも顔に似合っているすらりとした感じだ。町中を歩いていたら女性に2度見されると言ってもいいくらいな完璧さである。
「息子さん、貴方はいつこの現場を見ましたか?」
「1時頃だったと思います。お菓子を買いにコンビニ行って、帰ってきたらもう倒れていて……」
少年は涙をこらえて言った。
「じゃあその間に事件は起こったと……」
「はい……」
「んー……分かりませんねえ……」
青年は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「…………」
そして俺の隣でその現場を、テレビ越しに見ている弓梨は険しい顔でテレビとにらめっこをしていた。
「…………」
俺は黙ってその姿を見つめていた。どうやら弓梨は犯人が誰だか考えているようだ。すごい真剣に見てる。俺がこうやってガン見しても気づかないくらいに。
「ふぬぬ……誰だ、こんな悪いことした人は……早く捕まればいいのに」
いや、これドラマだから。別にこの中の人誰1人殺人してないし、床に倒れてるお母さんも実は生きてるぞ。……あ、ほら今ピクッって動いた。
真面目に見ている弓梨と違って、演技のミスや細かい部分などを見たりしていると、弓梨が俺の肩をポンポンと叩いた。
「ねえねえ、犯人誰だと思う?」
「んー…………このお母さんの息子じゃねえか?」
「えっ、なんで?」
弓梨が小首をかしげて不思議そうな顔をする。まあ、妥当な反応だろう。こういったドラマは見ている人を騙し、最後に驚愕のラストを迎えるように作っているのだから。
「だって、息子がコンビニ行って帰ってくるまでの時間って相当短いだろ? その間に犯行して逃げるってキツくないか? それに、玄関の鍵は普通閉まってるはずだから、無理やりこじ開けたりでもしたらお母さんは気づくだろ。なのに背中から刺されてるって事は侵入されたことに気づいていない。つまり、同じ家にいる息子が1番可能性大ってわけだ」
つらつらと長いくだりを述べる。こうやって人に話すとなかなかの満足感を感じるな。と言っても、この論理はぐちゃぐちゃだ。家の鍵が閉まってるなんて情報は無いし、息子が何分間家を空けて居たのかも分からない。だから俺の予想は、完全に想像をして出来たものなのだ。
その長い話を聴いて、わずかに苦笑いを浮かべる弓梨。
「……月夜ってこういう事件物だと毎回凄い考えするよね」
「そうか? 至って普通の考えだと思うんだが……」
「ちゃんと見てないのにそこまで分析できるのは凄いでしょ」
弓梨が可愛らしくはにかむ。
「ま、長編作品1本も書いてりゃ想像力も強くなるわな……」
「ちょーへんさくひん?」
まるで意味の分からない単語のように呟く弓梨に、俺は言った。
「ほら、1巻で終わる短編と何巻も続く長編があるじゃん。俺は長編の方だからーー」
と言いかけたところで、俺は今頃マズイことを言いかけていると気づいた。
「?」
「あっ、いや、そのーー」
「長編?」
「あー! そう! 頂点って言おうとしたんだ俺! ほら、数学の図形の時とかに出るじゃん、頂点Aとか! それを言おうとしたんだよ!」
「…………」
何コイツ頭おかしいんじゃねえかと言うくらいに怪訝な顔で俺を見る弓梨。
全く隠せてねえ! 視線が痛いよ! 今すぐ逃げ出して全裸になりたい!
「そっか」
弓梨はそれだけ言って優しく笑った。
「お、おう……」
今の笑顔、めちゃくちゃ怖かったんだけど……いつもの弓梨じゃなかった……
その恐怖じみた笑顔に、俺の足は自然とガタガタ震えていた。
お盆だぜぇえええええええ!ゲームする!ラノベ読む!アニメ見りゅ!
あ、ちゃんと執筆もしますよ(多分)




