焔の対価
「ッ、クレス!?」
鉤矢の移動で一気に距離を稼いだマリスの耳にそれは聞こえた。
顔を青ざめさせたマリスが更に速度を上げる。
やがて全員の耳にそれは届いた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!」
クレスの絶叫だった。
一撃の下にエルセンを葬ったクレスだったが、身に纏う焔が消えることはなかった。
制御も碌にできない状態で分を超える力を引き出した代償か、焔の制御がほとんど効かなくなる。
エルセンを滅ぼした一撃に勝るとも劣らない熱量がクレスの身体を蝕んでいた。
神経という神経が挽き切られ、肉という肉を磨り潰すような激痛がクレスを襲う。
のたうち回った所から焔獣が生まれ、悲鳴さえ焔に変わる。
さながらクレスと言う器に収まりきらない焔が溢れ出すかのようだった。
「ぐ、ぅあッ、アアアアアア―――――ッ!?」
霞むクレスの視界に、駆けつけてきたマリスたちの姿が映った。
驚愕が息を詰まらせ、悲鳴が一瞬途切れる。
「ッ、――!」
その姿が幻覚でないことに気づいたクレスは砕けんばかりに歯を食い縛り、全力で悲鳴を噛み殺す。
「クレス君!?」
「……ッ!」
「クレス!」
間近でクレスの惨状を目にし、マリスたちは言葉を失う。
火傷こそ負っていないがその身は焔に包まれ、焼け野原となった周囲からは次々と焔獣が生まれていた。
「何を……しているん、ですか。早く退避して、くださ……ッ」
「バカ! そんなこと、できるもんか!」
叫んだマリスは、瞳から散った涙を強引に拭う。
「眼光」の異能をもってもはっきりと見えないクレスの焔を睨み据える。
――見抜いた。
不意に焔が鮮明になり、マリスにその情報を正しく伝える。
「放った焔の残りが……攻撃性を保ったまま、残っている……?」
焔が持つ途方もない力を知覚し、確かめるように呟いた声が我知らず掠れる。
「でも、それなら……」
「同等の攻撃とぶつけて、相殺すれば良い」
「ああ。やるしかないな」
マリスの呟きにクレインが応え、エレンが頷いた。
力の出し惜しみ→使い過ぎ。 エルフの方々に知られたら説教地獄ですね。
ナズエル? 現実逃避気味に焔獣たちの相手をしています。おかげで女性陣が話に集中できるw




