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◇
あのあとすぐに、タマの配信は終了。
そして今は……。
「ったく、とんでもない爆弾を残してくれたな?」
「めっちゃくちゃバズったにゃー」
――タマと通話していた。
「配信終わってすぐにディスコードが届いてビックリしたぞ?」
「やー……色々と使わせてもらったし、ね?」
「できれば使う前に言ってほしかったんだけどな?」
「それは無理な相談だねー?」
……こいつ、絶対反省してないな?
「今回だけだから……許して欲しいにゃー?」
「……別にいいよ、俺で役に立つなら、いくらでも使え」
「え?」
「俺は配信素人だし、何がウケるのかとかよくわかんないし……その点、お前ならしっかりわかってるだろ?」
「それは……まぁ、そうだけど……」
こいつは用意周到なやつだと思う。
俺の配信から自分の配信までの間にあれだけのものを用意したんだ。
元々そういう業界にいたのかとか、詳しいことはわからないけど……。
「俺なんかが人の役に立てるなら、それでいいさ」
「――なんかじゃないよ」
「ん?」
「マホロっちは本当に凄いんだよ! ……そんな言い方、しないでよ」
「タマ……」
……そう、だな。
「悪いな、まだまだ始まったばっかりなのに、もう後ろ向きなこと言っちまった……ゆら先輩やお前が『凄い』って言ってくれてること、ちゃんと覚えておくよ」
「うん、それでいいにゃー」
「……このあとのしえるの配信も見るんだろ?」
「もちろんだよ、どうせなら一緒に見ようよ」
「そうするか……ごめん、どうやんの?」
「それはね――」
こうして、タマに教えてもらいながら、『波亭しえる』のデビュー配信を一緒に見ることになった――。
◇
【お菓子おいしい】はじめてのくっきんぐ【AP/波亭しえる】
「……何、このタイトル?」
「しえるちゃんの設定はパティシエだから、お菓子作りを全面に出してるんだろうね」
……なるほど。
そういえばタマの配信タイトルもアレだったな。
みんなちゃんと設定守ってるんだなぁ。
「マホロっちも、ちゃんと守ろうね?」
「はい……」
そうは言うけど、座敷わらし感ってどうすれば出せるんだ……?
そんなことを考えていると、しえるの配信予定時刻になった――が。
「…………………………」
・キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
・キ……てない?
・無音で草
・あれ?
・事故?
しえるのアバターはちゃんと動いているのに、音が出ていない。
アバターがわちゃわちゃと落ち着きなく動いているが……。
「これ、大丈夫か……?」
「めちゃくちゃ焦ってるね……」
ゆら先輩が裏でフォローしているはずだし、心配はいらないだろうけど……。
やがて――
「あっ……あ、えっと……き、きこえて……ますか……?」
か細い声が、ようやく聞こえてきた。
・聞こえてるよ!
・大丈夫?
・かわいい
「あぅ……あの、ご、ごめんなさい……いきなりこんな……」
・いいんやで!
・オレたちが守らなきゃ(使命感)
その様子を見ていたタマが突然、自信満々にこう言った。
「――ほらね?」
……ああ、なるほど。
これは確かに――守ってあげたくなる。
「きっ……気を! 取り直しまして……あ、改めまして、『波亭しえる』……です!」
・めっちゃガチガチじゃん……
・まぁ気にすんなって言われても気にするわな
・ゆっくりでいいよ!
・がんばって!
「あ、ありがとうございます……もぐ……そ、それでですね――」
・え?
・なんか食ってる?
・さっきまでの緊張どこいった?
・何食ってるん?
「こ、これはですね……お姉ちゃ――しゃ、社長が!『配信中でもお菓子食べてていいよ』って言って、誘われて……もぐ……」
・だからって初配信で食べながら喋るやつがあるかw
・なんでや、リラックスできるなら別にいいやろ!
・かわいいからヨシ!
・それな!
「……なんつーか、凄い子だな」
「だね……マホロっちとは違う意味で、配信者に向いてるんじゃないかな?」
「俺にはまだよくわかんないけど……確かに、人気は出そうだ」
その後、しえるのデビュー配信は――つつがなく終わる、はずだった。
・同期のふたりについて感想とかある?
・あ、それ気になる
・配信の準備で忙しくて見てないんじゃね?
「マホロさんと……タマさんですよね……おふたりとは、マホロさんの配信前に、ちょっとお話したくらい……なんですけど……」
・話してたんだ
・感想気になる
「マホロさんの声は……あの……すごく、優しくて……安心するというか……」
・確かに、ロリ声だけどなんか心地いいんだよね
・わかるマン
「昔どこかで聞いたような……懐かしい感じがして……」
え?
……いや、初対面だよな?
「タマさんは……すごく、しっかりしてる……感じで……」
・破天荒っぽいのにな
・タマは裏でめちゃくちゃ計算してるタイプと見たね
・たしかに
・マホロちゃんの事故を上手く使ってたもんな
「マホロさんの、事故……?」
・あれ、知らん?
・そっか、見てないのか
・『月見里マホロ 切り抜き』でチェック!
「あ、あとで……みてみます」
やめろ! 俺の失敗を嬉々として見せようとすんなよ!
・この3人で絡んだら絶対おもろい
・それな
・同期コラボせんの?
・この3人でコラボ!?
・みたい!
「……だってさ?」
「……マジかよ」
・誰かふたりの連絡先知らんの?
・しえるちゃんが知ってるじゃん
・それだ!
「え? ……えっと? い、いいん……ですか?」
・おねがいしえるちゃん!
・3人のコラボみてみたい!
「わ、わかりました……! お願い、してみます……」
……こうして、しえるのデビュー配信も、新たな爆弾を抱えて、終了したのだった――。




