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プロローグ

3章開幕です。

この章は現在のマホロの視点で過去の配信や出来事を振り返る回想章となっています。

読み飛ばしても問題のないよう書いているつもりですが、読んでいただけたら幸いです。

 ◆


 ……以前紹介したVTuber『月見里マホロ』を覚えているだろうか?

 朝活をメインにしている珍しい国内VTuberで、まもなくデビュー1周年を迎えようとしている。

 

 彼女の魅力は……正直、言葉にするのは難しい。

 軽妙なトークも、神がかった歌声も、その真面目さも。

 全てが魅力的で……彼女が『男』だったことなど、誰も気にしないくらいに。

 というより初配信からやらかしているので、ファンの間では今更な話である。

 

 そんな彼女が少し前に案件配信を行った。

 その相手というのがなんと――『コーセイ堂』である。

 コスメに興味のない人でも聞いたことがあるだろう、あのコーセイ堂である。

 正直それを聞かされた時は『え? なんで?』と筆者も混乱したものである。

 

 そうして始まった案件配信だったが……うん。

 なんと言っていいかわからないが、失敗ではなかったろう。

 月見里マホロ本人は商品の具体的説明を一切受けていなかったため、何も説明することができなかった。

 それだけを聞けば『失敗じゃん』と思うだろうが……ことはそう単純ではなかった。


 その案件配信にはコーセイ堂の社長『堂田恒星』氏が参加していたのだ。

 ……参加していたと言うと配信に出ていたように聞こえるが、実際にはコメントによる参加である。

 案件配信が上手くできないマホロに激励の電話をかけたりもしていたようだが……。

 ともあれ案件は成功と言えるだろう。


 結果として、その案件でマホロ本人が使っていたとされる男性用ケア用品『ビューティーメンズ』は飛ぶように売れた。

 筆者もひとつ手に入れて使ってみたが……普段からコスメを利用している身としては、ごく普通の商品であった。

 それもそのはず、この商品は『化粧に興味が一切ない男性』をメインターゲットにしていたとのこと。

 案件配信までの2週間だけ使用したマホロの感想がリスナーの心に響き、普段ケアなどしない人たちがこぞって購入したのだとか。


 それから今現在まで、マホロがその商品を使わなくなったという話は聞かないので、継続しているのだろう――。


 ◇


 前に見た記事、新しいの出てたから見てみたけど……なんかやたら持ち上げてくる気がする……もしかして著者の人、月民だったりする?

 ……それ以外はほぼ案件の話だな。

 あの時は大変だったなぁ……説明されてない商品の名前を言えって言われて。

 知らんもんは知らんとしか言いようがないんだよなぁ……。

 

 記事にもあるように、『ビューティーメンズ』はあのあとものすごく売れた、らしい。

 堂田社長が興奮気味に語っていると、散華社長から聞いているけど、実感はない。

 特にそれが『マホロのおかげ』と言われると……余計に。

 

 コーセイ堂さんとはその後も良好な関係を築けているそうだ。

 この前はしえるやゆら先輩も案件を貰っていたし。

 ……タマは、うん……諦めろ? 流石に中2相手に化粧品の案件は来ないって。

 男に来たんだから来てもいい? それはそう。


 そういえば、あれからもずっとビューティーメンズは使い続けている。

 ケアをしていなかった頃が嘘のように、肌に潤いを感じる……と思う。

 今でもよくわかんないんだよなぁ……綺麗になったのは感じるけど。

 配信後に会ったしえるやゆら先輩、タマまでもが俺の肌を見て驚いていたので、変わったんだろう。

 今度双子やうららさんとも会う予定があるので、反応が楽しみなところはあるかもしれない。


「……(マホロ)がデビューしてから、もうすぐ1年か……」


 なんだかあっという間だったような、色々ありすぎたような……。

 ……俺は、この1年で起きた様々なことを、思い出していたのだった——。

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