確認
「わわっ! 私、一体何をっ!?」
「……ん? ああ、ようやく起きたのか」
……その声で目が覚めた。同時に寝る前のことも思い出し、頭を抱えるティルナ。
「えと、その、私は一体?」
かなり錯乱した様子のリアラ。自分以上に慌てた声に、ティルナの思考が回復する。
(ほぅ、自分は寝ぼけてたから自覚がありません、と)
……イラッ。
不機嫌メーターが動き出す。
「刺客の襲撃のあと、山道を歩いてたら突然熱を出して倒れたんだ。やっぱ無理し過ぎたんだろ、しばらく安静にしていると良い」
「でも、そういう訳には……」
「どうしても急ぐんだったら、その……ティルナが背負ってくれるから」
「あれ、クレスさんじゃないんですか?」
「っ!?」
途端に顔を赤くしたクレスを、リアラが不思議そうに見ている。……危険域だった。
「……意識が戻ったなら、話すことがあるはず」
放置して先刻の二の舞を演じる前に話を進めてしまおうとティルナが口をはさむと、二人の表情が真剣なものになる。
自分から言い出したものの、ティルナは話すのが得意ではない。質問はクレスに任せることにする。彼なら自分よりよほど気の利いた質問ができるはずだ。
ティルナの目配せに頷くクレス。
「じゃあ、答えやすそうなところから聞く。さっきの山で、どうして刺客たちの待ち伏せに気付いたんだ?」
「私は生まれつき、人の感情を視ることができるんです。それで、さっきは前の方から漂ってくる悪意が視えました」
聞いたことの無い能力だった。ごく一部の人間が保持するという異能――科学でも魔学でも説明できない特殊能力のひとつなのだろう。
それなら深く考えることに意味は無い。今はそれ以上の懸案事項がある。
クレスは次の質問に移る。
「じゃあ、本題だ。さっきの刺客が言ってたことは、事実か?」
「――はい。全て事実です」
覚悟は決まっていたのか、予想より落ち着いた声で返事があった。
「次の質問だ。ルナリアについての噂は、」
「虚報です!」
些か礼を失した行為だとは思ったが、リアラは反射的に叫んでいた。
クレス自身その噂を鵜呑みにしていない――寧ろ疑っているのは視えたが、それでも我慢できなかった。
――噂とは、ルナリアの陰謀論。レガリア連合の覇権を欲したルナリアは妖魔の甘言に乗せられ、結果として国を滅ぼしたというものだ。
強力な妖魔を召喚する儀式の痕跡が見つかったことや事実として突然S級近い妖魔が溢れ返ったことに加え、ガルディアがその説を率先して唱えていることにより、世間でも広く信じられている。
「そうか。じゃあそういうことなんだろう」
ティルナも無言で頷く。
「えっ?」
あっさりとした反応に、思わず聞き返すリアラ。
「ん? 信じない方が良かったか?」
「い、いえ! 勿論そんなことはないですけど、その……簡単に信じてくれるとも思っていなかったので……」
「俺も似たような話は幾つか知っているからな。それに、俺はアンタ個人を信用してる。そのアンタが違うって言うんなら、噂が嘘だって判断するには十分だ。ただ、いつか話してくれる時が来るなら……その時は聞かせて欲しい。こんな尋問みたいな形じゃなく、な」
「クレスさん……」
リアラの無防備な視線に内心たじろいだクレスは少し急いで付け加える。
「それにリアラが何者にせよ、傭兵として依頼を受けた以上はやり遂げるまでさ」
「ふふっ。そうですか」
いつも通りに振舞うクレスだが、最後に付け加えた台詞で隠そうとした僅かな照れと焦りが視えてリアラは思わず笑みを零した。




