疑惑の役割分担
そしてしばらく進んだ後、一行は無事にプレールへ到着した。
「れ、どうします?」
「いつも通りかな」
ずっと後ろで鼻歌を歌っていたナベリウスが尋ねてくる。
酒に酔ったような口調は相変わらずだ。どうやらこれで素らしい。
広場にある掲示板へ向かうと、そこにはいくつもの依頼が貼り出されていた。
町が出す公式依頼の中から盗賊退治の依頼を見つけたクレスは、すぐ側の管理人小屋に声を掛けた。
「おいおっちゃん。締め切りが今日になってるグラの丘の盗賊退治の依頼を請けたい」
「身元の保証は?」
傭兵組合のライセンスを渡す。
「あいよ、確かに。……へぇ、AAか? この辺じゃ珍しいな」
「少し用事があって、な」
中で管理人が悪戯で掲示物が剥がされない為の警報装置を切ると、クレスは盗賊退治の張り紙を剥がした。管理人は小屋据え置きの水晶で役所に連絡を取る。
申請を済ませたクレスたちは管理人小屋のそばのベンチに陣取った。
「じゃあ俺とナベリウスが盗賊退治、リアラは待機でティルナがその護衛ってことで」
「ちょっと待ってくらはい。何故にわらしが盗賊退治組なんれすか?」
一瞬正直に答えるか否か迷ったクレスだが、当のナベリウスが明らかに理解している顔なのを見て、確認の意味で口を開いた。
「この面子の人間関係を整理すると、だ。俺とティルナが幼馴染で、リアラが依頼人。んで、お前だけは空から降ってきた自称旅人だ。端的に言って、信用が薄い。リアラ、ティルナとお前を留守番組に残して、万が一敵の手引きとか加勢とかされると面倒だからな。……それに、一人で行かせて返り討ち、とか寝覚め悪ぃし」
「れすよね~」
他人事のように頷くナベリウス。その表情からは何を考えているのか今一つ読み取れない。
「じゃあ、決闘なんてどうれすか?」
「えっ? いきなり何を言い出すかと思えば……なんだ?」
聞き間違いかと思った。とりあえず提案のメリット・デメリットを考えてみるクレス。
「『拳で語り合えば分かり合えるさ!』みたいな?」
「何だその思考回路は。そもそも、そんなの実力隠して闘れば仕舞だろ?」
「アンタほどの実力者にばれないように手抜きだなんて無理れす。多分ティルさんに片手で勝つ方が簡単れすよ」
「へぇ、まるでティルナが相手なら勝てるみたいな口振りだな?」
「試してみまふか?」
探り合うように軽口を交わす二人。
少しムッとしたようなティルナを視界の隅に捉えながら、クレスは結論を出した。
「……いや、いい。その決闘、受けよう。俺が勝ったら二人で盗賊退治な」
「逆にわらしが勝ったら、何してもらいませうかね~」
僅かにナベリウスの気配が変わるが、敢えて気付かないふりをして言葉を返す。
「お前、獲らぬ狸の皮算用って知ってる、か……っと」
台詞の途中のナベリウスの突撃を受け流しつつ投げる。
軽い意趣返しも込めて受身を取りにくいようにしてみたが、向こうは向こうであっさりと着地してみせた。
小手調べを終え、二人は互いに悪戯好きの笑みを浮かべる。
「んじゃ、少し場所を移しまへんか?」
「ったく、そっちから仕掛けてきといてよく言うぜ」
移動する二人を呆然と見ていたティルナとリアラは、急いでその後を追った。




