16話 一か八か
更新遅くなってすみません。ちょっといろいろあって執筆できませんでした。
「さて……トイレはどこだ」
扉を携帯を持っていない右手で閉め、ついでにティッシュをポケットに入れた。
「入学したばっかだから全然場所とか分かんねえ……」
その場で左、右と首を動かす。人は誰1人居ない。数時間前までは、俺の耳を飛び交う声が嫌と言うほど聞こえてきたのに、今はまるで時が止まったかのように静寂を保っている。そんな光景は、少し心地よくすら感じた。
「まぁ歩いてればいつか着くよな」
とりあえず左へ曲がる。
その理由は特に無い。強いて言うなら、自分が左利きだからなんとなくだ。
正面にあるのは学校によくありそうなお馴染みの水道である。その横には小さな扉が設置してあった。
「うっし。トイレはっけーん」
と、独り言を言っても誰も反応しなく、冷たい空気が返事をするように肌を伝うだけ。歩くとコツ、コツと、自分の足音が長い廊下に響く。
「そりゃ2時間も経てば皆居ないよなぁ……」
他の連中は今頃、クラスの奴らとファミレス行ったり、ゲーセン行ったり、遊んだりしてんだろうな……ッハ! そういえば弓梨! あいつは何してるんだろう。もしかしてあのチャラ男達と遊んでたり……
「絶対してるだろうな。うん」
別にそれがどうとかは思わないけど、やっぱり勝ち組は進みが早いよな。それに対して俺ときたら……
☆今日話した人間
1 美月
2 弓梨
3 柊
4 クズ (眞城也)
家族を含めて4人……しかも初めて話した相手は柊だけ。しかも会って早々キレられて泣かれてもう散々なことばっかりだ……
俺の高校デビュー初日、大失敗である。まぁ柊はちょっと可愛かったからマシな方か。性格が予想外だったけども……
トイレの中に入ると個室が3つほどある。俺は1番奥の個室を選び、カギを占め、便座にどっかりと腰を下ろす。
携帯の電源を入れ、電話のマークのアプリをタップ。
出てきた連絡先の欄に載っている名前はたったの5つ。今日話した人間にプラスアルファで母親が入っているだけだ。見てても悲しくなるだけなので、さっさと星野さんにコールをした。
「出てくれよ星野さん……」
実言うと、星野さんが今何をしているかなんて全く知らない。もしかしたら休憩時間かもしれないが、仕事中の可能性もある。
もし、今が会議中で電話が鳴ったりしたら、星野さんは恥をかくだろう。そしてその電話をした正体が俺だと知ったら、必ず殺しに来る。締切までの日にちを縮められるかもしれない。
つまり、俺は今一か八かで星野さんに電話をしている。
「はぁ、会議中とかだったらどうしよ。土下座するか……」
プルルルル、と携帯の音が2、3回鳴った。この間は非常に辛く、数秒が長く感じた。
「おう、月夜か。どうした」
「星野さん! 今会議中とかじゃなかったですか?」
慌てて聞くと、星野さんは落ち着いて答えた。
「今君の作品を読んでいたところだ。別に会議中とかじゃないぞ」
「良かったぁぁぁぁぁぁ……」
心底安心し、全身の力が一気に抜けた。




