路地裏の悪魔
朝食を終え、一行はひとまず宿の外に出た。
何かしらの連絡があったらしく、マリスが懐から水晶を取り出す。
「はい、もしもしー。ラフィ子? ……あ、その件ね」
「仕事か?」
「ちょっと待ってねー。……や、弟子が泣きついてきただけだよ。サイファーも面倒見てくれてるから心配ないね」
「長くなるなら、俺は少し別行動で調べ物をしてたいんだが……」
それを聞いたマリスは少し考える様子を見せる。
「う~ん……まあ、良いか。じゃあ一応、話が付いたらこっちから連絡するよ」
「分かった。あ、皆は一応マリスと一緒に居てくれるか? この面子が揃ってれば何かあっても安心だろうし」
皆が頷くのを確認すると、クレスは資料館へ向かっていった。
「……うん。じゃあ、頑張って~」
そう言うとマリスは一度連絡を切り、クレスに繋ぎ直す。
「こっちは終わったよー。これからどうする?」
『そうか。昼をこっちで食ったら出発するつもりだから、二時間後に適当な店の前で合流しよう。どの店にするか、暇ならそっちで決めてくれるとありがたい』
「分かった。また後でね」
連絡を切るマリス。
「そういうことだから、良さそうなお店を探しに行こうか」
「分かりました」
「(コクリ)」
「了解れす~」
「……ん?」
ある路地裏を通っていたマリスは、向こうから歩いてきた男とぶつかりそうになって身を躱した。
男がやや不自然な動きで、それでもこちらにぶつかってこようとするので再び避ける。
不審に思ってその顔を見ると、赤いツンツン髪の男に不機嫌そうな表情で睨み返された。
「あ゛? なにガンくれてんだよ、テメェ!」
「え?」
呆気にとられるマリスの前で、男の後ろから出てきた小男が怒鳴りだす。
「やいやい、この方をどなたと心得る! 路地裏の悪魔と悪名高い、ギム様でやんす!」
……。
やいやい、この方をどなたと心得る! 自由騎士は「凛騎士」にしてSSS「蒼月」と名高いマリス様だ!
そんな世迷言を思いついたティルナだが、すぐ脳内のゴミ箱に放り込む。
いや、それよりも。
『またお前?』
「なんだ巫山戯やがっ……て……」
氷文字を見たギムはティルナに視線を移すと、僅かに内股気味になって後ずさる。
が、すぐに弱気を振り払うよう声を張り上げた。
「ええい喧しい! 痛い目見たくなきゃ有り金あるだけ差し出しなァっ!」
「……遂にツケの誤魔化しが効かなくなって、逃げて来たんでやんす」
「テメェは黙ってろ!」
「ぎゃんす~!」
無造作に振り払われた腕の直撃を受け、子分の一人は路地の向こうまで飛んでいった。
膂力も含めて相変わらずなのが窺える。
「なに、知り合い?」
「冗談じゃない」
「じゃあ、いっか――」
何かをしようとしたマリスだが、ギムらとの間に割り込んできた影があった。
称号が変わったギムですが、その分強くなってるのは確かです。一応……




