情報屋の暗躍
「……まったく。クレス、索敵とか無理しなくて良いから」
「うっ」
魔法を使った途端、即座に指摘されて言葉に詰まるクレス。
「だ、だけどだな。一応こんな林の中だし、戦力も減ってるわけだから」
「問答無用☆」
「ちょ、待――うわなにをするやめ――」
割と容赦なく振り下ろされた手刀をどうにか避けたクレスだが、氷鳥から伸びた鎖に拘束されて結局二回目の手刀に沈んだ。
「まあ、いつかの意趣返しだねー。ティルナ、ナイスアシスト!」
「……クレスに無理させるのは嫌だから」
「たまには強引にでも休ませないとね」
言いながら、振り向きもせず後方に矢を放つマリス。
格式に厳しい者が見れば卒倒しそうな光景だが、放たれた矢は牽制に十分な精度で飛んでいった。
「くッ……」
木立に隠れたベルシは憤怒に歪んだ表情で歯軋りをしていた。
当の駒が復讐の意思を失ったのも不愉快だが、あれほどの実力者を仕留めるのも、その強大な取り巻きを復讐の道に堕とすのも諦めがたい。
数々の否定的要素を加味してなお極上の獲物を仕留められない現状がとても許容できない。
何より厄介なのはあの射手だ。前衛に手こずる内に間違いなく仕留められるだけの力量差があり、先刻のように不意打ちなどする前から潰される。
勝てない。だが、狩りたい。
答えのない葛藤がいたずらに苛立ちを募らせていく。
「――お困りのようですね」
「ッ……何の用だ、情報屋!」
不意に現れた人影――情報屋に矛先は向いた。
ギムと同レベルの小柄な身体をボロボロのローブに包んでいる情報屋。
簡素な作りの仮面の奥で、その眼が悪意に光った。
「いえ、折角ですから少々お膳立て――耳よりな情報を提供して差し上げようかと。サービスなのでお代は結構です」
それを聞いたベルシは瞳を細め狡猾な表情を浮かべる。
「なら聞いてやろう。なんだ、その情報とは?」
「――――」
囁かれた情報に、ベルシは目を見開く。
「……ッ、なぜ貴様がそんなことを知っている!?」
「はてさて。ま、この情報をどう利用するかは貴方しだいですよ」
動揺するベルシを嘲るように告げると、情報屋は地面に溶け込むように姿を消した。




