パシリ
「お疲れ様です!」
「ん、サンキュ」
「(じっ……)」
クレスはリアラがベンチに座った自分を労った後、じっとこちらの方を見つめているのに気付いた。
「リアラ、聞きたい事でもあるのか?」
声を掛けると、リアラの表情がパッと明るくなる。
「闘ってる途中に言ってた魔剣とか魔法剣って、何なんですか?」
「魔剣は魔法を帯びてたりして特殊効果を持っているが、あくまでベースは剣だ。能力は個体差が大きいが……まあ、秘宝の一種だな。魔法剣ってのは、魔法を結晶化して剣の形にしたものだ。だから形は剣でなくても構わない。ただ、イメージを集中し続ける必要がある分ただの魔法よりかなり難しい。コイツらの利点は並の剣なら相手にならない位切れ味が鋭いことだな。特に魔法剣は――まあ属性にもよるが、魔剣か魔法剣でないと打ち合うこともできない」
「イメージを集中し続ける、というと?」
すぐに質問が続く。今の内容を即座に理解したのだとしたら大したものだ。
「例えば普通の魔法……気弾なら、飛んでいく空気の弾丸のイメージを解放すれば発動する。んで、一度発動すれば完全に発動者の手を離れる。ただ……」
「魔法剣は、ずっと剣のイメージを保ち続けないといけない、と?」
察しも良いらしい。リアラの確認に頷くクレス。
「そういうこと。普通の魔法と同じようにしたって、一瞬だけ剣が生まれて終わりだ。というか、むしろそっちの使い方の方が一般的だな。斬り合いの途中にも気が抜けないから注意が分散するのは結構痛ぇし、陰陽魔法の魔力攪乱にも弱いし、デメリットも多いがな……ん? どうした?」
「(……ぎゅっ)」
不意に背後からティルナが抱きついてきた。会話に入れないのが不満なのだが、クレスは気付かない。
「というか力が入りすぎてて、的確に脇腹に食い込む手が痛ぇんだけど。せめて手の位置だけでも変えてくれ」
自制して尚、エルフの力は細腕に似合わず強い。クレスが音を上げる程度には。
「……疲れた。精神的に」
「俺の話、聞いてた?」
「…………」
ティルナは無言のまま位置をずらすと、クレスにおぶさるような格好になった。
のどが渇いたので飲み物でも買いに行きたかったのだが、こんな状態ではとても歩き回れたものでない。もちろん依頼主を一人で買いに行かせるのは論外。こんな用件だとナベリウスはきっと信用できないと本能が警告している。
「………………あ」
しばらく考えた後、ふと思いついて腰の双剣を抜く。
「マサムネ、ムラマサ」
呼びかけに応じて二体の剣霊が現れる。
「マサムネはここで俺たちの護衛、ムラマサはこれで……」
ポケットの財布を手渡す。
「人数分、適当な飲み物を買って来てくれ」
微妙な表情になる剣霊たち。
「パシリ、か……」
踵を返したムラマサが切なげにこぼした一言に少し罪悪感を覚えながら、クレスは眼を閉じた。




