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 ◇


 ……まだ心臓がバクバク言ってる。

 クッソ……なんだよこれ、怖すぎだろ……!


「いやぁ……あちしの鼓膜、返してほしいにゃ……」

「……あ、そうじゃった」


 ……そういえば、タマとコラボしてたんだった。

 途中から全然喋らなくなったから、普通に忘れてたわ……。


「にゃふ……さっき、すっごい声出してたにゃー?」

「はぁ!? べ、別に? びびっとらんし!?」

「マホロくん……」

「やめろ!」


 ・迫真の声

 ・そらなぁ

 ・オレもクソビビったもん

 ・『彼女は怖いのが苦手?』

 ・まさかフルボイスタマくんが……?

 ・需要しかない

 ・どうせならフルボイスマホロくんも……

 ・やめてやれw


「えー? じゃあちょっとだけ……マホロくん……?」

「やめろって言っとるじゃろ!」

「リスナーの期待に応えるのも、良い配信者にゃよ?」

「……むぐぅ」


 それを言われると、ちょっと痛い……。

 別に、人気者になりたいとかそういうわけじゃない。


 ……ただ、やるならちゃんとやりたいだけだ。


「というわけで、リスナーも待ってるにゃ、続きを――」

「もうやらんのじゃ!」


 ・そんなぁ

 ・もっとやって!

 ・もっと叫んで!

 ・悲鳴を聞かせて!


「やらんと言っとるじゃろ! きょ、今日はもう終わりなのじゃ!」

「えー、もっと遊ぶにゃー……まだ眠くないにゃー……」

「もう夜も遅いんじゃから、さっさと寝ろ!」

 

 ・突然のマホロママ

 ・ギャップが凄い

 ・ロリママ……

 ・ばぶぅ……

 ・言うほどママだったか……?

 ・どっちかというとパパ

 ・バカお前、消されるぞ!

 ・誰に!?


「それじゃ、本当にここで終わりなのじゃ! おつマホロ~!」

「おつマホロ~にゃ」


 ・本当に終わった!?

 ・嘘だろ!?

 ・やだ、やめないで!

 ・やめるのをやめて!


「やめるのをやめるのをやめんのじゃ!」

「ややこしいにゃー……」


 ……またしても切り抜きがバズっていたことに気付いたのは、朝になってからだった。


 ◇


「まーたスマホが鳴り止まない……」


 そう……またしても、だ。

 ホラー配信はよく切り抜かれるとは聞いたことがあるけど、ここまでとは。


「下手すりゃ歌の時よりバズってないか……?」


 歌の切り抜きで興味を持ってくれた人がいるからこそなのはわかっているけれど。


「しかし、こう毎回バズるようだと、この先キツくならないか……?」


 バズっている手前、こういうのも憚れるが……。

 ……正直、なんでここまで伸びてるのか、よくわからん。

 前回と同じか、それ以上を求めて来るやつもいるかもしれんし……。

 ……まぁ、そういうのは気にするなって、タマやゆら先輩にも言われたけど。


 ……昨日の配信でも言ったばっかりだろ。

『今いる人を大事に』って。


 それよりも、今考えるべきなのは……。


「タマとのコラボ、何すればいいんだろうな……」


 昨日の突発アンケートで『タマとコラボしてほしい』という意見が多かった。

 それを受けて正式に『後日コラボする』と発表してしまった。

 やると言った以上はやる……のはいいんだけど。


「タマのやつ……『何をするかはマホロっちが決めるにゃ』じゃねぇよ……丸投げかよ……」


 コラボねぇ……よくあるのだと、マシュマロ雑談とかか。

 でもあれはもう2期生コラボでやったし……タマが納得するとも思えん。


 となると、タマに合わせてゲームか……?


「……いや、きついだろそれ」


 ゲームは好きだし、色々やってはいるけど……上手いわけじゃない。

 タマみたいに、魅せるプレイなんて無理だし……。


 ……正直、ニャリオを選んだのだって、そういうの期待されても困るからだったしな……。


 …………………………。


「あー! もうわからん!」


 わからんなら……聞けばいいだろ!


『タマ、今いいか?』

『にゃーん、コラボ内容決まったにゃー?』

『いやまだ……それでちょっと相談があってな』

『……コラボって何をすればいいかわからないよタマえも~ん!』

『エスパーか!?』

『そこは『しょうがないなぁマホロくんは~』にゃよ?』

『お前がノ◯タくんやったからおかしくなったんだろ!』


 ……まぁ、このタイミングで相談って言えば、そりゃバレるか……。


『難しく考えなくていいと思うよ?』

『いや、そうは言ってもな……そうだ、マ――』

『マシュマロ雑談とか言ったら怒るよ?』

『だからなんでわかるんだよ……』

『配信初心者の考えることなんてお見通しにゃ』


 だろうな……だからこそ、タマ(ベテラン)に相談しているんだから。


『まぁマホロっちが思いつかないというのならしょうがないにゃ……虹――』

『絶対やらねぇ』


 しばらくはホラーやりたくない……。

 

『……マホロ、君にひとつアドバイス』

『ん?』

『――『月見里マホロ』だからこそできることを考えてみて』


 ……『月見里マホロ』だからこそ、できること。


『それって……』

『それは、自分で考えろにゃ』

『……わかった、相談に乗ってくれてありがとな』

『どういたしましてにゃ! コラボはいつでもいいけど……なるべく早く頼むにゃよ?』


 ◇


「俺だからこそ、できること……ねぇ」


 歌でバズったことはある。

 ホラー配信の絶叫も切り抜かれていた。


「でも、それって……別に俺じゃなくてもいいはずだ」


 男バレ……あれもバズってはいたけれど。

 あれは『企業秘密』だからこそ……ゆら先輩の影響だからこそだろう。


「……あーもう、わからん!」


 さっきは、わからないなら聞けばいいって言ったけど。

 ……でも、今回はそれじゃダメなんだ。


 俺が……自分で見つけないと。


「……とはいえ、今は何をするにも経験不足だし……」


 そういえば、以前見ていたVTuberに『朝活』をしている人がいたな?

 朝か……日本のリスナーは、時間的に見てくれないかもしれないけど……。


「なぜかわからないけど、マホロは海外ニキにも人気みたいだし……やってみるか?」


 うーんと、前に見てた朝活配信って……一週間の出来事をニュース形式で紹介してたっけ?

 

 …………………………。

 

 うん、配信者って大変なんだな……。

 事前の準備が……素直に雑談配信でもしておくか……?


「待てよ? そもそもいきなり『朝配信やるぞー』なんて言ってもダメだな?」


 配信枠の確保とか、SNSで告知とか……。

 じ、事前の準備……。


 …………………………。


『タマ』

『まかせろにゃー』


 困った時に頼れる同期がいるっていいよね!


 ◇


『それで、あちしは何を手伝えばいいにゃ?』

『朝活っていうのやってみようと思ったんだけど、想像以上に準備とかが必要そうでな……』

『にゃーる……それは、自分探しにゃ?』

『あぁ、俺だからできることってなんだろうって思って……でも何も思いつかなくて……こればっかりは、俺が自分で考えないとだろ?』

『……マホロっち』

『ん?』

『……なんでもないにゃ……色々やってみるのは、素晴らしいと思うにゃよ!』

『そうか? タマにそう言ってもらえると安心するな……』


 やっぱり、俺の考えは間違ってないんだな。


『褒めても何も出ないにゃよ?』

『手伝ってくれるだけで嬉しいさ』

『にゃふふん、おねーさんにまかせろにゃー』


 おねーさんて……多分俺より年下だよな……?

 まぁ、配信者の先輩としてってことか。


 ――こうして始めた朝活が、あんなことになるなんて。

 この時の俺は……想像もしていなかった。

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