25話 美術は2
いつもより早く更新しましたー。
「分かってます。私、ずっと夢だったんです。自分の絵が表紙になるってことが。そのために今まで絵の練習をし続けたんです。ちゃんと覚悟もできてます。だから私にやらせて下さい」
「…………」
思わず息を飲んだ。てっきり柊は普通のファンで、俺の絵を担当すると言ったらただやりたいって理由だけで頷くと思っていた。でも俺の考えは全く違った。柊に申し訳ないくらいに。彼女はそんな中途半端な思いじゃなかったのだ。それは真実だろう言葉と表情だけで分かってしまうほどだった。
「よし! そんだけ覚悟とやる気がありゃ充分だ! お前をコイツの作品のイラスト担当にしてやろう!」
星野さんが親指を立てて言うと、柊の顔はだんだんと緩くなり、笑顔になっていった。
「やったあああああぁ!」
周りの視線を無視して柊が腕を上げ、静寂を壊すかのように叫ぶ。その瞬間、他の客が柊に視線を向けた。静かな中でいきなり大声を出されて驚いているのだろう。
「おい、恥ずかしいからやめろよ……」
「だって……私、ついにーーラノベのイラスト描けるようになったんだもん! ずっと目指してた目標がやっと達成できた!」
「よかったな」
子供のようにはしゃぐ柊を見ていたら、自然と笑みがこぼれた。きっと相当頑張ったんだろう。
俺が新人賞の大賞受賞した時もこのくらいはしゃいでたと思う。もう嬉しくってその日は寝れないって感じ。ワクワクが止まらなかった。コイツも今同じ心境なのだろう。
「やった……。やっと私の夢が……」
……純粋な顔をしてる時は可愛いな。ま、まあ美月の方が全然可愛いけどね!
「ってことで急だが、4巻のイラストを5月下旬までにやってもらう」
「……え?」
柊が愕然とした顔で固まる。なんでそんなに驚いて顔を青くしているのかが、俺にはさっぱり分からなかった。
「どうかしたのか?」
「……じゃないわよ」
「え?」
「どうかしたじゃないわよ!」
「お、おう。なんかすまん」
なんかすげえ焦ってるし怒ってるぞ……。激おこぷんぷん丸だ……。
「1からイラストやるってことだから、まずラフ描いて下書きして、それからペン入れして下塗りして……って絶対無理! だって今日4月10日だから、5月下旬って後一ヶ月と少ししか無いし! ああもうどうしよ……」
「裸婦? 便入れ?」
なんだろう。聞いても全くしっくりと来ない。絵を描く時の専門用語か何かかな。中学生の頃美術5評価中2だった俺には何一つ分からん。
「ラフにペン入れよ! 馬鹿なの?」
「す、すいません」
なんか思わず敬語になっちゃった! 柊さん怖すぎィ!
「まあその反応をされるのは想定内だ。正直自分でもこの頼みはどうかと思ってる。でももう時間が無いんだ。4巻の発売日が6月1日で5月下旬までに絵を出してくれないと彼の作品が完成しないんだ。頼む。大変だろうが頑張ってやってくれると助かる」
「……はぁい」
さっきの喜びから一瞬にしてどん底に落とされる柊。しおらしくなる顔を見ると少し可愛そうだなと思ってしまった。




