花樹蛇
(――とりあえず、クレスが無茶をするより早く!)
マリスは即座に判断を下した。
「リアラとジェスはクレスを捕まえて下がって!」
「な――、そんな事言ってる場合か!」
指示された二人がクレスに近づくが、流石に捕まりはしない。
「『氷陣』」
「おい――!」
「ティルナ、ナイス!」
氷の檻がリアラとジェスごとクレスを閉じ込める。
「さて――」
改めてマリスは眼前の敵を見据える。
夜目が効くマリスには、巨大な花の中心から大蛇が生えている奇怪な姿がはっきりと見えた。辺りの地面から突き出している大量の根も、先端は蛇のようになっている。
この異形がまともに移動するとは考えにくい。
(また地面から湧いたのか……?)
何故か一部が脳内にあるクレスの記憶がその仮説を導く。
「二人とも、明かりはいらないんだよね?」
「……うん」
「れす~」
自然とナベリウスが前に出て、その後ろにティルナ、マリスと続く隊列が出来上がる。
「まずは一発。『星牙』」
気負うことなく放たれた一矢は、目にも止まらぬ速さで花から生えた大蛇の根本に突き立った。
直後、爆発。
「「「ギシャアァァアア!!??」」」
響く悲鳴。
砂塵で大蛇の様子は見えないが、根蛇たちが狂ったようにのたうち回り、闇雲に牙を剥く。
ナベリウスは剣で、ティルナは魔法で、マリスは弓矢で、それぞれ根蛇を打ち払う。
煙が晴れた時、大蛇の身体は根本から半ば千切れかかっていた。
すかさず打ち込まれたティルナの氷槍が、その胴体を完全に断ち切った。
「――――――ッッッ!!」
声にならない断末魔の後、花が急激に萎びて枯れる。
「……様子が、おかしい?」
地に伏し痙攣する根蛇。その付け根部分の地面が盛り上がり、毒々しい色合いの花が一斉に開いた。
蛇の胴体は太くなり、最初の花蛇と同等かそれ以上に巨大化する。
「これは……」
まずいかもしれない。
出そうになった言葉を寸前で飲み下す。
クレスたちはあの森でもっと絶望的な状況の中でも戦い抜き、生き残った。
ならばSSSの自分が――「蒼月」が、この程度で弱音を吐くわけにはいかない。
花樹蛇、第二形態に移行しましたー。
もちろん異常事態です。。




