第七十三話 嵐の予感
ランキング戦まで残り一週間。
王都中央競走場。
今日はランキング戦出場者説明会の日だった。
競走場の一角にある大会議室。
入場できるのはランキング戦出場者のみ。
竜達は併設された専用竜舎で待機している。
既に多くの竜騎手達が集まっていた。
E級ランキング上位十八名。
王都E級最強を争う者達。
恒一
「思ったより人多いな」
周囲を見回す。
知らない顔ばかりだった。
だが、中には見知った顔もある。
ミリア。
ボルグ。
そして、窓際で堂々と居眠りしているゼノス。
恒一
「なんであいつ寝てるんだ?」
ミリア
「さぁ?」
職員
「起きてください」
ゼノス
「聞いてる」
職員
「寝てますよね?」
ゼノス
「目を閉じてるだけだ」
職員
「もう起きてください!」
ゼノス
「面倒だな……」
恒一
「絶対聞いてないだろ」
ミリア
「でしょうね」
やがて。
壇上へ競走協会職員が立つ。
職員
「静粛に」
会場が静まった。
職員
「これよりランキング戦説明会を始めます」
巨大な魔導スクリーンが展開される。
職員
「今回のランキング戦は王都外周特設コースにて開催」
ざわっ。
会場がどよめく。
恒一
「特設コース?」
ミリア
「毎年違うのよ」
職員
「コース全長五千メートル」
ざわざわ。
職員
「なお、中盤区間では接触行為を許可します」
恒一
「やっぱりあるのか」
ミリア
「ランキング戦だもの」
ボルグは無言。
ゼノスは少しだけ笑っていた。
説明は十分ほどで終わった。
恒一
「短いな」
ミリア
「説明会なんてそんなものよ」
職員
「続いて枠順抽選を行います」
会場の空気が変わる。
恒一
「今やるのか」
ミリア
「当たり前でしょ」
抽選はランキング上位者から行われた。
最初に呼ばれたのは。
同率一位。
ボルグ。
ボルグは無言で立ち上がる。
箱へ手を入れ。
一枚引く。
職員
「一枠一番」
ざわっ。
会場が小さくどよめく。
ボルグは表情一つ変えず席へ戻った。
次はゼノス。
職員
「八枠十八番」
会場
「おおっ」
「大外か」
ゼノス
「大外か楽しそうだ!」
職員
「そうですか?」
ゼノス
「おお!何なら今からでも走りたい!」
職員は少し困った顔をした。
続いてミリア。
職員
「四枠八番」
ミリア
「よし!真ん中ね」
満足そうに頷く。
そして。
職員
「恒一・レヴナント」
会場の空気が少し変わった。
ボルグを破った新人。
今では知らない者の方が少ない。
恒一
「俺か」
前へ出る。
箱へ手を入れくじを引く。
職員
「七枠十五番」
ざわっ。
恒一
「......七枠15番か」
ミリア
「微妙ね」
恒一
「外すぎず内すぎず」
ミリア
「ええ、あなた達にはかなり厳しいレースになるわね」
恒一
「まぁ、こればっかりは運だからなぁ」
前方から声が飛ぶ。
ゼノス
「おお!と強いやつ全員と勝負できそうな位置だな!」
恒一
「他人事だな」
ゼノス
「何故だ!?羨ましいくらいだぞ!?」
抽選は続く。
やがて。
全十八組の枠順が決定した。
巨大な魔導スクリーンに一覧が表示される。
一枠一番 ボルグ・アイアンシェル
四枠八番 ミリア・フェルド
七枠十五番 恒一・レヴナント
八枠十八番 ゼノス・グランヴァルド
自然と会場の視線が集まる。
優勝候補達。
誰もが認める実力者達だった。
抽選会終了後。
恒一は競走場併設竜舎へ向かった。
そこには既にレヴがいた。
レヴ
『終わったか』
恒一
「ああ」
レヴ
『何番だ』
恒一
「十五番」
レヴ
『微妙だな』
恒一
「お前もそう思うか」
レヴ
『囲まれる』
恒一
「だよなぁ……」
少し離れた場所。
フェルドと合流したミリア。
アイアンシェルの背を撫でるボルグ。
グランヴァルドの横で欠伸をするゼノス。
それぞれが。
それぞれの相棒と共に本番を見据えていた。
ゼノス
「楽しみだな!」
ボルグ
「ああ」
ミリア
「負けないわよ」
恒一
「俺もだ」
言葉は短い。
だが。
全員本気だった。
ランキング戦まで残り一週間。
王都E9最強を決める戦いは、すぐそこまで迫っていた。
――第七十三話 終――




