復讐者
「……ふぅ」
マリス達と別れたクレスは、街にある図書館で秘宝の資料を調べていた。
フォルトナで調べたのとはまた少し違う情報を、稀にメモも取りつつ記憶していく。
ただ、その頭は同時に別のことも考えていた。
今朝、食事に毒を仕込んだ相手のことだ。
相手が本当に成仏寸前の「怨霊」ならまだ良い。が、そうでない場合はまた謎の相手に狙われていることになる。
マリスが言っていた不審人物も気になる。
(あの少年からもっと聞き出しておけば――)
ふと思い浮かんだIFを、首を振って払いのける。
確かに、宿を襲ってきた幹部と思しきあの少年から更に情報を得ることは可能だっただろう。
だがそれではティルナたちに「私」の――「正義」と皮肉られた愚かな死神の存在を明かすことになる。
あの外道の精神が今も自分の中に残っていることは、知られたくなかった。
だから、今取っているのは次善の策だ。尤も、効果の程は期待できるようなものではないが。
隙だらけを装って自分が一人になれば、敵の方から接触してくるかもしれない。その程度のものだ。
やがてクレスが調べ物を終えて外に出ると、ちょうど水晶が振動した。
「ん、マリスか?」
『そだよー。良い感じの店を見つけたから、場所を言っとくね。入ってきた門から交差点を二つ進んだ先の……』
「分かった。こっちも用は済んだからな、すぐ行く」
「ん?」
「くッ……!」
路地裏を進んでいたクレスは、背後から斬りつけてきた刃を振り向きもせず後ろ手で弾く。
「ふざけるな! 待てッ!」
何事も無かったかのように進んでいくクレスを、怒りに満ちた声が呼び止める。
振り返って確認すると、それは敵意を漲らせた青髪の小柄な少年だった。
この時点のクレスは知る由もないが、ジェス・シグラートである。
「……いったい何の用だ?」
「――父の仇だ。刺し違えてもお前を討つ」




