予期せぬ再会
「……それで、君の仇には逃げられてしまったんだね?」
「はい……」
ある路地裏で、二つの人影が話をしていた。一方はジェス。もう一方は姿が影に紛れており、細身の長身しか判別できない。
「ぼくの力では、奴に手も足も出ませんでした。ですが、奴は仕事が終われば処遇をぼくに預けるようなことも言っていましたから、それまで後を追えば――」
「――甘いね」
「え……?」
ジェスを遮り、声の主はジェスの目をのぞき込む。
そして、さも誠実そうな声で続けた。
「そうやって油断させて相手を欺き絶望の淵に叩き落とす……そんな輩を、私は今までたくさん見てきた。君には同じ道を行ってほしくない」
「はい……」
その言葉を聞くうちに、ジェスの様子が変わっていく。
クレスに軽くあしらわれてから燻っていた敵意が再び勢いを取り戻し、目に暗い光を宿しだす。
「仇の言葉に耳を貸す必要なんてないんだ。騙されてはいけない。君の復讐を、やり遂げるんだ」
「分かり……ました」
どこか虚ろな表情で駆け出したジェス。それを見送り、残った人影の口許が三日月のように吊り上がった。
「それにしても、想像以上に美味い店だったな」
「だねー。紹介しといてなんだけど、ボクもびっくりだよ」
「王族でもあんな料理は滅多に食べられませんよ……」
昼食を終えて街を後にしたクレスらは、そんなことを話しながら林の中を歩いていた。
道が通っているとはいえ、林の中では不意打ちも受けやすい。実力や適性によっては迂回する者もいないでは無いが……クレスらには関係のない話だった。
「ん?」
「むむ?」
「あー……」
迫って来たあからさまな殺気にマリスとナベリウスが気づき、心当たりのあるクレスは額を抑える。
「悪いが今追って来てるのは俺の関係者だ。非はこっちにあるから見逃してくれ」
「はー、クレっさんも大変れすねぇ」
ナベリウスが呆れたように言った直後、木立の隙間からジェスが飛び出してきた。
「追いついたぞ、覚悟しろ!」
「だから今は駄目だって言ったろ……」
勢いのままに振り下ろされた剣を体捌き一つで躱し、クレスは疲れた声で応えた。
「ッ、ジェス!?」
「あれ、この子は……」
「ジェス君!?」
「……!」
マリス達がその姿を確認し、各々驚きを露わにする。
「あなたたちは……!?」
それに気づいたジェスもまた硬直した。




