救出
「――おい、ティルナ! ナベリウス!」
「なに?」
「どうしまひた~?」
蛇尾を掻い潜り、巨腕を斬り飛ばしながら駆けてきたクレスはティルナたちと合流する。
「アイツを縦に斬り開きたい。手伝ってくれるか?」
「任せて! ……、考えがある」
勢い込んで答えたティルナはハッとしたように俯きながらも、そう断言した。
ちなみにこの時、片手間に氷棺を解いてジェスをナベリウスに押し付けている。
「――ナベ。魔法を編んでいる間、邪魔をさせないで」
「はいはい、了解れすよ~」
いくらクレスに頼られたのが嬉しかったからと言って、単なる見栄で答えたわけではない。
動きが止まったことで激化した攻撃をナベリウスが防ぐ中、ティルナは急激にその魔力を高めていく。
「! ――させねぇよッ」
迫る蛇尾の薙ぎ払いに、クレスは腰の二刀を投擲。
刀にストックしていた全魔力を解放することで、剣霊に山の如き質量を受け止めさせる。
「――来たれ、生命を刈り取る冬の牙」
思い描くのはラヴルでの戦い、伝説と呼ぶに遜色無い一幕。
「陽を喰らい、鼓動を縛り、世界を閉ざす者よ」
模倣するのは焔獣の軍勢を薙ぎ払った霊魂の大撃。
「我が命に応じ、今こそ災禍を縛る鎖と為れ! 『凍滅竜群』ッ!!」
墨色のガスを物ともせず、逆に喰らう勢いで虚空から現れたのは――その一つ一つが大蛇の巨腕を上回るサイズの、無数の氷竜だった。
巨腕に殴られようとビクともしない氷竜は大蛇の身体に取り付き、一直線に伸びた無防備な姿をクレスに差し出した。
「――ッ、クレス!」
「お、おう!」
大蛇の抵抗は凄まじく、拘束は数秒と持たない。
ティルナの合図に、半ば呆然としていたクレスも我に返る。
焔翼を羽ばたかせ飛び上がったクレスは、焔鎌から鎖を消し更に巨大化させる。
空中に生み出した仮の足場の上で、限界まで焔鎌を振りかぶる。
「取り返す。今度こそ……! 『天崩雷禍』ッッ!」
全身の力を振り絞った一撃は、大蛇の頭頂から尾の先端に至るまで一文字に深く斬り開いた。
「お~っと、まったく……」
ナベリウスの帯が飛来してクレスを捕え、噴き出す墨色のガスから逃がす。
「悪い、助かった」
「……何をする気れすか?」
疲労困憊にも関わらず魔力を巡らせるクレスに、ナベリウスは油断なく身構える。
「門は開いた。迎えに――」
「ふぅ! 助かったぁー!」
声と共に、大蛇の傷口から炎球が飛び出してきた。
結界を解いて現れたのは、変わりない様子のマリスとリアラだった。
この機に小情報を三つほど。
一.作者的には「竜→東洋ドラゴン」「龍→西洋ドラゴン」「ドラゴン→全般」として書き分けています。。
二.クレスの「天崩雷禍」……アレの射程延長に見える部分は余波みたいなものです。。
三.ティルナの「凍滅竜群」……氷版バオウザ○ルガのイメージが分かりやすいかもしれません。。




