第七十五話 王都E級ランキング戦
ランキング戦当日。
王都中央競走場。
まだ朝だというのに競走場周辺は人で溢れていた。
観客。
商人。
屋台。
賭け屋。
竜騎手達の関係者。
王都中から人が集まっている。
E級ランキング戦。
競走場正門前で恒一は思わず足を止めた。
恒一
「相変わらずでけぇ……」
目の前に広がる巨大な競走場。
しかし、今日のレースは競走場の中だけではない。
競走場の外。
王都外周へ続く巨大なゲートが開かれている。
遠くには森林。
さらに岩場。
丘陵地帯。
その全てを繋ぐ特設コース。
全長五千メートル。
王都外周を一周する過酷な長距離レースだった。
レヴ
『人が多いな』
恒一
「王都中の人間が集まってるんじゃねぇか?」
レヴ
『帰りたい』
恒一
「お前なぁ」
レヴ
『寝たい』
恒一
「レースが終わってからだ!」
レヴ
『仕方ない』
そう言いながらもレヴの目は鋭かった。
恒一にはレヴが緊張している言がわかる。
レヴもまた、恒一が緊張している事を理解していた。
共鳴。
完成したばかりの感覚。
今までより遥かに自然だった。
出場者専用入口。
職員
「出場証を確認します」
恒一
「はい」
確認終了。
ゲートが開き中へ入る。
その瞬間空気が変わった。
観客席の喧騒。
実況席の声。
整備員達の動き。
全てが本番だった。
恒一
「いよいよだな」
レヴ
『ああ』
竜舎エリアには既に多くの竜達が到着していた。
巨大な竜。
速そうな竜。
筋肉の塊みたいな竜。
総勢十八頭の競走竜。
王都E級最強クラス。
その中に見慣れた姿があった。
フェルドとミリア。
ミリア
「あら」
恒一
「よう」
フェルド
『来たか』
レヴ
『なんだいたのか』
ミリア
「眠れた?」
恒一
「微妙に」
ミリア
「私も」
恒一
「緊張してるじゃねぇか」
ミリア
「少しだけよ」
全く説得力がなかった。
その時周囲が少しざわつく。
観客達の視線が集まる。
一人の男。
大柄。
無言。
ボルグだった。
アイアンシェルを連れて歩いている。
圧倒的な存在感。
E級ランキング一位。
優勝候補筆頭。
恒一
「相変わらず怖ぇな」
ミリア
「強いもの」
ボルグは二人の前を通る。
そして。
ボルグ
「恒一」
恒一
「ん?」
ボルグ
「負けん」
恒一
「俺もだ」
短い。
それだけだった。
だが互いに本気だった。
さらに別方向から豪快な笑い声が響く。
ゼノス
「ははははは!!」
恒一
「うるせぇ」
ミリア
「朝から元気ね」
ゼノス
「当然だ!!」
グランヴァルド
『うるさい』
ゼノス
「今日は最高の日だからな!!」
恒一
「なんでそんな楽しそうなんだよ...」
ゼノス
「強い奴らと走れるからだ!!」
恒一
「...戦闘狂か」
ゼノス
「褒めるな褒めるな!!」
恒一
「褒めてねぇよ」
やがて。
競走場全体へ鐘の音が響く。
ゴォォォォォン―――
全員の表情が変わる。
職員
「出場者は集合してください」
十八人の騎手に十八頭の竜。
全員が集合する。
その前方に巨大な魔導スクリーンが展開された。
実況
「皆様!!」
「大変長らくお待たせいたしました!!」
歓声。
実況
「本日開催されますのは!!」
「王都E級ランキング戦!!」
大歓声。
実況
「コース全長五千メートル!!」
「王都外周特設コース!!」
実況
「森林区間!!」
「岩場区間!!」
「丘陵区間!!」
「そして接触許可区間を含む超長距離サバイバルレースです!!」
歓声がさらに大きくなる。
実況
「出走は十八組!!」
「王都E級ランキング上位十八名のみが出場を許された最高峰の舞台!!」
「果たして栄冠を掴むのは誰なのか!!」
恒一はスクリーンを見る。
そこには。
一枠一番
ボルグ・アイアンシェル
四枠八番
ミリア・フェルド
七枠十五番
恒一・レヴナント
八枠十八番
ゼノス・グランヴァルド
ランキング上位者達の名前が並んでいた。
恒一・レヴ
(来たな)『来たな』
共鳴は完成した。
準備も終わった。
後は走るだけ。
王都最強のE級を決める戦い。
その幕が今まさに上がろうとしていた。
――第七十五話 終――




