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 ◇


 しえるの配信が終了した後、タマとの通話を終えた俺は、SNSを開く。


 #月見里マホロ

 #アナザーパンデミック

 #AP2期生


 見れば見るほど、俺たちの名前が流れてくる。

 ……ここまでバズるとは思ってなかった。

 ゆらママの知名度が高いのも、その後輩の俺たちに注目が集まるのも、わかる。

 ……でも、同接は多くても2000人くらいだったはずだ。

 それなのに――タイムラインには、見覚えのないアイコンばかりが並んでいた。


「……これが、切り抜き動画の強さってやつか」


 ほとんどが、切り抜きを見た人なんだろう。

 俺だって会社勤めだった時は、ほとんど切り抜きしか見てなかったしな……。


「タマがこだわるのもわかる気がするな……」


 あの時少しだけ聞いたけど、タマは元々配信者……というより、動画投稿者だったらしい。

 生配信じゃなく、編集した動画を中心に活動していたと。

 だからこそ、『何が一番ウケるか』をよく知っているんだろう。

 ――そして、それを()()()()タイプだ。


「俺の……月見里マホロの強み、か」


 タマには経験に基づいた編集技術と、それを活かす知略。

 しえるは……見ているだけで、守ってあげたくなるような可愛さ。

 ……俺には、何があるんだろう?

 

 ――何もないわけじゃない。

 ……少なくとも、この声があるんだから。


 ◇


【2期生】こらぼなのじゃ!【AP/月見里マホロ/猫野タマ/波亭しえる】

 チャンネル登録者数:1,700人


「こんマホロ~! あなざぁぱんでみっく2期生、月見里マホロなのじゃ!」

「にゃーん、AP2期生、猫野タマだよー」

「もぐ……あっ、こ、こんばんは……波亭しえる……です」

「もう何か食べてるのじゃ!?」


 ・キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!

 ・待ってた!

 ・わくわく

 ・今日はどんなカオスが見られるかな?

 ・マホロちゃんの喉が心配になるね


「わしがいつも叫んでるみたいに言うでないわ!」

「おー、今日は口調崩れないにゃ?」

「が、がんばってて……えらい……です」


 これだけで褒められるって……。


「こほん! ……今日は告知した通り、タマとしえるを呼んでの――2期生コラボじゃ!」

「にゃー、ぱちぱちー」

「よ、よろしく……お願いします……もぐ」


 ・ところでコラボってなにするの?

 

「それはじゃな……タマ?」


 ・ズコーッ

 ・それはないよマホロちゃん……

 ・困った時のタマ頼り


「しょうがないにゃあ……」

 

 ・あの、すみません、お願いが

 

「なにかな?」

「やめんかバカども!」


 ・このネタが通じるってことは……

 ・マホロさん……


「ええい、うるさいのじゃ! タマ!」

「はいはーい、まずは告知と同時に募集してたマシュマロ食べよっかー」

「え? わし初耳なんじゃけど……」

「わたしは、聞いて……ました……よ?」


 なんでだよ!?

 ……いや、タマのことだから『教えないほうが面白そう』とかそんな理由だな。


「ちゃんと事前に内容は確認してあるから、安心して欲しいにゃ」

「安心……です……もぐ」

「じゃからわし、聞いとらんのじゃけど……?」

「まずはこれにゃ!」


【それぞれの第一印象(見た目)と、実際話してどう思ったかを教えてください】


「凄い、まともな質問だ……!」

「なんだと思ってたにゃ?」

「いや……もっと変なの来るかと思って、身構えてたのじゃ……」

「わたしは、デビュー配信で……言った……ので……」


 あぁ、そういえば。


「じゃあまずわしからじゃな。……タマは機械に強そうじゃと思ったな」

「それだけにゃ?」

「かわいいとは思ったのじゃ……」

「えー? 照れるにゃー」


 クッソ棒読みじゃねぇか!

 ……全然そんな風に思ってないだろ。


 ・ガジェット強そうなのわかる

 ・首にヘッドホンしてるもんな

 ・実際切り抜き動画作るほどだしな

 ・かわいいは正義

 ・にゃーん


「しえるは……あ、今更だけどしえるって呼んでもいいのじゃ?」

「は、はい……ぜんぜん……呼び捨てで……!」

「じゃあ、しえるって呼ぶのじゃ!」


 女の子を名前呼びするってちょっと緊張するな……。


「……あちしは?」

「ん?」

「あちしには聞かないのにゃ?」

「……タマはタマじゃろ?」


 ・雑w

 ・扱いの差よ

 ・でも困った時には頼るんでしょ?

 ・それはそれ、これはこれ


「ふーんだ、いいにゃいいにゃ! あちしは所詮、都合のいい女ってことにゃ!」

「……で、しえるの第一印象は――」

「フシャーッ!」

「ぎゃあっ!? きゅ、急に大声を出すな!」


 ・ぎゃあてw

 ・マホロちゃん、そういうとこやぞ

 ・やっぱおと……

 ・シッ、それ以上はいけない


 そんな風にタマとじゃれあっていると――


「……ふふっ……あ、ご、ごめんなさい……」

「謝らんでもよいが……どうかしたのじゃ?」

「い、いえ……その、幼い頃によく……遊んでくれた……男の子を、思い出して……」


 ・しえるちゃんの初恋!?

 ・い、いやだぁー!

 ・ガチ恋勢が息をしていない……!


「初恋か……どうかは……わからない、ですけど……あの、えっと……」

「ゆっくりで大丈夫……焦らず、伝えたいことを言葉にすればよいのじゃ」


 ……あれ?

 この言葉、どこかで……?

 

「っ……わ、わたしが困っていると……いつも……助けてくれて……」

「わたし、普段からよく……言葉に詰まって……言いたいことがあっても……言えないことが、多くて……」

「でも、その子は……大丈夫だよって……すごく、やさしい声で……」


 ……なんだろう、この感じ。


「今みたいに、励ましてくれて……っていう、お話……です……ご、ごめんなさい……長々と……」

「いい話だったし、謝ることないにゃ!」

「そうだな……むしろ、しえるのことをまたひとつ知れて嬉しいのじゃ!」

「はぅっ……ど、どういたしまして……もぐ……」


 しえるは照れたように笑って、またお菓子を口に運ぶ。

 その様子を、なんとなく眺めていた――


 ――そのとき、ふと。


 さっきの話と、今のやり取りが、頭の中で繋がりかけた気がした。

 ……いや、そんなわけないか。

 俺は首を振って、その考えを振り払った――。

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