毒耐性
クレスたちは現在、リアラと出会ったラコントルと目指すミクスブルグの間に位置する国家、ヘグペウの宿にいる。
ヘグペウは旧ラヴル領の宗主国だが、ミクスブルグとは対等な関係を築いている。
軍備・産業・資源のどこにも特筆すべき点のない国だが、レガリス大陸最南端に連合で最も古い歴史を持っている。
連合内で無数の王家、政権が代替わりする中、少なくとも千年に渡り一貫して現在の王家であるエノフェ一族がこの国を治めてきた。
宿の中にある食堂には、既にクレスたちの食事も用意されていた。
「あ、クレス。そのドーナツ……」
「ん?」
マリスが声をかけた時には、クレスは早速ドーナツを飲み込んだところだった。
「たぶん毒だよ」
「「ッ!?」」
何でもないことのように告げられた内容に、ティルナとリアラが愕然とする。
「ああ、そういやマリスがいるなら食わなくても分かるんだったな」
「魔法が絡んでればね。見た感じ、この辺は怪しいな」
「こっちもれすね~。毒の匂いが混じってるれす」
「……。いや、クレスさん平気なんですか!?」
「まあな」
平然と食事を分ける三人に更に硬直していたリアラが息を吹き返した。
クレスは毒入りだと判断された料理を当たり前のように口に運びながら答える。
「マリス、他の食事には仕込まれてなさそうって事で良いんだよな?」
「うん。あまり大袈裟に騒ぐ必要もないね」
「ああ、そうだな。というかコレ、俺が知ってる怨霊の毒より明らかに安物なんだが……。なんて言うか、薄い」
「そうですか…………」
もう突っ込むまい。
リアラは心の中で呟いた。




