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第九十四話 竜族の長

飛行船四日目。


巨大な魔導飛行船はついに竜の郷へ到達した。


ゆっくりと高度を下げながら街の上空を進んでいく。


黒曜石の建物。


巨大な火口湖。


空を飛び回る無数の竜達。


その光景に恒一達は思わず見入っていた。


恒一

「すげぇな……。俺、もっと洞窟だらけの集落みたいな場所を想像してたんだけど」


エリシア

「私もよ。竜しか住んでないって聞いてたから、もっと原始的な場所だと思ってたわ」


ミリア

「何あれ!? 面白そう!! 早く降りたいんだけど!!」


フェルド

『まだ着いてない』


ミリア

「知ってるわよ!!」


ルミナス

『相変わらずですわね』


ゼノスは懐かしそうに街を見下ろしていた。


ゼノス

「帰ってきたなぁ!」


グランヴァルド

『二ヶ月ぶりだ』


恒一

「お前らだけ実家に帰省したみたいになってるんだよな」


やがて飛行船は巨大な黒曜石の台地へ降下した。


本来は大型飛行竜達が降り立つ場所なのだろう。


既に多くの竜達が集まっていた。


ドォォォォォン―――


船体が静かに停止する。


その瞬間周囲がざわめいた。


『人間だ』


『本当に来たぞ』


『黒竜もいる』


『あれがレヴナントか』


『飛べない飛行竜らしい』


視線が集中する。


恒一は苦笑した。


恒一

「お前、有名竜だったんだな」


レヴ

『見られているな』


恒一

「緊張してるか?」


レヴはしばらく街を見つめていた。


レヴ

『......分からん』


恒一

「またそれか」


レヴ

『初めて来た場所のはずなんだがな』

『何故か懐かしい気もする』


恒一は何も言わなかった。


その感覚はきっとレヴ自身にも説明できないのだろう。


やがて昇降路が降りる。


先頭で待っていたのは赤竜だった。


赤竜

『よう。無事着いたな』


ゼノス

「おっちゃん!!」


赤竜

『だからその呼び方をやめろ』


ゼノス

「無理だ!」


赤竜

『.....知ってたよ』


周囲の警備竜達が笑う。


どうやらいつものやり取りらしい。


赤竜は恒一達を見回した後、真面目な顔になった。


赤竜

『長老がお待ちだ』


ゼノス

「お、もう来てるのか」


グランヴァルド

『早いな』


恒一

「長老?」


赤竜

『行けば分かる』


それ以上は教えてくれなかった。


一行は赤竜の後を追う。


街の中心へ進むにつれ、集まる視線はさらに増えていった。


ミリア

「何か凄く見られてない?」


フェルド

『見られている』


エリシア

「というかレヴを見てるわね」


ルミナス

『ええ』


レヴ

『……』


街を抜けると巨大な火口湖が見えてきた。


その向こう。


湖を見下ろす岩山の上に、それはいた。


恒一は足を止める。


恒一

「……おい」


ミリア

「......何よあれ?」


エリシア

「嘘でしょ……」


レオンですら無言だった。


本気で山だと思った。


だが違う。


それは生きていた。


黄金色の巨大な竜。


あまりにも大きい。


遠くにいるのに巨大だと分かる。


恒一

「でかすぎるだろ……」


ゼノス

「相変わらずだな!」


グランヴァルド

『変わらんな』


その時、閉じられていた黄金の瞳がゆっくりと開いた。


同時に周囲の竜達が一斉に頭を下げる。


空気が変わった。


誰も説明しない。


だが分かったあれが頂点だ。


黄金の瞳が真っ直ぐレヴを見る。


長い沈黙。


そして。


エンシェントドラゴン

『……ようやく帰ってきたか』


レヴが固まった。


レヴ

『俺に言っているのか?』


エンシェントドラゴン

『他に誰がいる』


レヴ

『.....』


エンシェントドラゴン

『覚えておらぬか』


レヴ

『会った事があるのか?』


エンシェントドラゴン

『ああ、あるぞ』


レヴ

『覚えていない....』


再び沈黙。


エンシェントドラゴンはしばらくレヴを見つめていた。


怒るでもなく。


責めるでもなく。


ただ静かに。


やがて。


エンシェントドラゴン

『そうか』


その一言だけだった。


だがレヴは何故か胸の奥がざわついていた。


理由は分からない。


ただ目の前の黄金竜を見ていると妙に落ち着かない。


その時だった黄金の瞳が恒一へ向く。


恒一

「え?」


エンシェントドラゴンはしばらく恒一を見つめる。


まるで何かを確かめるように。


恒一は妙な緊張感を覚えた。


やがて。


エンシェントドラゴン

『人の子よ』


恒一

「は、はい」


エンシェントドラゴン

『後でもう一度儂のところに来るが良い』


恒一

「俺がですか?」


エンシェントドラゴン

『うむ。レヴナントと共にな』


恒一は思わずレヴを見る。


レヴも困惑していた。


ゼノスは面白そうに笑っている。


グランヴァルドは静かに目を閉じた。


赤竜は何も言わない。


だが周囲の竜達は明らかに驚いていた。


恒一

「何なんだ?」


ゼノス

「行けば分かる!」


恒一

「お前らそればっかだな!」


エンシェントドラゴンは再び目を閉じる。


まるで話は終わったと言わんばかりだった。


竜の郷に到着したばかりだというのに。


恒一とレヴは、いきなり竜族の頂点に呼び出される事になった。


恒一とレヴはまだ知らない。


この竜の郷で待っているものが何なのかを。


そして長い時を経て再び動き始めた運命を。


――第九十四話 終――

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