轟雷無双
その後クレスたちは特に大きなトラブルに巻き込まれることもなくメガイラを抜けた。
国境を越えてしばらく進むと、瘴気――墨色のガスにつけられた通称――が靄のように周囲に漂い始めた。
「『索敵』……やっぱ魔法は使いにくいな」
そう言いながらも、クレスは一方を指さす。
「数キロ先に、まとまった人の反応があった。尤も、手前には妖魔の群れの反応もあったが」
「……分かりました。詳細な情報をお願いできますか?」
「並の狼サイズの個体が二十体前後。向こうもこっちに移動してきてるから、十分くらいでかち合うと思う」
「ありがとうございます」
そしてクレスの言葉通り十分後、妖魔の群れが姿を見せた。
「うえ~」
体表に短い触手のようなものが蠢いている蜘蛛の群れを見て、ナベリウスが嫌そうな声を上げた。
「これは……まともに相手したくねぇな。焼き尽くせッ『爆炎波』!」
クレスが強引に発動した魔法で蜘蛛の群れを焼き払う。
瘴気に阻まれてなお、その火力は妖魔たちを全滅させるのに十分な威力を発揮した。
「ふぅ。……ん?」
戦闘後に索敵を発動させたクレスに、新たな反応が引っかかった。
「どうも向こうの方で人と妖魔が戦ってるっぽいな。集落からは少し離れるが、行くか?」
「はい、急ぎましょう!」
一も二も無く頷いたリアラに従い、クレスたちは進路を変えた。
「「「ぬおらあああああああああああああッ!!」」」
「「「プギィャアアアアァァァ!?」」」
「「「…………」」」
反応の元へ向かったクレスたち。
その目に映ったのは、雄叫びと共に豚人型の妖魔を蹴散らす男たちだった。
「や、ん、す~!」
「ぐおらぁああッ!」
地味に敏捷な動きで敵の喉笛を切り裂く小男と、一撃ごとに雷でも落ちたような轟音を響かせ妖魔をまとめて吹き飛ばすツンツン髪の男には、どうも見覚えがあった。
「……あいつら何やってんだろ」
「……さあ?」
「あの方々って強かったんですね……」
何故か黄昏る三人に首を傾げるクレイン。
「ん、知り合いなのかい?」
「腐れ縁なだけのチンピラれす」
「へぇ……ところでアレもその一派なのか?」
クレインが示した先には、ブローチを胸元に掻き抱いて戸惑ったように立ち尽くす少女の姿があった。
「うーん……視た感じ、大丈夫みたいですよ?」
男たちが少女を守るように戦っているのは遠目にも判断できたし、感情を視る分にも不味い下心の類を持っている様子はない。
「じゃあ俺たちは集落の方に向かうか?」
「そうですね」
戦局も男たちが余裕をもって妖魔を殲滅しているのを察したクレスの提案にリアラが頷く。
一度だけ周囲の様子を探った後、クレスたちはその場を離れた。
サブタイトルは今のギムの称号ですね。
集落の人たちにそう呼ばれています。
彼らにも一応物語があるのですが、それ単体で出す機会は当分なさそうです。。




