集落
「なあ、妖魔が暴れてて大変だって聞いて来たんだが……」
集落に入り、クレスは手近な人に話しかける。
なお、リアラは事前に説得してフードで顔を隠させている。
「詳しい話が聞ける奴を紹介してもらえないか」
「ふむ……腕は立つようですね。ウチの村のトップなら、あの家に。今の時間なら、手前の畑にでもいるでしょう」
そういって示されたのは、この村で二番目に大きい建物だった。
「分かった。礼を言う」
教えられた家の方へ向かうと、壮年の男性が畑で野菜の世話をしていた。
「なあ、ちょっと良いか?」
「……なんだ?」
クレスの呼びかけに男が反応する。
「幾らか話を聞きたいんだが」
「分かった。……その家に上がって、少し待っててくれ」
「まあ単刀直入に行かせてもらおう。妖魔が暴れていると聞いたから討伐に来た、獲物の所在を聞きたい」
「そういうことなら願ってもない話だ。が、出せるような報酬は何も無いぞ」
「問題ない。元々知り合いの頼みで来てるわけだからな」
クレスの答えに、男は何かを堪えるように口許を引き結ぶと深く頭を下げた。
「……恩に着る。方角は東、首都に近づくほど瘴気も濃くなり妖魔も強くなるんだが……そういった強力な妖魔がこの辺りにも現れだして対処しきれなくなっていたんだ」
「そうか。だが……」
そこで何かを言おうとして、しかしクレスは言い淀む。代わってナベリウスが身を乗り出した。
「にしてもどーしてあんた方はこんなとこに残ってるんれすか? 妖魔のこともありまふが、状況は詰んでるれしょう?」
誰もが気にしていた疑問に、男はしばし瞑目してから口を開いた。
「……理由は、人それぞれだな。共通しているのは、誰もが国を信じていることか。いや……知っていると言った方が良いな」
男は語った。
最期まで国民のために戦った皇族と騎士たちの姿を、国を蹂躙した妖魔たちを。
「他所へ行く当ても力も無い者、ルナリアへの最後の忠義や贖罪を理由に自ら残った者。そして、そんな人間と共に残ることを選んだ者。他にも色々いるが、全員がこの地に骨を埋める覚悟を固めている」
「……そうか。じゃあ俺たちは行くとするよ」
「ああ。無事を祈っている」




