28話 売れっ子の同僚
いつもより気持ち多く書いたぞ。褒めろおおおお!(何様)
「確かにお前も凄いけど、最近は玲紋も凄いぞ。執筆速度も早いし誤字脱字も少なく、その上文章が高校生とは思えん。お前とは真反対だな」
「失礼な。俺は作品に合わせて文章も簡単にして、台詞を増やしてるんです。そうした方が読みやすいと思いますし」
俺の『ヒロイン攻略』は、ラノベ中級者くらいなら、題名でも理解出来るだろう、超明るいドタバタラブコメディだ。比較的ラブコメは明るい話が多い。ヒロインと主人公がデートするだとか、夏休みにプールや祭りに行ったりだとか、そういうのだ。
こういう話には、簡単な上に難しい漢字が無い文章に台詞をたくさん使うと、テンポ良く読みやすくなるのだ。だから言ってしまえば、俺はわざと文章を簡単にしている。
もし今書いている小説が超ダークなバトルファンタジーだとしたら、それに合わせて文章も漢字を増やし、重い雰囲気が出るように書くだろう。このように使い分けるのが大事なのだ。
「まあ、アイツが書いてるのは切ない物語だからな。私アレ読んで社内でガチ泣きしたぞ。同僚にも読んでるやつ多かったし」
「……そうですか。そりゃよかったですね」
そう、玲紋が書いているライトノベル『あの時の君に会うまで、僕は今日も同じ日を過ごす』は、俺とは打って変わった内容なのである。題名は割と今どきな感じだが、これが最近のライトノベルとは全く違うのだ。
自殺をしようとしていた主人公がヒロインに助けられ、次の日にお礼をしようとするのだが、なんと日付が進んでいないのだ。そして昨日の出来事をヒロインは覚えていなく、いつまで経っても次の日に行けない。そこで主人公がなんとかして、次の日に行けるように努力をするという話だ。
「本当に切なくていいよな。担当の私でさえ感動できる」
この物語のポイントは、主人公だけは同じ日を何回も過ごしているけど、他の人はいつも通りの1日だというところだ。主人公は何日もヒロインと過ごしている気になっているのに、ヒロインはまだ話したことが無いから、そこですれ違いが起きる。この主人公の気持ちが伝わらないところが非常に切ない。俺も読んで泣いてたっけ。正直素晴らしすぎる作品だと思う。作者が俺と同じ高校生であんな奴だとは思っていなかった。
「確かに駆け引きは上手いと思います。まあ俺の作品の方が面白い自信ありますけど」
得意げに言うと、星野さんは馬鹿にするように笑った。
「何言ってんだよ。お前3巻の初動売り上げ玲紋に負けてただろうが」
「クッ……アイツ……絶対許さん」
そうだった。俺は初めてアイツに初動売り上げで負けたんだった……。今までずっとアイツの上を行っていたのに……。
「しかも同じ文庫で発売日も同じだから、言い訳出来ないなぁ。可哀想に」
「べ、別に俺は言い訳なんてしませんよ! 負けは認めます! ただ次は絶対負けねえ!」
いつも先輩って呼ばれてる奴に売り上げで負けてたまるか! 次だ。次は絶対に……。
「ねえ、その玲紋って人、何書いてるの?」
歯をギリギリ食いしばっていると、柊が尋ねた。
「お前も読んでると思うぞ。『あの時の君に会うまで、僕は今日も同じ日を過ごす』って題名だ」
嫌味っぽく言い放つと、柊は案の定驚嘆した。
「え!? あの『僕今日』!? 私何回も読んだわよ! 凄い泣けた!」
やっぱりな……。ってか、顔近い。興奮し過ぎだ。
「まあ、俺らと同じ歳であれだけ出来たらなかなかだよな」
「本当よね」
「え?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「なんでお前あいつが俺らと同じ歳って知ってんの?」
「前SNSで普通に言ってたわよ。『高校1年生で早くも売れっ子作家やってごめんよwもしかしたら社畜のお前らより稼げるかもwww』って。」
「アイツ……」
思わず額をピシャリと叩いた。個人情報を出すのは良くないって何回も星野さんに言われてたろ……。
「それは本当か?」
星野さんが急に入ってくる。
「は、はい」
「よし、今度アイツしばき倒す」
まあ、こうなるよな……。玲紋、頑張れ。多分雷が落ちると思うけど。
あ、そういえばランキング56位だった。
おパンツ!おパンツ!おパンツ!




