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10/19

 ◇


【ニャリオ】はじめてのげぇむ配信なのじゃ【AP/月見里マホロ】

 チャンネル登録者数:3,900人


 海外ニキとかが大騒ぎしていたし、通知もとんでもないことになっていたから。

 正直ちょっとだけ期待してた。登録者数、1万人くらい行ってないかなって。


 ……まぁ、そんな上手い話あるわけないか。


「……いや、増えてはいるんだし、今いてくれる人を大事にしないとだよな」


 おっと、そんな話をしてる場合じゃなかった。

 初めてのゲーム配信だし、気合を入れ――


 ……ん?


 ・マホロちゃん、はじまってるよ!

 ・気付いてマホロちゃん!

 ・『こんにちはマホロ』

 ・まぁあんだけバズってたのに増えたの2千人くらい?

 ・みんなもっとマホロちゃんを登録してやれよ!


 ……は?


「な、なんじゃこりゃあ!?」


 ・うるさw

 ・今日の叫び声ノルマ達成

 ・やっと気付いたん?

 ・こんマホロ~!


 い、いつから!?

 まさかさっきまでの独り言全部聞かれてた!?

 まずいこと言ってない……よな?

 ……よな?


 ・今いるオレらを大切にしてくれよな!


 …………………………。


「――んガアアアァァ~~~~~!!!!」


 ・あれ、ミュートした?

 ・さっきの比じゃないうるささ

 ・鼓膜ないなった

 ・叫びノルマ更新!


「ふー、ふー……」


 恥ずかしさで死ぬかと思った……。


 ・マホロちゃんがフーフー言ってる

 ・マホロ猫ってこと!?

 ・猫はもうおるやろ!

 ・[猫野タマ]あちしのポジション奪わないでほしいにゃー

 ・タマもようみとるw


「お前……お主らさぁ!?」


 落ち着け……どれだけ恥ずかしくてもキャラは維持しないと――

 ……ほんとに。


 ・お、頑張って持ち直した?

 ・えらいえらい

 ・でも正直のじゃロリってキツくね?

 ・マホロちゃんの声質には合ってるだろ!?

 ・『なぜ笑うんだい? 彼女は魅力的だよ』

 ・海外ニキもようみとる


「えっ、海外ニキいるの? は、はろー……?」


 ・Hello!!

 ・はろー!

 ・ここまで酷い英語初めて聞いたかも

 ・『リスナーのみんな、こんにちは』

 ・そういえば配信って自動翻訳されてるんだっけ?

 ・コメントだけじゃないん?


「わしも最近知ったんじゃが、生配信でも同時翻訳してくれるらしいのじゃ」


 ・はぇ~、すっごい

 ・技術の進化って凄いなぁ

 ・愛だね!

 ・なぜそこで愛!?


 確かに凄いよ?

 凄いんだけど。

 ……便利すぎて、ちょっと怖くね?

 いや、使ってる側としてはありがたいんだけどさ……?


 ・ところでゲームまだ?


「……あっ! べ、別に忘れてたわけじゃないのじゃ!」


 ・さすがにそれは無理があるよ……

 ・マホロちゃん……

 ・ニャリオのどれやんの?


「ふっふっふ……こういうのは何も考えず『最新作』をやるか、『1から』やるかで悩むものじゃろ?」


 ・まぁそうね

 ・最新作からやると古いのキツいんだよなぁ

 ・画質とか操作性とかな


「というわけで――両方用意したのじゃ!」


 ・な、なんだってー!?

 ・どゆこと?

 ・オレらが選ぶってこと?

 ・視聴者参加型!?

 ・オレ、ニャリオ持ってない(´・ω・`)


「いやいや、一緒にやるつもりなら告知しとるじゃろ?」


 俺は画面を操作して、投票画面を表示した。


『最新作』:0

『1から』:0

『それ以外』:0


 ・え?

 ・なんか増えてね?

 ・それ以外って何?


「え? それ以外って何じゃ?」


 ・なんでマホロちゃんが知らんのよ

 ・もしかしてこれ、タマに教えてもらった?


 え、そうだけど……なんでわかんの?

 タマのやつがなんか仕込んだってこと……?

 まぁ、あいつならやりかねない……というか、やる。


「……ま、まぁ、というわけで――今から3分で投票するのじゃ!」


 ・というわけじゃないのよ

 ・急すぎて草

 ・みじかっ

 ・3分間だけ待ってやる!

 ・マホロ大佐!?

 ・◯ルス!


 狙ったつもりはなかったけど、結果的に有名な大佐になってしまった。

 

「さて、途中経過は……?」


『最新作』:0

『1から』:0

『それ以外』:50


「は?」

 

 ・1分経ってないんですけど

 ・1からに入れたんだけど?

 ・あれ、オレが入れた最新作は?


「……タ~マ~?」


 絶対なんかしてるだろ……!


 ・[猫野タマ]なんのことか、あちしわかんないにゃー?

 ・バレバレで草

 ・そういやさっきもコメントしとったやんけw

 ・仕込みがいつ発動するか監視してたってことか

 ・こっわ……猫こっわ……!


「というわけで3分経ったのじゃ……まぁ、見るまでもないがの」


『最新作』:0

『1から』:0

『それ以外』:255


「なんじゃっけこの数字……」


 ・1バイトの最大値?

 ・昔のRPGとかでよく見た

 ・他にも65535とかあったよな

 ・ぅゎこの猫ガジェットっょぃ


「まぁよい、とりあえず『それ以外』を……だからそれ以外ってなんなのじゃ!」


 俺は最新作と1しか持ってねぇよ。

 それ以外って何……?


 ・[猫野タマ]マホロっち、『それ以外』をクリックするにゃ


「む? ……こうか?」


 そうしてタマの指示に従ってみると……。


『歌枠』:0

『ホラー実況』:0

『ニャリオ実況』:0

『あちしとコラボ』:0

 

「なんじゃこの選択肢は!?」


 ・歌枠!?

 ・またあの歌声が聞けるのか

 ・『とても素晴らしいね!』

 ・でもホラーも捨てがたい

 ・どう見ても最後のが本命だろ


 誰かニャリオのことも思い出してあげて?

 この配信のために最新作買ったんだけど?


「はぁ……それじゃ、また3分で投票するのじゃ!」


 ……もう大佐ネタは拾わんぞ?

 今回は途中経過を見ないようにした。

 さっきのようなことになったら面倒だし。


「さて――結果発表じゃ!」


『歌枠』:369

『ホラー実況』:75

『ニャリオ実況』:10

『あちしとコラボ』:962


 ・ニャリオ10は草

 ・コラボキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!

 ・既定路線だった気がする

 ・でもさっきと比べると?

 ・歌枠結構頑張ったな

 ・今回はガチの結果ってこと?


「タマ……どうなんじゃ?」


 ・[猫野タマ]あちしは今回なんもしてないにゃー

 ・嘘くせぇw

 ・いや、でもタマならやる時はもっと派手にやりそう

 ・さっきの見せられちゃうとなぁ

 ・ニャリオは犠牲になったのだ……


「わしのニャリオ……」


 定価7980円が……。

 まぁ、次の機会にやればいいけど……。


 ・哀愁漂ってる

 ・まぁ最新作なら高いわな

 ・今ってセールとかしてないし

 ・マホロちゃん……


「えぇい、ニャリオは次やればいいのじゃ!」


 ・それはそう

 ・10人は期待してるんやで

 ・ホラーも期待してる!

 ・歌枠だって負けてないぞ!


「えぇいやかましい! とりあえず今は、タマとのコラボの話をするのじゃ! ……で、なにすればいいのじゃ?」


 ・ズコーッ

 ・いやまぁ今回はしゃーない

 ・全部タマが悪い

 ・それはそう

 ・ウチのタマがすみませんにゃ


「正直、もうすでにコラボしてるようなもんだと思うんじゃが……」


 そもそもニャリオしてたらここまで疲れてないんだよなぁ……。


「それで、あらためて別枠でコラボしたいってことなのじゃ? それとも今呼べばいいのじゃ?」


 ・どっちもみたい!

 ・今呼んで後日また別枠コラボすればいいんじゃね?

 ・急に呼んでなにすんの?

 ・……マロ読み?

 ・前3人でやったじゃん

 ・じゃあしえるちゃんも呼んでまた3人コラボしようぜ!

 ・それだ!


「ターマー? 早くしないとこいつら勝手に予定組みそうじゃぞー?」


 そんなことを言っていると、タマからディスコードがきた。


『どっちのほうがウケるか考えてたのに……』

『そうは言っても、もうどっちにするか考えてるんだろ?』

『そうだね……コメントにもあったけど、今はディスコードの通話だけして、後日正式にコラボ回をしよう』

『わかった、このまま通話するのか?』

『ちょっと待ってくれる?』


 ・なんかカタカタ音が聞こえる

 ・裏でタマと話してる?

 ・マホロちゃんって真面目だよね

 ・真面目じゃなかったら今頃ただのカオスなんよ

 ・タマも?

 ・それは知らん


 あっ……キーボードの音がマイクに乗ってしまった。

 ……まぁ、別にいいか。


「今タマが裏でなんか仕込んどるみたいじゃから、みんなもちょっと待っててほしいのじゃ」


 ・[猫野タマ]ちょっと!?

 ・マホロちゃんひっどw

 ・裏でなんかしてるのは秘密なのに!

 ・バレバレだからって言ってもいいわけじゃないんだよ!

 ・あーあ、タマかわいそう


「なんじゃ、わしが悪いのか!? ……わしが悪いな!? ごめんなタマ!?」


 ・マホロちゃんのそういうとこ好き

 ・素直!

 ・それがマホロちゃんのいいところだからな

 ・声良し性格良し

 ・最強じゃん


「素直で何が悪いのじゃ! っていうかタマはまだか!?」


 その言葉に反応したのか、タマからディスコードが。


『おまたせ、通話繋いでくれる?』

「タマの準備ができたらしいので、呼ぶのじゃ!」

「にゃーん、AP2期生、猫野タマだよー」


 ・タマちゃんキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!

 ・待ってた!

 ・人の配信でどんなカオスを見せてくれるんだ?

 ・最初からカオスだったと思う

 ・最初からコラボしてたと思う

 ・今のタマの挨拶で思い出したけど、マホロちゃん挨拶したっけ?


 ……あっ。


「……こんマホロ~! あなざぁぱんでみっく2期生、月見里マホロなのじゃ!」


 ・知ってるよ?

 ・なんで今挨拶したの?

 ・始まってからどれだけ経ってると思ってるの?

 

「っ~~~~~~!!!!」バンバンバンッ!

「マホロっちうるさいにゃー」

「誰のせいだと……わしか」


 タマに当たるのはよくないな……。

 悪いのは月民たちであって、タマじゃない。


「そういえばこの枠、1時間で取ってるからあと30分もないんじゃが……何するのじゃ?」

「1時間でニャリオとか無謀にもほどがあるにゃー」

「うっさいのじゃ!」


 初めてのゲーム配信だったし、とりあえずで決めたんだよな……。


「とりあえず短時間でできる、いいゲームがあるにゃ」

「ほう?」

 

 ・ん?

 ・タマが勧めるゲーム?

 ・あっ……

 ・ま、まぁ確かに短時間で済むよな……

 ・マホロちゃん大丈夫かな……


 え、何?

 なんかリスナーの反応が怖いんだけど……?


「いったい、何をやらせるつもりなんじゃ……?」

「にゃっふっふ……それは――『虹鬼(ホラーゲーム)』にゃ!」

「虹鬼……名前は聞いたことある気がするのじゃが……なんじゃっけ?」

「無料で遊べる、『ツクレール』系ゲームにゃ」

「ほぇー……」

「……よくわかってない顔にゃね」

「すまん、正直そこまでゲームは詳しくないのじゃ……」


 たまにやってたけど……普通のRPGとか、ミニモン(子ども向け育成系)ばっかりだったし。

 そもそも仕事が忙しくなってからはそれすらやらなくなったからな……。


「まぁ簡単に言うと、『誰でも簡単にゲームを作れるゲーム』で作ったゲームってことにゃね」

「はぇー……?」


 ゲームって単語がゲシュタルト崩壊しそう……。


 ・誰でも簡単にツクレール

 ・誰でも簡単に(作れるとは言ってない)

 ・オレ、ゲーム作るの憧れてたから買ったけど30分で諦めた

 ・わかる


「……つまり、わしでもゲームが作れるということか?」

「まぁ……やろうと思えばできるにゃ」


 ・やめなー?

 ・その先は地獄だぞ

 ・『マホロ、24時間ゲーム作る配信するの?』

 ・24時間で済めばいいけどな

 ・海外ニキも24時間耐久とか知ってるんだ


「どんだけなんじゃ……まぁ良いわ、今日は作る側じゃなくて遊ぶ側なのじゃ」

「というわけで、あらためて『虹鬼』をやっていくにゃよー」

「待て待て、まだダウンロードできとらんわ」


 ・いきなりだったもんな

 ・ニャリオ……

 ・シッ、ニャリオの話題はNGだぞ!


 配信画面に乗らないよう、タマから送られたページを開き、ゲームをダウンロードする。

 そこまで重たいゲームではないようで、5分もかからないと予想時間が表示される。

 

「5分か……とりあえず、ゲームのあらすじでも見るのじゃ」


 えーっと、なになに……?


『学校で話題になっていた古い屋敷へ、『肝試し』にやってきたアナタと友だち』

『その屋敷には、不思議な噂話があるらしい』

『願いを叶える……ナニカがいると』

『ただし悪いニンゲンは――鬼に食べられてしまうのだとか』

『噂の真実を解き明かし……屋敷から無事に脱出できるだろうか――』


「古い屋敷か……ちょっと親近感湧くのじゃ」

「マホロっちが座敷わらしっぽいこと言ってるにゃ!」


 ・そういやこの子、座敷わらしだったな

 ・リスナーが忘れてて草

 ・でもお前も忘れてたろ?

 ・わ、忘れてねーし!?


 正直、未だにその設定忘れそうになるんだよな。

 

 ……のじゃロリ口調だけは、なんとか保ってるんだけど。

 

 ・しかし、結構雰囲気あるな

 ・オレ、このゲーム知らないんだけど、実際どうなん?

 ・それ言ったら面白くないだろ

 ・マホロちゃんのプレイを待て


「まぁこれくらいなら、よくあるホラーものじゃろ?」


 ……テンプレホラーなら、余裕だろ。


 ・あ……

 ・あーあ……

 ・余裕そうなマホロちゃんカッコイイー(棒)

 ・盛大なフラグを見た

 ・マホロ氏、死亡確認!

 ・どっちかというとオレらの鼓膜が死にそう


 ……。


「さて、無事『虹鬼』のダウンロードとインストールが完了したのじゃ!」

「早速やっていくにゃー」


 ・キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!

 ・待ってた!

 ・ドキドキする……

 ・怖くて? 楽しみで?

 ・どっちも!


「お、主人公と友の名前は変更できるのか……せっかくじゃ、『マホロ』と『タマ』にしとくのじゃ」

「えっ」

「む? なんぞまずかったか?」

「あっ、いや……なんでもないにゃー」


 ん……?

 ……まぁいいか。


「まぁ自分の名前なら……愛着も湧くじゃろ?」


 ……よし、名前決定っと。

 

 ・あっ……

 ・あーあー……

 ・その名前……

 ・おい、反応もネタバレになるからな?

 ・うっす

 ・気をつけまーす


 ……冒頭のストーリーがはじまった。


『マホロ:ここが……学校で言ってた屋敷だよな』

『タマ:うん……ねぇ、本当に行くの?』

『マホロ:なんだよ、ビビってんのか?』

『タマ:だ、だって……鬼に食べられるって……』

『マホロ:それは悪いニンゲンだろ?』

『タマ:うぅ……やっぱり、やめようよ……』

『マホロ:ヘーキだって……ほら、行くぞ?』

『タマ:あっ……ま、待って……置いてかないで……』


 ふたりの足音だけが、妙に静かに響く。

 

 ……。


「……呑気なやつじゃのぉ。このマホロとか言うガキんちょ、少しは警戒せんか」


 ・特大ブーメランで草

 ・あなたですよね?

 ・自らをガキと認めていくスタイル

 ・よわよわタマくんかわいい

 ・クソガキマホロくんだってかわいいだろ!


「結構広い庭じゃったの……」


 マホロが入口に到着し、扉を開けようとする。


『マホロ:よし、開けるぞ?』

『タマ:う、うん……ひっ!?』


 ――その直後。

 

 バサッ……と、庭の奥で何かが羽ばたいた。


「……おわぁっ!? な、なんじゃ今の……鳥か……?」


 まったく……人騒がせな。


 ……ふぅ。

 

「あれあれー? さっきまで余裕そうだったのに、ビビってるにゃー?」

「は!? び、ビビってねぇけど!?」


 ・マホロくんだ

 ・今のほんとに鳥なのか?

 ・なんか影おかしくなかった?

 ・やはりクソガキマホロくんだったかー

 ・なんかタマ少年の反応早くなかった?

 ・ちょっと怖かった

 ・うんうん、マホロくんはビビってないよね


「う、うるさいのじゃ! 続けるぞ!」


『マホロ:はー……なんだよ、ただの鳥じゃんか』

『タマ:え……鳥……?』

『マホロ:バサバサーッて音がしたんだし、鳥だろ?』

『タマ:あ……そ、そう……だよね……』


 その後、マホロとタマは屋敷の中へと入っていく。

 

『タマ:お、お邪魔します……』

『マホロ:うおー! すっげー! 広い!』

『タマ:マ、マホロくん……あんまり大きな声は……』

『マホロ:悪い悪い、テンション上がっちゃってさぁ――』


 ――バタン!


 背後で、扉がひとりでに閉じる音がした。


『マホロ:うわっ!?』

『タマ:ひっ!? だ、誰もいないのに……!』

 

「っ……か、風じゃろ……?」

『マホロ:か、風……風で勝手に閉まっただけだろ……?』


 ……しかし、扉はびくともしない。

 まるで、最初から開くことなど想定されていないかのように――。


 ・マホロちゃんとマホロくんがシンクロしてる

 ・すげぇ

 ・解釈一致

 ・『マホロは男の子の気持ち、理解してる』

 ・マホロちゃんが子どもってこと?


『タマ:あ、開かない……ボクたち、閉じ込められたの……?』

『マホロ:だっ……とにかく奥に行こう――タマ、どうした?』

『タマ:…………えっ……あ、いや……ごめん、なんでもない……』

『マホロ:そうか? ……まぁいいや、行こうぜ』


 ……。


「少しくらい友だちを気遣うとかできんのかこのクソガキは……」


 ・ですからその子あなたなんです

 ・気遣いできないマホロちゃん

 ・つまりマホロちゃんはクソガキ

 ・『マホロは、勇気がある』

 ・何も考えてないの間違いじゃね?

 ・この状況で先に行こうとするのやべーよ


 マホロがひとつ目の部屋に入ろうとした時。

 タマが立ち止まり、後ろを振り返った。


『タマ:……』

『マホロ:何してんだタマー?』

『タマ:……な、なんでもない……』

『マホロ:ったく……さっさと行くぞ』

『タマ:う、うん……』


 そうして、ふたりは部屋へと歩き始めた。


 ……。


 ――ペタ。 ペタ。 ペタ。


「ん……?」


 今の音、なんか変じゃなかったか……?

 ……いや、気のせい……か?


「……ここからは探索パートのようじゃな」


『マホロ:んじゃオレはあっち探すわ』

『タマ:わ、わかった……ボクは向こうを探すね』


 ・なぜこの状況で分かれるんだ

 ・いや、一応同じ部屋の中やで

 ・タマ見えないんだが?

 ・部屋広すぎィ!


 コメントの通りで、ちょうど画面でタマが見切れるように左へと消えていった。

 実際は同じ部屋なのに、広すぎて見えないの――怖くね……?


『マホロ:うーん、ロクなもんがねぇ……タマ、なんかあったかー?』


 しかし、タマからの返事はない。

 

 ……。


『マホロ:あれ? ……タマ? ……おい、どこ行った……?』


 タマが向かったはずのほうへ視点が移動する。

 ――だが、そこにタマの姿はない。


 ・えっ

 ・タマくん!?

 ・見えないのをこうやって使うのか……

 ・すっげ


『マホロ:あいつふざけんなよ! オレを置いて逃げやがったな!?』


 ……えぇ?

 

「なんでそうなるんじゃ……?」


 ・さっきまでシンクロしてたのに

 ・いやまぁ、さすがにこれはな

 ・クソガキすぎて逆に怖い

 ・『人の心がない』

 ・でも子どもってこういうもんだよな

 ・……なぁ、なんか聞こえないか?


 ……。


 ――ペタ。 ペタ。


『マホロ:な、なんだよこの音……?』


 ――ペタ。 ペタ。


『タマ:マホロくーん』


 前方から、タマの声が聞こえる。

 

 ……よかった。

 

『マホロ:おいタマ! お前オレのこと置いて逃げ――』

 

『タマ:マホロくーん』


 ……しかし、なぜか。

 

 ――後ろからも、聞こえてきた。


 ――ペタ。 ペタ。 ペタ。

 ――ペタ。 ペタ。 ペタ。 ペタ。

 ――ペタ。 ペタ。 ペタ。 ペタ。 ペタ。


 足音が、増えていく。

 逃げようと操作しても、画面のマホロは動かない。

 ……動かないんじゃない。

 

 ――動けない。

 

 画面は徐々に赤みを帯びていき……。


 ――ドクン。 ドクン。


 ……。


 ゲームの音か、自分の心臓の音か――わからない。


『マホロ:やめろ……来るな……』


 ……届かない。

 

 ――『タマ』が増えていく。


『タマ:ママママママママママ』

『タマ:ホホホホホホホホホホ』

『タマ:ロロロロロロロロロロ』


『タマ』がマホロに触れた――。


『タマ:マホロクン……』


 ――。


『タマ?:マホロロロロロロロロロロロ!!!!!!!』


「――ひっ」


 血に濡れたタマが――画面いっぱいに張り付いた。


「ギャアアアアアアアアッ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」


 ・うるせぇ!

 ・鼓膜ないなった

 ・喉が心配になる

 ・今何時だと思ってんだ!?

 ・これが見たかった

 ・大満足です

 ・マホロちゃんの叫び声からしか得られない栄養素がある

 ・『おはよう、素敵なモーニングコールだね』

 ・海外ニキ、ちゃんと寝て……

 ・寝たから今起きたんじゃないか?

 ・最悪な目覚まし時計だなw


 こうして、『月見里マホロの初絶叫』はあっという間に切り抜かれ……。

 またしても、世界へと拡散することになるのだが……。


 ――この時の俺には、知る由もなかった。

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