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第八十七話 封印の変化

協会からの呼び出しから数日後。


流星竜舎。


レヴ

『肉』


恒一

「飛べ」


レヴ

『嫌だ』


恒一

「飛べよ!」


レヴ

『肉』


恒一

「だから会話しろよぉ!」


あれから数日。


状況は何一つ進展していなかった。


レヴ

『…飛べない』


恒一

「…ああ知ってるよ」


レヴ

『なら肉だ』


恒一

「何でそうなる!?」


エリシア

「ねぇ」


恒一

「ん?」


エリシア

「このままじゃ三ヶ月なんてあっという間よ」


恒一

「…分かってる」


レオン

「ああ」


エリシア

「もう一度研究院へ行きましょう」


恒一

「研究院?」


エリシア

「封印に何か変化があるかもしれない」


レオン

「ああ」


恒一

「まぁ行くだけ行ってみるか」


レヴ

『帰りに肉』


恒一

「お前、本当に肉のことばっかだな…」


王都王立魔術研究院。


恒一達は巨大な白い建物を見上げる。


恒一

「相変わらずでけぇな」


エリシア

「王国最高峰の研究施設だからね」


その時、聞き慣れた笑い声が聞こえてきた。


ゼノス

「ははははは!!」


恒一

「あ」


レオン

「うるさいのがいるな」


ゼノス

「誰がうるさいんだ!」


グランヴァルド

『お前だ』


ゼノス

「お前も酷いな!?」


恒一

「何してんだ?」


ゼノス

「買い物帰りだ」


グランヴァルド

『付き合わされている』


ゼノス

「で、お前らは?」


恒一

「研究院に用があってな」


ゼノス

「病気か?」


恒一

「違う」


レヴ

『肉不足ではない』


恒一

「それの回答も違うぞ」


恒一はゼノスとグランヴァルドへ事情を説明する。


ゼノス

「へぇ、封印の再検査なぁ」


恒一

「ああ」


ゼノス

「面白そうだな!」


恒一

「嫌な予感しかしない」


ゼノス

「俺も行く!」


恒一

「だと思ったよ!!」


グランヴァルド

『私は帰りたい』


ゼノス

「駄目だ!」


グランヴァルド

『知っていた』


研究院最上階。


重厚な扉を開くと、中にいたのはあの老人だった。


老人

「来たか」


恒一

「どうも」


ゼノス

「誰だこの爺さん」


老人

「誰だこの馬鹿は」


ゼノス

「馬鹿だと!?」


老人

「馬鹿だろう」


グランヴァルド

『正論だ』


ゼノス

「味方がいねぇ!!」


レオン

「紹介してなかったな」

「この方は王立魔術研究院の院長でゴードン殿だ」


恒一

「院長だったのか!?」


エリシア

「知らなかったの?」


恒一

「ただの爺さんだと思ってた」


ゴードン

「ただの爺さんだ」


レヴ

『ジジイだ』


ゴードン

「黙らんか駄竜が」


ゼノス

「はっはっは!面白い爺さんだ!」


測定室。


巨大な水晶。


複雑な魔法陣。


以前と同じ光景だった。


ゴードン

「まずはレヴナントからだな」


レヴ

『肉』


ゴードン

「測定が先だ」


レヴ

『むぅ』


魔法陣が起動して水晶が光る。


そして空中へ文字が浮かび上がった。


【レヴナント】


種族:飛行竜

状態:封印

総魔力量:1,000,000

使用可能魔力:120

特殊能力:

《竜王因子》

発現率:0.1%


静寂。


ゴードン

「……?」


エリシア

「前回と違うの?」


ゴードン

「ああ」


レオン

「増えているな」


恒一

「使用可能魔力か」


ゴードン

「前回は100だった」

「今は120」


エリシア

「少しずつ増えてる……」


恒一

「飛ぶ訓練始めてから増えたのか?」


ゴードン

「可能性はある。微量だが封印の外へ流れる魔力が増えておる」

「だが封印は変わらず存在している」


レオン

「封印が弱まっているのか」


ゴードン

「断言は出来ん。だが確実に変化は起きている」


その時ゼノスとグランヴァルドは別の表示を見つめていた。


ゼノス

「……」


グランヴァルド

『……』


《竜王因子》


その文字を。


次は恒一だった。


ゴードン

「お前も乗れ」


恒一

「また壊れないよな?」


ゴードン

「壊したら弁償だ」


恒一

「……院長が酷い」


先ほどと同じように、魔法陣が起動する水晶が光る。


数秒後。


空中へ文字が浮かび上がった。


【神崎恒一】


種族:人間


魔力:測定不能


特殊能力:

神眼

魔獣使い


特殊因子:

《龍王因子》


適合率:100%


静寂。


ゴードン

「……何だこれは」

「また測定不能か……」

エリシア

「魔力量が測定不能ってどういうことよ」


レオン

「聞いたことがない」


ゴードン

「この改良型測定器でも測れんとは……」

「お主本当に人か?」


恒一

「……院長がさらに酷い」


そこに映し出された表示をみた瞬間ゼノスの笑顔が消えた。


ゼノス

「……おい」


恒一

「ん?」


グランヴァルド

『間違いない』


ゼノス

「ああ」


エリシア

「?」


レオン

「何かわかったのか?」


ゼノス

「……」


グランヴァルド

『……』


ゼノス

「……」


ゼノス

「いや」

「今はやめとく」


グランヴァルド

『ゼノス』


ゼノス

「分かってる」


ゴードン

「まぁ、何かしらの変化は起きているようだが前回と変わらんな」


レオン

「そうですか」


ゴードン

「封印についてはこちらでも調べているから何かわかれば知らせよう」


恒一

「よろしくおねがします」


封印解除の収穫もなく恒一達は研究院を後にする。


恒一

「結局何だったんだ?」


レオン

「分からん」


エリシア

「封印に変化があったのは収穫だけど」


その時ゼノスが立ち止まった。


ゼノス

「恒一」


恒一

「なんだ?」


ゼノス

「少し付き合え」


恒一

「?」


ゼノス

「俺の故郷……」

「竜の郷へ行こう」


全員

「「「は?」」」


レオン

「理由を聞こう」


ゼノス

「ああ、すまん。俺じゃないんだ」


グランヴァルドが前へ出る。


珍しく真剣な雰囲気だった。


グランヴァルド

『私が話そう』


レヴ

『なんだ』


グランヴァルド

『レヴナント、お前の中にある竜王因子』


レヴ

『うむ』


グランヴァルド

『そして』


グランヴァルドは恒一を見る。


グランヴァルド

『恒一の龍王因子』


静寂。


グランヴァルド

『それについて知りたければ』


グランヴァルド

『竜の郷へ来い』


恒一

「……」


エリシア

「恒一とレヴナントにあった特殊因子とかってやつね?」


グランヴァルド

『そうだ』


ゼノス

「俺も詳しくは知らねぇ。でも…」


ゼノスは珍しく笑わなかった。


ゼノス

「多分、お前らが思ってるより遥かに大変な話だ」


レオン

「詳しく知っている者がいるのか?」


グランヴァルド

『いる』


エリシア

「誰?」


グランヴァルド

『エンシェントドラゴンだ』


静寂。


レオン

「竜族の長老か」


グランヴァルド

『ああ』


ゼノス

「俺達の育ての親みたいなもんだな」


グランヴァルド

『世話になった方だ』


レオン

「そのエンシェントドラゴンが竜(龍)王因子を知っていると?」


グランヴァルド

『知っている』


グランヴァルド

『龍王因子も』


そしてグランヴァルドはレヴを見る。


グランヴァルド

『レヴナントの封印についてもな』


恒一

「!」


レオン

「……なるほど」


エリシア

「それなら行く価値はあるわね」


グランヴァルド

『ああ』


ゼノス

「飛べるようになるかもしれねぇぞ」


レヴ

『肉』


恒一

「ん?」


レヴ

『封印が解けたら』

『もっと肉が食えるのか?』


全員

「「「そこかよ!!」」」


ゼノス

「ははははは!!」


グランヴァルド

『頭が痛い……』


王都の空を風が吹き抜ける。


竜王因子。


龍王因子。


そして。


レヴナントを縛る封印。


その全ての答えが眠るかもしれない場所。


竜族の聖域。


竜の郷。


新たな旅が静かに始まろうとしていた。


――第八十七話 終――

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